公的年金の積立金のポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)が変わる。運用を担う「年金積立金管理運用独立行政法人GPIF)」が、2020年4月から5年間の運用基準となる資産構成割合(基本ポートフォリオ)を含む中期計画で、国内債券の比率を下げ、外国債券を引き上げた。国内債券の利回りが低迷しているためで、この結果、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の4資産に各25%、均等配分されることになる。

GPIFは保有資産(2019年12月末時点)が約169兆円に達する世界最大規模の機関投資家。国民が納めた年金の積立金などを国内債、国内株、外国債、外国株の4資産に投じて運用している。GPIFは原則5年ごとに見直しており、3月31日に2020~24年度の資産構成を示した。国内株、外国株は各25%に据え置くとともに、国内債券を35%から25%に下げ、代わりに外国債券を15%から25%に引き上げた。もちろん、4月1日に一気に入れ替えるわけではなく、一定の時間をかけ、徐々に新しい比率に近づけていく。

改定の背景に日銀のマイナス金利政策

今回の改定で、海外資産の構成比率はこれまでの4割から5割に高まる。実際の運用構成が基本ポートフォリオからずれる「許容幅」については、外国債が目標値から6%(従来は4%)、外国株は7%(同8%)までの乖離を認めることにした結果、年金積立金の最大63%が海外の資産で運用されうるということになる(従来は最大52%)。

改定の背景にあるのが日銀のマイナス金利政策だ。前回2014年10月の見直しは、前年春に始まった「異次元緩和」により、安全第一の債券中心の運用で利回りが低迷していたことから、「債券から株へ」がキーワードになった。国内外の株式比率をそれまでの各12%、計24%から計50%に一気に倍増させた一方、国内債券は60%から35%に一気に下げ、外国債券は11%から15%と若干上乗せした。ここには、巨額年金資金で株価押し上げを図るという安倍政権の狙いも込められていたとされる。

今回も前回に引き続き、年金財政上必要な実質1.7%の運用利回り確保を目標としており、それを実現するための答えが「海外シフト」というわけだ。GPIF内では、国内外の資産区分を撤廃し、資産構成は株式と債券だけにすべきだとの声も出たが、そうした場合、大幅に資産配分を見直すのではないかとの思惑を市場に与え、混乱を招くこととの懸念から断念。また、国内債券を減らす分、高配当が見込める外国株式をさらに増やすべきだとの意見も根強かったが、値下がりリスクの高い株式を前回に続き増やすのは国民の理解を得られないと判断し、株式より振れ幅が小さい外国債券の割合を増やすことで決着したという。

為替リスクとリスク分散

今回の改定は、円安要因になる一方、為替リスクが高まるという問題も抱える。株式の比率引き上げ同様、資金量が巨額に上るだけに、それ自体が市場(株価や為替レート)に影響を与える可能性があり、株高や円安という目先のプラスになりうる一方、市場が逆回転を始めたら、大きな傷を負いかねない危険性もはらむ。より高利回りを得たい一方、リスクはどこまで許容するかという、投資の永遠のテーマである。

この点をどうバランスするかということだが、新聞の論調も、微妙にニュアンスが分かれた。主要紙は、資産構成の変更の発表(3月31日)の前後を中心に一斉に報じた。その中で、例えば日経は事前報道で「円安要因の可能性」(3月25日朝刊)との記事で、「運用資産の一部が外債投資に向かえば為替相場の円安要因となる」と書き、また、発表後の4月1日朝刊では「海外運用に傾斜/為替リスク高まる」との見出しを掲げ、海外資産が最大63%になる可能性も指摘し、「為替変動による短期的な資産変動は大きくなり、海外リスクが高まる」とくぎを刺した。

朝日も、1日の朝刊で、「米国債などの金利はプラス圏で推移しているための判断だろう。ただ、外国債券は為替リスクもあり、信用力の低い外国債はデフォルト(債務不履行)のリスクもあることに注意が必要」とのアナリストのコメントを掲載して、懸念を示した。

これらと趣を異にしたのが読売で、やはり1日朝刊で「市場安定の期待高まる/円安・ドル高要因に」との見出しで、リスクが高い外国債への傾斜には懸念も示しつつ、「GPIFの巨額投資による市場安定化への期待が強まる」とし、内外株・債券25%ずつとしたことを「長期投資のリスクがより分散でき、非常にバランスがいい」との証券のストラテジストのコメントを紹介するなど、概して肯定的な書きぶりが目立った。

GPIFが新しい運用基準を示した