各社の緑茶飲料

各社の緑茶飲料が大幅リニューアル

緑茶飲料は、2019年の市場規模がほぼ前年並みの4450億円となった。長梅雨や大容量製品の価格改定もあったが、“緑茶戦争”と呼ばれ、市場が一気に盛り上がった2005年の4470億円に肉薄している状況だ(伊藤園調べ)。人々の健康意識の高まりから無糖茶飲料は年々成長しており、緑茶飲料はその中心的な存在である。

特に2020年は、もともと東京オリンピックが予定されていたことから、和文化への注目が高まると想定した飲料メーカー各社が、緑茶飲料の市場成長を予測。今年3月以降、主力品のリニューアルや“濃い”タイプへの注力、そしてマーケティング活動を例年以上に強化していることから、過去最高実績になる可能性が高いとみられている。

〈「お~いお茶」はギネス記録限定パッケージ〉
伊藤園は、「お~いお茶 緑茶」と「お~いお茶 濃い茶」を、さらに品質にこだわった設計にし、4月20日から順次発売する。鮮度にこだわり、火入れに新技術を取り入れるとともに、温度や湿度が管理された場所で保管し、必要分のみを飲料製造工場に出荷する物流体制を構築している。そして、「お~いお茶」ブランドが、「最大のナチュラルヘルシーRTD(最新年間売り上げ)」で、販売実績が2年連続世界一になったことを記念し、「お~いお茶 緑茶」はギネス世界記録認定記念パッケージを同日から展開する。

〈「伊右衛門」は緑の水色に、史上最大のリニューアル〉
サントリー食品インターナショナルの「伊右衛門」は、昨年に累計販売本数100億本を突破した(出荷ベース)。今春は、「伊右衛門」史上最大のリニューアルを行い、4月14日から発売する。香り成分や旨味が豊富とされる一番茶を、「伊右衛門」本体史上最大の比率で使用し、そのよさを最大限に活かした焙煎技術と抽出方法で、淹れたてのような「豊かな香り・旨み」と「雑味のない穏やかな渋み」を両立した。最も特徴的なのは、独自の技術で緑茶本来の鮮やかな緑の水色(すいしょく)を実現したことだ。525ml・600mlペットボトルは、ラベルをめくって緑の水色を楽しんでもらうための仕掛けとして、ラベル裏やボトル中央部に招き猫や七福神など縁起の良いデザインを配した。

〈「綾鷹」は和柄デザインボトルで彩り豊かに〉
コカ・コーラシステムは、12年連続で販売成長が続く「綾鷹」から、「綾鷹 和柄デザインボトル」を2月24日に発売した。日本の伝統的な和柄をモチーフにした彩り豊かなデザインを採用した。和柄ごとに“勝利”“吉兆”など縁起の良い意味が込められている。同社が注力しているのは、「綾鷹」と消費者の絆を強化することで、「“日本のお茶といえば綾鷹”というイメージ確立を図りたい」(同社)としている。「綾鷹」のマインドシェア(純粋想起)は、17年時点で11.8%だったが、18年には13.2%、19年には13.8%と順調に拡大しており、今年は一気にジャンプアップしたい考えだ。

〈「生茶」は甘みと香りを引き出す新製法を採用〉
キリンビバレッジの「生茶」は、3月3日にリニューアルしたところ、発売から3日間で120万箱を突破した。発売20周年を迎える今年は原点に立ち返り、“生って、感動する”をテーマに、「よりおいしい緑茶があるなら試したい」という緑茶ユーザーの期待に応える活動に取り組んでいる。従来の「まる搾り生茶葉抽出物」に加え、生茶葉のはたらきによる新製法を採用することで、まろやかでコクのある味わいはそのままに、新緑のような爽やかさと茶葉本来の甘みと香りが豊かな味わいへと進化させたことが特徴。パッケージは、茶葉の生命力がぎゅっと詰まった様子を体現したという。

〈“濃い系”も注目集まる〉
緑茶飲料のトピックスでは、「お~いお茶 濃い茶」のヒットが挙げられる。2019年8月から新たに機能性表示食品として発売して以来、前年比約5割増で推移している。もともと40~50代男性を中心に支持されてきたが、20-30代や女性にも価値が伝わったことが好調の要因だ。健康志向と緑茶ユーザーの広がりにより注目を集めている“濃い系”の商品は、他ブランドも活動を強化している。「綾鷹」は、より幅広いニーズに応える品揃えにするねらいから「綾鷹 濃い緑茶」を3月9日に発売した。急須でじっくり淹れた濃い味わいと、抹茶由来のにごりがある“濃い旨み”が特徴。織部焼をモチーフにした伝統的なデザインも印象的だ。

〈「人生100年時代」に向けてセミナーなどが盛んに〉
茶系飲料における最近の印象的な活動は、「人生100年時代」をテーマに掲げたものだ。伊藤園は昨年5月と11月に、緑茶を中心的な題材に取り上げた「伊藤園 健康フォーラム」を開催。サントリー食品は、2018年秋から健康寿命延伸への貢献を目指す「100年ライフ プロジェクト」をスタートし、「特茶」ブランドなど健康茶を中心に健康習慣を応援している。これらは、健康という社会課題の解決を通して、習慣的に商品を購入してもらうねらいであり、生活者の理解が進めば、緑茶飲料の価値がさらに高まりそうだ。
各社の緑茶飲料が大幅リニューアル