独特の世界観のコントで人気を博しているしずる、「キングオブコント2016」王者のライス、お笑いトリオ・ジューシーズの解散を経て、2016年よりコンビとして活動しているサルゴリラ。この3組6人の芸人が、作家・演出家の中村元樹を迎えて、演劇ユニット「メトロンズ」を結成した。
【写真を見る】コロナ感染拡大を受けて、初舞台「副担任会議」公演中止の決断をしたメトロンズの7人。公式サイトでは謝辞と共に「非常に、非常に残念」とのコメントを発表した
コントの面白さに定評のある3組は、これまでも「SIX GUNS」のユニット名でコントライブを行ってきたが、改めて、本格派の演劇ユニットとして再始動する。
今回のインタビューでは、メトロンズ旗揚げの経緯から、昨夏開催された“第0回公演”の手応え、そして待望の第1回公演「副担任会議」へ懸ける思いまでを語ってもらった。全員が東京NSC9期という仲良し7人組の、ざっくばらんな座談会をお楽しみあれ。
※本インタビューは、2020年3月30日に行われました
■ 「この3組は、お互いにお互いのネタが好きなんです」
――しずる、ライス、サルゴリラの3組は、2016年から「SIX GUNS」として、ユニットコントライブを開催してきましたが、そもそも、このSIX GUNSはどのような経緯で始まったのでしょうか。
児玉智洋:僕と赤羽(健壱)がコンビになったときに、ライスと一緒にネタライブをやろうっていう話になって。そしたら、しずるも「俺たちもやりたい」って言ってくれたんです。
村上純:そうそう。
児玉:それでこの3組で始まったんですけど、当初は、各コンビが自分たちのネタをやって、残った時間で6人でユニットコントをやるっていう形だったんですね。でも、だんだんユニットコントを一生懸命やるようになって。
村上:結果、ユニットコント“だけ”をやろう、ってことになり。
――中村さんは、その頃から携わっていたんですか?
中村元樹:はい、構成作家として参加していました。当時からユニットコントは面白かったですね。この6人ならではのまとまりみたいなものがあって、作家としても、面白いものが作れているなという実感はありました。
赤羽健壱:吉本の芸人って、ユニットコントをやる機会が割と多いんですけど、この3組は本当にやりやすくて。全員同期で気心が知れてるし、あと、たぶんお互いにお互いのネタが好きなんですよね。
田所仁:あ、それは大きいね。面白いと思うものが一緒だから、なかなか言えないようなことも言い合えて、自然とクオリティの高いものができてくるっていう。
池田一真:ほんと、SIX GUNSのコントは超面白かったんですよ(笑)。
――みなさん、SIX GUNSを始める前から親しかったんですか?
田所:はい、中村も含めて、同期でも特に仲が良かったメンバーですね。特に、(村上と関町を指差して)この二人とか?
関町知弘:いや、それはあんまり言わないで…。
村上:なんでだよ!(笑)
田所:俺と池田は、バイトも一緒だったんですよ。深夜のコンビニで頑張ってたもんな?
池田:田所は、だいたいいつもバックヤードで寝てたんですよ。その間ずっと僕が一人で店番してて。
赤羽:えっ、それで同じ時給?
池田:うん。そういえば、「俺も1時間だけ寝かせてくれ」って言って寝てたら、5分くらいで田所に起こされて、「宅配便の伝票の書き方教えてくれ」って。
田所:ハハハ。そこでまた絆が深まったっていうね(笑)。
赤羽:しずるとライスは、NSCのクラスも一緒だったんだよね。
村上:ていうか、面接のときから一緒だった(笑)。
赤羽:東京NSCの9期って、なんとなくコントグループと漫才グループみたいに分かれてて。そのコントグループの中で、しずるとライスは特に目立ってたんですよ。児玉とか僕は、この2組に憧れて仲間に入れてもらったクチで(笑)。
■ 「第0回公演が終わったときに『よし、これで行ける!』って」
――その後SIX GUNSは、2018年の年末から半年ほどの活動休止期間を経て、2019年8月の公演「KASAMATSU」で再始動しました。
田所仁:活動を休んでいたのは、それまでずっとSIX GUNSの公演をやっていた神保町花月で、システムの変更があったりして…。
児玉智洋:いろいろ条件が合わなくなって、SIX GUNSという形で活動するのが難しくなっちゃったんですよね。
田所:だから、SIX GUNSはいったん終わりにして、もっとガシッと形を決めて出直そう、と。で、その再始動の1発目が「KASAMATSU」だったんです。だから「KASAMATSU」というのは、SIX GUNSの最後の舞台でもあり、新たにメトロンズとして生まれ変わりますっていうあいさつも兼ねていたので、“メトロンズ第0回公演”という位置付けなんです。
――「出直そう」と決めたのは誰ですか?
田所:リーダーです。
児玉:あっ、僕なんですけど…。
村上純:「リーダーです」って周知の事実みたいに言うなよ(笑)。
児玉:まぁでも、言い出しっぺは僕かもしれませんけど、前々からみんなで話し合ってはいたんですよね。
――「KASAMATSU」は、雪山のペンションで起きた殺人事件を描くミステリー…と思いきや、中盤から不条理劇のようなカオスな展開になだれ込む、見応えのある一作でした。かなり“演劇”に振り切った舞台でしたが、この路線は初めから決めていたんですか?
児玉:スタッフも含めて、みんなで話し合って方向性が固まっていった感じですね。
村上:短いコントをオムニバス的に見せる、みたいな案も出る中で、結局はみんな納得して、あの形に着地しました。今、「カオス」と言ってくださいましたけど、まさに演劇なのか何なのかよくわからない、SIX GUNSからメトロンズに移り変わる“グラデーション”みたいな作品にしたい、という意識はあった気はしますね。
――実際に演じてみて、手応えはいかがでしたか?
田所:手応えは…ありました。
池田一真:溜めるねぇ(笑)。
田所:このメンバーで1本のストーリーものを90分やるっていうのは当然初めてで、不安はあったんですけど、終わったときに「よし、これで行ける!」って。
関町知弘:反省点もありましたけどね。例えば、僕が目先の笑いに走りすぎるとか…。
(一同爆笑)
関町:どうしてもしつこくなっちゃうんですよ。ウケるもんだから、気持ちよくなっちゃって。でも、(3回の公演中)1回目の映像を見返したときに、確かにこれは邪魔だなと(笑)。反省でもあり、発見でもありましたね。
赤羽健壱:「発見」って(笑)。僕は、やっぱり芸人なんで、ボケてないと不安になるんですけど、「KASAMATSU」は、普通のお芝居でも間が持つんですよ。それはすごく勉強になりましたね。
――「KASAMATSU」の作・演出を担当された中村さんは、いかがでしたか?
中村元樹:ベースは僕が書いて、あとはみんなと話し合いながら作ったんですけど、今まで、この3組のネタやSIX GUNSを見てくださっていたファンの方たちを、いい意味で裏切れたかなと思いますね。
■ 「ユニット名の由来は、『ウルトラセブン』の『メトロン星人』です!」
――今さらですが、メトロンズという名前の由来は…?
田所仁:これは投票ですね。みんな、一つずつ新しいユニット名を考えてきて、誰の案かは伏せて投票したんですよ。そしたら、僕が考えた「メトロンズ」が、ぶっちぎりの1位になりまして。
赤羽健壱:ぶっちぎりではないでしょ。
田所:確か、2票獲得したのかな。
児玉智洋:めっちゃ僅差でした(笑)。
田所:SIX GUNSは、メンバーが6人ということで付けた名前なんですけど、今回は中村もメンバーの1人なので、まず、“7人”のイメージで考えてるうちに、「セブン」って言葉が浮かんできて…。
田所:そうです!
池田一真:僕らより上の世代の男性はすぐわかる(笑)。
赤羽:取材でもこの話が一番盛り上がるんですよ(笑)。
田所:あと、メンバーは東京出身が多いので、都市=メトロポリタン、という意味も込めて。
――改名に躊躇はなかったんですか?
田所:ええ、まったく(笑)。今回新しく入ってくれた制作の牛山(晃一)さんに、一番最初の会議で言われたんですよ、「まず、SIX GUNSという名前を変えませんか」って(笑)。
関町知弘:「SIX GUNS」っていうゲームがあって、ネットで検索するとそっちが引っ掛かっちゃうらしくて。
――ちなみに、SIX GUNSの名付け親は…?
田所:ガンマニアの池田です。僕は正直、だっせえなぁって思ってたんですけど。
池田:いや、かっこいいだろ! 新しいユニット名を決めるときも、僕は「スミス&ウェッソン」っていうアメリカの銃器メーカーの名前から取って、「S&W」っていう案を出したんですけどね。
村上純:よけい検索に引っ掛かりにくいよ(笑)。
■ 「メンバーそれぞれが、役者としてのポジションを確立できたら」
――そしてメトロンズの第1回公演「副担任会議」ですが、どんな内容になるのでしょう。
中村元樹:ある学校の副担任の教師6人が、文化祭の出し物の準備をしていて、一致団結していたんですが、ある出来事がきっかけで、その関係が崩れていく…というお話です。6人が副担任という設定は、村上のアイデアなんですけど、それを基に僕が脚本を書かせてもらいました。
村上純:“副担任”って、昔からどういう役職なんだろうって思っていて。昔、僕の学校にもクラスの副担任の先生がいましたけど、担任の先生が休みのとき、代わりにホームルームに来たなとか、それくらいの情報しかないんですよね(笑)。そういう“誰もが存在は知ってるけど、実態がよくわからない”っていう感じが、物語として面白く転がるかなと。
――脚本は、演者に当て書きされているんでしょうか。
中村:かなり当て書きに近いですね。それぞれ、素のキャラの延長線上にある人物だと思います。
池田一真:僕は、赤羽のキャラが一番等身大だなって思いますね。
赤羽健壱:えっ、そう?
池田:なんか、すっごい自然なんですよ。元樹さんの台本を読んだとき、「確かに赤羽って、こういうとこあるよな」っていうね。
赤羽:これはうれしい話じゃないな。あまり中身のことは言えないですけど、僕が演じるのはね、変なヤツなんですよ。
池田:いや、だって赤羽のキャラ、元樹さんも自信あるでしょ?
中村:うん。筆がめちゃくちゃ進んだ。
(一同爆笑)
――稽古の進み具合は?
関町知弘:本格的な立ち稽古はまだですね。軽い立ち稽古と本読みくらいで。
児玉智洋:でも、本読みが相当細かくて…何回やったかな?
村上:「このセリフは違和感あるな」とか「ここは辻褄が合わない」とか、みんなの意見を中村がメモして、少しずつ直して。今の台本は第10稿ですからね。
関町:そんなやり方は初めてなんで、台本がすごく研ぎ澄まされている気がします。その点、神保町花月の芝居は…。
池田:やめろ!
――(笑)。「KASAMATSU」との違いは見えてきましたか?
田所仁:より“お芝居”という感じがします。
中村:シンプルに、演技力や脚本の力で勝負するという感じですね。
――では最後に、メトロンズとしての目標を教えてください。
児玉:まず、たくさんの方に見てもらえるように頑張りたいですし、有名な俳優さんがメトロンズの公演にゲストで出てくれたりするようになったらいいなとも思いますね。そして行く行くは、メンバーそれぞれが、役者としてのポジションを確立できたらなと。
――ちなみに、メトロンズは“劇団”なのでしょうか?
児玉:はい、劇団と言って…いいですよね?
(※スタッフ「いえ、“芸人による演劇ユニット”です」)
児玉:そう、“演劇ユニット”です。
赤羽:否定された!(笑)
<追記>
この取材から5日後の4月3日、メトロンズ第1回公演「副担任会議」が公演中止となったことが発表された。
当初、4月22日(水)~26日(日)、東京・赤坂レッドシアターでの上演を予定していたが、今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受けての苦渋の決断。メンバーは公式サイトを通じて、以下のコメントを発表した。
■ 「お知らせ」(メトロンズ公式サイトより)
メトロンズ第1回公演「副担任会議」は公演中止となりました。
チケットを購入していただいていた皆様、それだけでなく、交通や宿泊などのご手配をいただいていた方もいらっしゃったかと思います。本当に申し訳ございません。
既に20回以上の集まりを重ねて、台本は改訂第10稿になるまで意見交換するなど、開催に向けて万全の準備をしていたので、非常に、非常に残念です。
メトロンズは、継続的に公演を行っていくために劇場を押さえておりますので、本来であれば第2回公演の開催を予定しておりました、2021年4月21日(水)~25日(日)・赤坂レッドシアターでの公演を「副担任会議」の開催とさせていただくことにしようと考えております。
よろしければ、カレンダーに開催期間をメモしておいていただければと思います。
また来年4月にお会いできるまで、メトロンズ、精進いたします!!
引き続きのご愛顧、何卒よろしくお願いいたします。(ザテレビジョン)
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