Image: Alfred-Wegener-Institut/J. McKay|白亜紀の南極にジャングルが…の想像図。

南極がジャングルなら、日本はどうだったんだろ。

今から1億4500万年~6600万年前、地球は「白亜紀」と呼ばれる時代でした。ティラノサウルスとかプテラノドンとか出てくる頃ですね。実は先日、この時代の胞子や根が発掘されました。研究チームが解析したところ、なんと白亜紀には南極点から1,000kmも離れていない場所がうっそうとしたジャングルだったことがわかったんです!

南極大陸を掘りまくった結果9000万年前の花粉と胞子を発見

昔々、地球の大気は今よりも二酸化炭素濃度が数倍高かったそうで、白亜紀の地球もいわゆる温暖期でした。しかしこれまで、「地球温暖期の南極はどうだったのか」を示す科学的記録は、一切ありませんでした。そこで近年、南極大陸の地下を掘るという壮大なプロジェクトが決行されたのです。

掘って、掘って、掘りまくった結果、南極点からわずか900kmほどの地点で、9000万年前の花粉と胞子が見つかりました。これ、実はすごいことなんです。現在、南極点から1万4000km離れた昭和基地で観測した年間平均気温はマイナス10度。植物生息は、むずかしいですよね。しかし、掘り出された化石を分析したところ、当時は数十種もの植物が生息していたことが明らかになったのです。

どうやって掘り進んだのか?

この研究の筆頭表著者で、アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所のヨハン・クラーゲス氏は米Gizmodoのインタビューに対し、「我々は特別な海底掘削装置を使って作業を行ないました。南極西部にあるアムンセン海のこの層にまで入り込むことができたのは初めてです」と語りました。

「古い層で、白亜紀にまでさかのぼる可能性があることはわかっていたのですが、そこで何が見つかるかは、未知数でした。ですから、その中身を最初に知ったときには、かなり驚きました」

研究チーム2017年、研究用砕氷船ポーラーシュテルンに乗って、南極大陸西部の南緯73.54度にあるアムンゼン海のトラフへと向かいました。このあたりは古い堆積物(地層的なもの)が氷河でカチコチに固められているため、なかなか内部に潜入することができませんでした。そこで役立ったのが、海底掘削装置MARUM- MeBo70です。

MARUM- MeBo70はポータブル式の遠隔操作式の掘削リグで、海底で最大80mまで掘りすすめることが可能。とはいえ、掘削を妨げる氷山がないかどうか衛星画像やリグ搭載のヘリコプターで周辺地域を確認しながらの作業は難航が予想され、数日に及ぶ可能性もあったとか。しかし幸運なことに、海底を30メートルほど掘ったところで、お宝と遭遇することになったのです。

お宝のあった場所は沈んだ大陸

ドリルで掘り当てた堆積物のサンプルをCTスキャンなどで分析したところ、少なくとも62種類もの植物の花粉や胞子、それに化石化した根っこが確認されました。先日、科学誌ネイチャーで発表された論文によると、この中には現在の南半球に生息する針葉樹とシダが含まれていました

今回掘削が行われたのは南極西部の海でしたが、地殻活動を分析したところ、かつてこの地殻は南極点にさらに近い南緯82度に存在し、現在は海底に沈んでしまったジーランディア大陸の一部だったとわかったのです。そして発掘された堆積物と化石は、はるか9000万年前のものだということも明らかになりました。

南極点から900kmのところにジャングルがあった

つまり、この研究によって、白亜紀には南極点から約900kmの地点に温帯雨林があったことがわかったのです。この温帯雨林とは、現在ニュージーランドの一部やアメリカ太平洋岸北西部にある温暖で多雨な針葉樹林と同じように、温暖で雨の多いジャングル。クラーゲス氏は、「このような緯度で、驚くほどの多様性が発見されました」と述べました。

次に、彼ら研究チームは、これらの植物が生きていくのに必要な気候モデルを検証してみました。すると、年平均気温が13℃と、現在のシアトルと同様の気候や環境が必要だと算定されたのです。

たとえば南極近辺でこの気温を4カ月維持しようとすれば、地球の大気中に相当な濃度の二酸化炭素がなければ不可能。おそらく、当時の1,120ppmから1,680ppmは必要だったでしょう。ちなみに、現在大気中の二酸化炭素濃度は約415ppmです。

2100年までに南極の氷がなくなるかも?

この論文をレビューした、シドニー大学のディートマー・ミュラー地球物理学教授は、「これは非常に説得力がある(研究)だ」と米Gizmodoに語っています。彼いわく、この論文の最もエキサイティングな点は、はじめて「白亜紀の南極には、氷が存在しなかった」と暗示したこと。

その一方でミュラー教授は「もし今後も人間が制限なくCO2を大気中に送り続ければ、地球は再び同じ状況に陥るかもしれない」と警告もしています。

ある予測モデルでは、このままいくと2100年までに大気中のCO2濃度が1,000 ppmにまで増加する恐れがあると試算されています。ミュラー教授は、「そうなれば南極の氷はすべて溶け、この惑星は数百万年もの間、温室状態になるかもしれない」と話しています。

クラーゲス氏は米Gizmodoに対し、「はるか南に温帯雨林があったとすると、いったい白亜紀の地球はどんな気候だったのか…。チームとして引き続き解明していきたい」と決意を語りました。