「猫は三年の恩を三日で忘れる」ということわざがあるが、本当だろうか。「教えて!goo」にも「猫って人の気持ちがわかるの?」と質問が投稿されていた。マイペースで気まぐれに見える猫だが、飼い主に対し恩を感じたり、それらを記憶することはあるのだろうか。さらに、人間の気持ちや感情を理解することができるのだろうか。キャットシッターの内藤さんに聞いてみた。

■猫の思いやりや記憶力

猫は人間が泣いていたり悲しんでいる様子を見ると、慰めるような態度をとることがあるようだ。人間の気持ちがわかるのだろうか。

「猫は私たち人間の想像以上に、人間のことをよく観察しています。人間の気持ちの変化も敏感に感じとっているように見えます。大好きな飼い主さんが悲しんでいたら、それを感じとって『どうしたの?』と気にかけてくれるかもしれません」(内藤さん

猫同士ではどうだろうか。

「似たようなことは猫同士でも見られます。仲間の猫が何らかの原因により大きな声で鳴いていたりすると、ほかの猫たちが駆け寄っていき『大丈夫?』と気にかけることがあります。猫は仲間との絆を大切にする動物なのです」(内藤さん

「猫は3年の恩を3日で忘れる」ということわざもあることから、「ドライ」とか「薄情」といった印象を持っている人も少なくないのではないか。猫は恩を本当に3日で忘れてしまうのだろうか。

「一度しか会ったことのない猫でも、一年ぶりにお世話をする猫でも、しっかりと覚えていてくれます。嫌な思いをしたことも長い間覚えているものです」(内藤さん

よいことも嫌なことも簡単に忘れないとのこと。

「たとえば、いつも動物病院へキャリーバッグで連れていかれている猫は、キャリーバッグを用意しただけで病院に行くことを察し隠れてしまいます。これは猫と暮らしている多くの飼い主さんが経験されていることでしょう」(内藤さん

この行動だけでも、猫の記憶力は侮れないことがわかった。

■猫の母性や感情

筆者は、猫が生まれたばかりの人間の赤ちゃんを、まるで我が子のように守ろうとする姿を見たことがある。母性についてはどうだろう。

「人間の赤ちゃんは無垢で無防備ですから、猫もそれを感じ取り守ろうとする本能が働くのかもしれません。そんなときは雄と雌にそれぞれの特徴が見られます。雌猫は自分の子供でなければ面倒をみることは少ないようですが、雄猫は親とはぐれた子猫を見つけると、自分のテリトリーに連れて行き、ご飯をわけ与えたりします」(内藤さん

日頃は情に厚い雄猫にも、ときとしてさまざまな理由から子猫を殺めてしまうこともあるようだ。これも猫の持つ「親心」が引き起こす行動だという。

「猫には感情があり、嬉しいときはゴロゴロと喉を鳴らして喜びを表現し、恐怖を感じる相手には『シャー!』と威嚇します。仲間や兄弟が死んでしまったら『寂しい』という感情もあります。猫は人間の感情や動向にも敏感で、『この人は怒りっぽいから気をつけよう』とか、『この人は、おねだりするとおやつをくれる』など、人間ひとりひとりをよく観察、分析しています。誰よりも、飼い主さんのことをわかっているかもしれませんね」(内藤さん

人間は猫に対して無防備であり、自分の素の部分をさらけ出せる数少ない相手かもしれない。だとすると、猫が恩義を感じる人の気持ちに寄り添い、その人のよき理解者になり得ることに、納得できるのではないだろうか。

●専門家プロフィール:内藤 由佳子
神奈川県川崎市にてキャットシッターないとうを経営。シドニーの猫保護施設でのボランティアを通し、猫と人間との共生のあり方を学ぶ。自然と動物をこよなく愛し、愛情を込めて丁寧に猫のお世話をしている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

マイペースで気まぐれに見える猫は人の気持ちがわかるの?キャットシッターに聞いた