コロナウイルスの世界的な蔓延で、1年間の延期が決まった東京五輪。だが昨年来、海の向こうから東京五輪に対し、執拗な攻撃を仕掛けていた国があった。

 それは韓国だ。

 今年2月、韓国のポスターに対し、国際オリンピック委員会の広報担当理事が異例の抗議をした。

 完全防護服に身を包んだランナーが、緑色の炎を上げる聖火のトーチを掲げて競技場のトラックを走る、背景にはもくもくと煙を上げるスリーマイル島風の原発――「TOKYO 2020」の文字とともに東京大会のエンブレムまで使用されていた、このポスターは韓国のVANKという団体がつくったものだった。

選手村での食事に「安全性を懸念する声」

 韓国の名もない団体の話だと思ったら、間違いだ。

 韓国の聯合ニュースは、1月2日付記事で次のように報じていた。

東京五輪を巡っては、選手村で提供される食事に東京電力福島第一原発事故が起きた福島産の食材が使われるとして、韓国をはじめ各国から安全性を懸念する声が出ている。(略)

 放射能汚染に対する懸念が払拭されていない中、大韓体育会(注、韓国オリンピック委員会)は韓国選手団の食の安全を最優先に考え、韓国選手団のための食堂を用意すると早くから明らかにしており、先ごろ関係機関との契約を終えた〉

 この記事でいう「関係機関」とは、東京・晴海の選手村から車で15分離れた、あるホテルのことだ。昨年末に、大韓体育会の関係者がそのホテルを訪れ、契約をしたという。

韓国選手だけが車に乗って食事に行くことに

 龍谷大学の李相哲教授は、こうした韓国での動きを受けて、「文藝春秋」4月号に寄稿した「韓国の卑劣な『東京五輪放射能キャンペーン』」の中でこう記している。

オリンピック選手村とは本来、競技に向けた準備をする場であると同時に、世界各国から集まった選手たちが自由に交流できる場でもあります。その環境をすばらしいものとするため、開催国は、最大限のサービスを用意して選手たちを受け入れます。

 そのなかで食事は最も大切なものです。栄養面を考慮し、アスリートが満足できるよう細心の注意をもって献立が整えられ、それでいて開催国ならではの食文化を楽しんでもらえる工夫が施されます。選手たちにとっては競技だけでなく、ここでの交流も含めて「オリンピック出場」といえる位置づけではないでしょうか。(略)

 いまのところこの件について韓国選手団やコーチらのコメントは出ていませんが、おそらく韓国の代表選手のほとんどが嫌なはずです。他の国の選手はみな選手村で食事をしているのに、自分たちだけがわざわざクルマに乗って食事に行くなんて誰がしたいでしょうか〉

東京五輪放射能キャンペーン」は根が深い

 韓国の「東京五輪放射能キャンペーン」は、実は根が深い。東京五輪を控える日本ではほとんど報道されてこなかったが、昨年夏以来、さまざまな形で韓国与党、「共に民主党」の「日本経済侵略対策特別委員会」や韓国国会の文化体育観光委員会が主体となって繰り広げていた。東京五輪放射能汚染をからめ、まさに反日キャンペーンを張っていたのだ。

 もちろん、韓国国民の多くがそのキャンペーンに賛同していたわけではない。

 李相哲教授はこう指摘する。

「いま日韓関係は最悪かもしれませんが、それはあくまで政府レベルでのこと。選手や応援する人々のレベルでは、日本人韓国人がともに盛り上がって仲良くなるチャンスです。たとえ、韓国選手団が選手村の食事をボイコットしたとしても、日本側としては韓国の政治的なアピールに過ぎないと冷静に捉えるべきだと思います(在日本大韓体育会は、「文藝春秋」の取材に対し、『韓国選手団は、基本的に選手村で食事をします。韓国国内に放射能汚染を懸念する世論があるため、ホテルの厨房とダイニングを確保したまでです』と回答した)」

 4月の総選挙を前に、文在寅政権が展開してきた「東京五輪放射能キャンペーン」。その実態と背景については、「文藝春秋」4月号および「文藝春秋digital」の李教授の記事をお読みいただきたい。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年4月号)

文在寅大統領 ©AFLO