古い高速道路を中心に、速度が低く制限されるような急カーブが多く存在します。事故も多発しており、道路管理者も看板や路面標示で注意を喚起しています。高速道路で最も急なカーブとは、いったいどのようなものでしょうか。

中央道の事故多発カーブでは厳重な注意喚起

高速道路はその名のとおり、高速かつ安全に走行できるよう、カーブも極力ゆるやかに造られていますが、古い路線を中心に、他区間と比べて速度が制限されるような急カーブも存在します。

ひとつの目安を挙げると、現行の道路構造令において、設計速度120km/h(新東名高速などが該当)の道路では曲線半径が710m以上、地形上やむを得ない場合でも570m以上とするよう定められています。曲線半径はカーブを円弧としたときの半径の長さを表す値で、道路標識では「R=570」などと表され、小さいほど急なカーブです。今回は、上記の値を大きく下回るような高速道路上の急カーブが存在する区間を5つ紹介します。

中央道 飯田山本IC~園原IC(長野県)

山間部の区間が多い中央道は、いたるところで急カーブや急勾配が連続しますが、なかでも道路上に「最急カーブ」との大きな注意喚起看板が設置されているのが、阿智PAのやや南側にあるカーブです。半径はR=300で、かつ下り線は5.4%(100mすすむと高低差が5.4m、の意)という急な下り坂になっており、最高速度が70km/hに制限されています。

2006(平成18)年には、このカーブを曲がり切れなかった大型車が側壁に衝突して横転、そこへ16台もの後続車が突っ込むという事故が発生し、5人が亡くなりました。これを機にNEXCO中日本は安全対策を大幅に強化、1.5kmも手前から数百mおきに大型の電光式標識を設置するなどして、このカーブへの注意喚起を重点的に行っています。

なお急カーブという点では、たとえば東京側の上り線、調布IC~高井戸IC間の三鷹バス停付近にR=280というカーブが存在します。これは、下り線側の三鷹料金所が上り線側に張り出しているがゆえの線形で、今後、料金所の運用見直しとともに改良される予定です。

東名や東北道で事故多発の急カーブ連続区間

東名高速東北道にも、急カーブが連続する要注意の区間があります。

東名高速 大井松田IC~御殿場IC(神奈川県、静岡県)

大井松田IC~御殿場IC間のうち、神奈川静岡県境の山間部区間は急カーブや急勾配が連続するため、最高速度が80km/hに制限されています。R=600以下のカーブも多く、なかでも急なのは下り線の鮎沢PA手前にあるR=300というものです。また上り線は、この区間で最後のトンネルとなる吾妻山トンネルを抜けると、右に左にカーブする長い下り坂が3km以上続き、速度超過を招きがちです。神奈川県警も事故多発区間として特に注意を呼び掛けており、「雨の日はスピードを落とし、スリップ事故に注意しましょう」としています。

NEXCO中日本の資料によると、この大井松田IC~御殿場IC間はR=1500未満のカーブの数が58か所と、他区間と比べても突出しており、事故による渋滞発生回数も多いそうです。これに並行して建設が進められている新東名は、最小でもR=3000という緩やかなカーブになるとしています。

東北道 村田IC~仙台南IC(宮城県)

東北道のなかでも仙台周辺の区間は地形が山がちなうえ、1970年代前期と開通が比較的早いこともあり、急カーブと急勾配が連続します。特に、村田ICから仙台南ICにかけては、蔵王山系東側の丘陵から仙台の市街地へ、長い下り坂となっているうえに、「この先急カーブ R=400」という看板が何度も登場します。また最高速度も80km/hに制限される区間です。

この村田IC~仙台南IC間は仙台近郊で交通量も多く、2019年上半期には76件の事故が発生しました。高速道路の区間別では宮城県内最多であり、2番目の仙台南IC~仙台宮城IC間の2倍を記録しています。

「高速道路の本線上で最も急なカーブ」とは?

中国道首都高に、これまで紹介したものより、はるかに急なカーブが存在します。

中国道 北房IC~新見IC(岡山県)

中国地方を東西に結ぶ中国道は、これまで紹介した各路線と比べても特に急カーブや急勾配が多い道路です。特に、岡山県内の山間部にあたる北房IC~新見IC間には、呰部(あざえ)トンネル付近にR=200という「高速道路の本線上で最も急なカーブ」が存在します。

同区間ではこのほかにも、R=250やR=300といった高速道路では珍しいレベルの急カーブが連続するため、一部で最高速度が60km/hに制限されています。そもそも、山陽道よりも開通が早く、中国山地の山肌を縫うように建設された中国道は、大阪近郊の区間を除き、ほぼ全線が80km/h制限です。山陽道と比較すれば交通量はだいぶ少ないものの、走行には注意が必要です。

首都高4号新宿線 代々木~西参道(東京都渋谷区)

首都高のような都市高速は一般的に、「高速道路」を名乗ってはいるものの、ほとんどの区間では最高速度も一般道並みに制限されています。これまで上げたような「高速自動車国道」とは規格のうえでも比較にならないかもしれませんが、そのぶん、とりわけ注意を要する急なカーブもあります。そのひとつが、首都高4号線の代々木出入口付近にある通称「参宮橋カーブ」です。

参宮橋カーブの曲線半径はR=88、ほぼ直角に近く先の見通しが効かないうえ、その前後区間にも急カーブが連続し、さらに代々木出入口や新宿出入口、代々木PAの分岐・合流が現れることもあり、かつては首都高で事故が最も多い地点でした。2000年代より、カーブの先の状況を簡易図形でカーナビ上に表示するという注意喚起を行い、事故は大幅に減少したものの、走行には特に注意が必要な区間といえるでしょう。

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今回は高速道路の本線上にある急カーブを紹介しましたが、ICやJCTランプには、より急なカーブが多く存在します。たとえば、地下トンネルの首都高C2中央環状線と、高架の3号渋谷線らせん状のランプウェーで結ぶ大橋JCTのうち、最も急な部分の曲線半径はR=40です。

急カーブ区間では、このような注意喚起の看板が見られる(画像:写真AC)。