昨今、長時間労働を強制したり、パワハラ上司を野放しにするようなブラック企業社会問題として是正していく風潮があります。いったん悪評が拡散してしまうと、以降の企業活動に支障をきたすこともあり、多くの企業で社員を大事にする「働き方改革」を進めています。

ブラック企業
※画像はイメージです(以下同じ)
 とはいえそんな世の中の流れなどつゆ知らず、依然として旧体質が変わらないブラック企業も存在し続けているようです。

スパルタ上司の圧力で「休日も仕事」

 新卒時から都内の専門商社に勤めている吉野浩也さん(仮名・26歳)。平日は仕事に打ち込み、休日は思いっきり遊ぶという「デキる社会人像」を夢見ていました。しかし入社面接時に聞いていた週休2日の就業規則が、実際には週6日の出勤を強いられたそうです。

「僕の勤める会社は変わった勤務体系だったんです。日曜が固定の休みで、それに加え月~土曜の中で休日を決めていいというシステム。でも実際のところ、土曜は地方の物流センターの倉庫整理の手伝いに行かされ、その他の曜日も忙しくて休めないんです。

 休日でも上司からガンガン電話はかかってくるから、まったく気は休まりません。結局のところ、会社にいたほうが、自宅で休んでいるよりずっと気が楽なんです」

 週休2日は形骸化していたようで、日曜以外はひたすら働き続けたそうです。が、ひどい時には日曜日すら出勤の週もあったようで……。

「普通の会社では休日に出勤すると代休が取得できたり手当てが出ると聞きますが、そんなものはありません。ただただ休日が潰れるだけです。代休で平日に休むと上司からチクチク嫌味を言われるのが辛くて、とても申請できませんよ」

 倉庫作業は遅い時には日付を跨ぐこともありましたが、ガムシャラに出勤を続け、盆も正月もなく出勤し続けたそうです。

家賃補助なんてもちろん出ません

休日の電話対応

 身体がボロボロになるほど働くということはお金を使う暇がないということ。つまりたんまりと貯金があるのでは、と思ったものの、実際はまったくお金が貯まらないといいます。

 特に無駄遣いをしている訳でもないのに……理由は経費に関しても他の会社とは異なるシステムが導入されていたからです。

「交通費は給料にコミコミで、月に2万円までしか支給されないんです。会社は新宿にありましたが、定期代を抑えるには会社の近くに住むしかありません。都心の家賃は高いので、結果的にお金は貯まらないスパイラルに。家賃補助なんてもちろん出ません」

誰も電車賃を経費として申請しない

 普段は営業車でお客さんのところに行くという吉野さん。当然のことながら場所によっては電車を利用することもありますが、ここでもおかしな点が。

「慣習なのか何なのか、みな電車賃を会社に請求しないんです。先輩に1度聞いてみたのですが、経費申請すると経理部から『営業のやり方が悪い』と言ったことをグチグチ言われるらしく、みんな面倒くさがって請求しないみたいで……。

 営業のために使った交通費で文句で言われるのはおかしいとは思いますが、上司や先輩が請求していないと、若手の自分も請求しにくくて。なるべく営業車を利用していますが、どうしても電車に乗る必要があった時には諦めるしかありません」

 そばから見ても厳しい環境だと思いますが、どうして転職や退職を考えないのでしょうか?

ブラックだが同僚には恵まれている

職場 人間関係

「もちろん転職については頻繁に考えています。しかし新卒から一緒に頑張ってきた同期もいますし、みんな似たような境遇だからか年齢問わず社員の仲は良いんです。

 倉庫作業が夜中まで続いた時も、お互いに冗談を言いながら作業をしています。なんなら家族みたいになってしまって、なかなか辞めるって決意が固まらないんです。辛いことを共有しすぎているせいだと思います」

 社内規則には苦しみながらも、その中に楽しさを見出している吉野さん。確かに同僚に恵まれた環境というのは手放したくないですよね。

「他の理由としては、『転職で環境が変わる』って確信が持てないからなんです。転職しても結局、似たような社風の会社の可能性があるなら、人の良い今の会社にいたいなって思います。あとは単純に、休みが少ないので転職活動をする時間もありません」

 現状よりも環境が悪化するリスクを考えると転職を躊躇するのも仕方ないのかもしれません。同僚に恵まれた会社であればこそ、世間に足並みを揃えて「働き方改革」が進むことを祈ります。

― 特集・令和の「ブラック企業」事件簿 ―

TEXT/和泉太郎 イラストパウロタスク(@paultaskart)>

【ホンマカズヤ】

フリーライター/心理カウンセラー。男女関係、失敗談、心理学などアタマとココロに関する記事を主に執筆。朝と雨とウイスキーが好き