林 今、週刊文春への不倫の情報提供がすごいらしいですよ。

中野 たしかに、東出昌大さんと唐田えりかさん、鈴木杏樹さんと喜多村緑郎さん、小泉進次郎さんと当時既婚者であった女性社長、和泉洋人首相補佐官と大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官……、毎週のように不倫の記事がでている印象ですね。

林 電話が鳴りっぱなしだって。私は今もFAX手書きの原稿を送っているんですけど、そのFAXも使えなくなったの。「そのFAXはタレコミ用に使うから、別のFAXに送ってくれ」って(笑)

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 連日のように明るみに出る有名人たちの不倫。社会的制裁やバッシングにより失うものが大きいにもかかわらず、なぜ不倫はなくならないのだろうか。

 人をひきつけてやまない「不倫」について、不倫や男女の性愛をテーマにした作品も多い作家の林真理子さんと、『不倫』(文春新書)の著書のある脳科学者の中野信子さんが、余すところなく語った。

なぜ共演者同士で付き合ってしまうのか?

林 東出さんと唐田さんの不倫は映画での共演がきっかけだったみたいですね。ある女優さんは、ラブシーンについて、「疑似恋愛しないとキスなんか本当にできない」とおっしゃっていました。だから、切り替えができないまま「その後飲みに行こうとなったら危ないんじゃないかな」と思うそうです。

中野 実際に、そういう流れでお付き合いされる俳優さんたちも多いですよね。作った感情の中で自分を盛り上げて仕事をされるのは脳への負担が大きいんです。人間の嘘をつくときの脳の活動を測った実験があるんですが、真実より虚構を話しているときの方が、ずっと脳の活動が活発なんですよ。だとしたら、恋愛の演技をしているときはいつもよりも脳が活発に動いていることになります。オンオフに慣れていない若い役者さんだと切り替えができず、これは本当の恋愛だと思い込んでも仕方ないのかなと思います。

林 根本的に、恋愛って錯覚しているだけなんじゃないかな。

中野 完全に錯覚だと思います。錯覚だから、ディズニーランドみたいな楽しさがあるのかもしれない。

若いうちの不倫って、そりゃあ楽しいですよ

「恋愛は錯覚だから楽しい」と盛り上がる二人。しかし、男女の機微を長年描いてきた林さんの目には、今の若者同士の恋愛は刺激が足りないと見えるようだ。

林 私は若い女の子が同世代の男の子と恋愛しても実はそれほど楽しくないと思うんです。だって付き合っても、週末にどっちかの家に行って、鍋つついてみたいなパターンでしょう。それが妻子ある人が相手だと、夜明けにワーッと電話しながら泣いたり、いろいろドラマチックなことが起こるじゃないですか。

中野 「あ、奥さんのもとに帰るのね」とやるせなくなったり。

林 「今日会ってくれるって言ったじゃん」っていうと「ごめん、子供の運動会なんだ……」、「ひどい!」とか。若いうちの不倫って、せつなくてそりゃあ楽しいですよ。

中野 いいなあ。もう一度、若くなれるなら不倫したいなあ(笑)。もっと研究室から外に出ればよかった。相手の奥様も、労力が分散されるのを密かに喜ぶ人がいるのでは……。寝盗られてつらい苦しいばかりの人だけではないでしょう。

林 不倫は楽しいに決まっているんです(笑)

人間には“不倫遺伝子”がある!?

 そして、中野信子さんの解説によると、脳科学の見地から見ても人間社会から不倫がなくなることはないという。遺伝子についての研究結果や、多くの実験がそれを裏付けている。

林 中野さんのご本にあったんですけど、不倫遺伝子というのがあるんですか?

中野 アルギニンバソプレシン(AVP)という、相手に対する親切心や、性的なパートナーについての情報処理に関係する脳内物質の受容体があります。この感受性が鈍くなる遺伝子がいわゆる“不倫遺伝子”と呼ばれるものです。「貞淑型」と「不倫型」に分かれるんです。その割合は、おおむね半分半分だろうと推測されています。

林 つまり私たちの周りにいる2人に1人は、人間の脳の仕組みからして、一夫一婦制の結婚に向いていないんですね。

 さらに話題は、過激さを増す不倫バッシングについてや、お互いの夫がもし不倫をしたらどうするかという際どい質問、略奪婚で癌になるという珍説の真偽にまで広がった。

 不倫に悩むあなたも、不倫を嫌いなあなたも、人生経験豊富な二人が「文藝春秋」4月号および「文藝春秋digital」で縦横無尽に語った対談「不倫は楽しい! だから叩かれる」をぜひ読んでほしい。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年4月号)

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