約160兆円におよぶ国民の厚生年金国民年金の積立を管理運用する世界最大規模の年金ファンド年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)。4月1日付けで、新理事長に宮園雅敬(みやぞのまさたか)氏(66)が就任した。

GPIFは昨年10月、当時理事長だった高橋則広氏(62)を、女性職員との特別な関係を疑われかねない行為があったと懲戒処分にした。その件を巡り怪文書が出るなど、内部対立があり、高橋氏や他の2人の理事が今年3月末に退任する事態に発展しました」(金融機関幹部)

 宮園氏は佐賀県出身で、1976年東京大学法学部を卒業し、農林中央金庫(農中)に入庫。秘書役や人事部長、総合企画部長など中枢を歩み、2011年から副理事長を務めた。

「農中の河野良雄・前理事長(71)の後任と目された時期もあったが、副理事長を最後に退任し、昨年に企業年金連合会の理事長に転じた」(農中関係者)

 宮園氏はその容貌から、JAグループでは「農中の細川たかし」として知られる人物だ。

「宴会で細川たかしの『北酒場』を唄ったり、頭を動かし『カツラではありません』と言って場を和ます。九州人らしく明るく前向きで、地方のJA関係者にも抜群の人気です。08年にリーマン・ショックで農中が危機的状況に陥った際は、全国を行脚して出資を募り立て直した。また、弟の宮園浩平氏は東大の副学長で腫瘍生物学の権威」(同前)

宮園氏が理事長に選ばれた理由

 GPIFは前理事長である高橋氏も農中の専務理事経験者で、2代続けて農中出身者がトップに就いた。

「日銀OBをあてる案もありましたが、組織運営に長けている宮園氏が最終的に選ばれました。宮園氏は農中時代にJA全中全国農業協同組合中央会)幹部や政界との交渉を担い、その経験から培った人脈も評価されたのです」(同前)

 また、今春、GPIFは資産運用の割合を示す「基本ポートフォリオ」を5年半ぶりに見直し、投資収益が低迷している国内債を減らし、その分、外国債券の比率を10%引き上げる。

「国内債、国内株、外国債、外国株の運用比率がいずれも25%となり、外国資産の割合が半分になります。これで、為替変動を含めたリスク度は一段と高まる」(市場関係者)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に株価は乱高下を繰り返している。GPIFの1月から3月の運用損失は最大で20兆円を超える可能性がある。

 宮園氏は、ガバナンスの立て直しと混乱する市場への対応という2つの難題にいきなり直面する。新理事長の手腕が問われる。

(森岡 英樹/週刊文春 2020年4月9日号)

宮園雅敬氏 ©共同通信社