今、地球上の人間社会は、たった1種のヒトによって支配されている。現生人類であるホモ・サピエンスである。
私たちにとっては当たり前の状況だが、実はヒトの進化の歴史においては、かなり珍しい事態であるようだ。
たとえば、ある国際的研究グループによって、200万年前の南アフリカには、3種の人類が共存していたことが明らかにされている。
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人類のゆりかごで発見された200万年前のホモ・エレクトスの頭蓋骨
『Science』(4月3日付)に掲載されたその研究では、"人類のゆりかご"とも呼ばれる世界遺産「南アフリカの人類化石遺跡類」の一部、ドリモレン洞窟群で発掘された頭蓋骨を分析している。
その頭蓋骨は、現生人類――すなわち「ホモ・サピエンス」の直接の祖先にあたるとされる「ホモ・エレクトス」のもの。
この頭蓋骨を3種類の年代測定法(電子スピン共鳴法、古地磁気法、ウラン・鉛法)で分析したところ、200万年前のものであることが判明したという。
過去にアフリカ内外で発見されたホモ・エレクトスよりも10万~20万年は古い頭蓋骨で、これによってこの種がアフリカを起源としていることが確認された形だ。
南アフリカの人類化石遺跡群の発掘現場
アフリカから旅立った人類——出発の地は南アフリカ?
ホモ・エレクトスは、アフリカから旅立った最初の人類とされている。
これまでアフリカで発見されたこの種の化石は、東アフリカのものが一番古かった。ところが、今回の発見によって、ホモ・エレクトスはまず南アフリカから東アフリカへ広がり、そこから北アフリカ、さらには世界の各地へ移動しただろうと推測できるようになった。
また150もの断片から再現されたその頭蓋骨は、3歳から6歳の幼児のものと考えられており、初期人類の子供が成長する過程を観察できる貴重なサンプルでもあるという。
ホモ・エレクトスの復元模型
200万年前、南アフリカには少なくとも3種の人類がいた
だが、より興味深い発見は、ドリモレンから別の種の頭蓋骨も発掘されていることだ。
それは「パラントロプス・ロブストス」と「アウストラロピテクス・セディバ」のもので、厳密には私たち「ホモ属」とは別属に属する人類だ。
研究グループのゲイリー・シュワルツ氏(アリゾナ州立大学/アメリカ)によると、この発見の素晴らしいところは、これらの頭蓋骨がおよそ200万年前の狭い期間の中から発見されたことであるそうだ。
つまり、かつてその周辺には3種の人類が同時に存在していたのである。
「彼らの間に直接的な交流があったのかどうかは分かりませんが、3種の人類が何らかのやり方で土地や資源を分け合い、近くにいながらも皆が生存できる戦略を進化させた可能性はあります」と、シュワルツ氏は話す。
原始的なヒトの親戚パラントロプス・ロブストスの頭蓋冠
人類の進化に関するもう1つの研究
さらに『Nature』(4月1日付)に掲載された別の研究では、1921年にザンビア、カブウェ(旧名ブロークンヒル)の採石場で発見された頭蓋骨を最新の手法で分析した結果が発表されている。
この頭蓋骨は、現生人類よりも原始的だが、ホモ・エレクトスよりは発達しており、およそ50万前に存在した現生人類とネアンデルタール人の共通祖先「ホモ・ハイデルベルゲンシス」のものだと考えられていた。
ところが今回の分析の結果、それよりもずっと新しい32万4000年~27万6000年前のものであることが判明したのだ。
ホモ・ハイデルベルゲンシスの復元像
30万年前にも複数の人類種が共存
研究著者のクリス・スティンガー教授(ロンドン自然史博物館/イギリス)は、30万年前の化石であれば、ホモ・ハイデルベルゲンシスとホモ・サピエンスの中間の特徴があるだろうと予想していたそうだ。ところが意外なことに、ブロークンヒルの頭蓋骨からは私たち現生人類の特徴が一切確認されなかったという。
これまでブロークンヒルの頭蓋骨は、アフリカ全土で徐々に起きた旧人類から現生人類への進化の証拠とみなされてきた。
だが実際には、南・中央アフリカにホモ・ハイデルベルゲンシスが存在した一方、モロッコやエチオピアをはじめとする地域にも初期の人類が存在していたように思われるそうだ。
これまで人類の進化は、私たちホモ・サピエンスを頂点とする直線的なものだと考えられてきた。しかし今や、それがそう単純なものではなく、もっと紆余曲折を経た複雑なものであったことが明らかになりつつある。
References:sciencedaily/ written by hiroching / edited by parumo
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