日本で発令された「緊急事態宣言」は「ともかくSTAY HOME」を連発しています。これがどういうお役人の試算に基づくものか、考えるところから始めてみましょう。

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日本だけ「コロナの優等生」になれるか?

 いま、日本国内には、未知数であるけれど、何万人あるいは何十万人かの「真のコロナウイルス感染者」がいます。

 そして、それらの数は分からない。かつ、感染者(キャリアと呼びましょう)自身も自分がキャリアであるという自覚がない。

 この人たちが、街に出かけて、3密状況の中で攪拌されると、別の「ノンキャリア」にウイルスをうつして、さらにキャリアを増やしてしまう。

 だから、キャリアはどうか、自宅軟禁されててください。ノンキャリアの皆さんも 移したりうつされたりしないよう、シャフルされないで、という「統制経済」ないし「戦時経済」が、サンフランシスコ講和条約以来、戦後の日本で初めて出されたというのが、いま私たちが目にしている光景です。

 では仮に、この作戦が最も「成功」すると、どうなるのでしょうか?

家庭内感染で「頭打ち」になるか?

 いま、自分自身気づいていない「真のキャリア」は、1か月、自宅軟禁しておけば、その間に

1 発病して加療・検査・陽性と分かり隔離可能

2 家族など、濃密接触者にはうつすだろうが、そこまでで2次感染は止まる

3 家族にキャリアがある人は、自分自身もキャリアになるが、そこまでで頭打ちになる

4 感染から発病まで数日~2週間だから、1か月「戒厳令」を敷いて様子を見、その間に頭打ち傾向がみられたら、それを壊さないように平時にソフトにシフト

5 第1波のピークを過ぎたら、第2波を起こさないよう防疫公衆衛生政策を徹底する

 といった戦略で考えているものと思われます。

 少なくとも多くの日本国民が、そのように政策を理解しておく必要がある。

 もっといえば、仮に政治家がまともに状況を理解していたら、この程度のことをスッキリと伝えられなければ、マトモな陣笠、首長の役割を果たしているとは言えません。

 上にまとめた「トランスコロナ、5か条のご誓文」が少しでも整理されて見えたとすれば、それは現在の政治家やマスコミのデスク、担当者などの理解が浅いことを示しているだけに過ぎません。

 さて、では仮に、そのような「封じ込め」ができたとします。

 できたかどうかは、日々の感染者数増加の数字を追えば見えることで、今後1~2週間の推移すなわち4月15~20日頃までの経過を追えば、だいたい見えてくるはずです。

 その後、「第2波」を防ぐにはどうすればよいのか。

 実は結局「3密を避ける」という基本作戦を緩めれば、その瞬間、目に見えないCOVIDは再び「3密感染」を活発化し始め、「第2波」は必ず訪れてしまいます。

 現状では抗体療法が確立されていない。その確立には最低でも約1年を要する・・・という大原則を確認しておきましょう。

 この間「第2波」を予防する、唯一最大の方法は「3密を避ける」すなわち、バイオシェルター環境を保持し続けるという戦略の維持「しか」方法がない、という現実を認識する必要があります。

 つまり「テレワーク」その他の基本状況は、今後最低でも1年は継続すると見ておく方が安全ということになる。それによって、日本は、そして世界は、以下のように変化することがまず間違いありません。

トランスCOVIDで世界はこう変わる

 まず、当たり前のことですが「テレワーク」は、COVID以降、全世界の勤労環境のデファクト・スタンダードになるでしょう。

 思えば1995年、冷戦崩壊とともに始まったインターネットによるIT革命は、21世紀に入ってGPSを含むモバイル化、ユビキタス化を進め、その準備があったからこそ、いまCOVIDによって、テレワーク化が可能になっている。

 テレワーク、そして学校における「遠隔学習」は、2020年代以降のグローバル標準として、日常のものになってしまうでしょう。

 実のところ、いままで戦後日本で続いてきた無意味な出社、意味なく混雑するラッシュアワー満員電車や、様々なオフィスの「現地民慣習」がおかしかったのです。

 少なくとも「日本独自」あるいは「東アジア特有」といった側面が濃厚にあったのは否めません。

 1990年代に「ネットの普及で世界はこう変わる!」と喧伝されたビジネス像がありました。

 インターネットは場所の束縛を自由にし、時間の拘束を緩やかにする。だから時間と場所を問わない、ユビキタスなビジネスモデルが大きく開花する・・・。

 2010年代自由民主党政権は、実質的には経済産業省内閣であって、そこではSOCIETY5.0のビジョンを中心に、この種のイノベーションの未来図が描かれ、私自身もそのような政策提言の取りまとめと推進に、大学教官としては一貫してコミットしてきました。

 その立場から申すなら、1990年代から情報イノベーション革命が、COVIDによって「完全に普及し定着する」というのが、近未来、すなわち大阪万博2025あたりのグローバル標準であることは、まず間違いないところです。

 かつて、核の脅威、すなわちAtomic Aの危機に対して、米ソ両大国の間には鉄のカーテンが降り「冷たい戦争」が戦われました。

 一方、ウイルスの脅威、すなわちBiohazard Bの脅威に対しては、欧米先進国全体が21世紀の黒死病、あるいは21世紀のスペイン風邪というべき、目に見えない敵に制圧されてしまい「白い戦争」を戦うしかありません。

 世界大戦「world war」から「cold war」へというのは「world」と「cold」の韻を踏んだものだ、というのは昨今忘れられている事実です。

 でも「world war」も「cold war」も人間が人間を襲うどす黒い暴力戦争に変わりはありません。

 しかし、いま全人類を襲っているのは、第1次世界大戦という「黒い戦争」を停止させたスペイン風邪と同じ、ウイルスと全人類との闘い「白い戦争」にほかなりません。

 こんな具合で、「戦争」そのものも変化していますし、また、その敵である見えないウイルスも急速に変異、進化を続けています。

 いま爆発的に罹患者が増えるということは、少し前まで、一部のコウモリなどの体内でつつましやかに存在していたCOVIDが凄まじい勢いで数が増えています。

 それはとりもなおさず、ウイルスの進化確率、つまり、さらに新たな「COVID-20」あるいは「新・新型コロナウイルス2」がいつ出現しても不思議でない状況をも現出する可能性がある。

 私たちは最初のワクチン確立に最低1年を要することを知っていますが、一つの抗体療法だけで完全に制圧できるという保証はないと考えておくべきです。

 1918~20年にかけての「スペイン風邪」は、3波の流行を経てまる3年弱でようやく沈静化しました。

 3年スパンで対策を立てることが必要でしょう。

 私は大学教官ですから、教育に関していうなら、いま中学、高校に入学したばかりの1年生が、3年を卒業するまでの間、この3年間の「トランスCOVID」の時期をどうサバイバルし、潜り抜けるかで、物事は決まると考えています。

 もっといえば、その世代はCOVID遠隔教育の申し子、として、保育園、幼稚園から小中高校、大学の各課程で、前代未聞の新しい教育を受けざるを得ません。

 これによって、6-3-3で12年にあと2+4=6年程度、約20年にわたる世代の「トランスCOVID化」が完全に定着し、2025年以降の世界は、テレワーク・遠隔学習・非接触ビジネスが大半を占めるPOST-COVIDの世界、別の社会に完全に変質する。

 その中でAIが随所に組み込まれ、少子高齢化、グローバル気候変動など、従来のSDGs17課題もすべて積み残されたままの、「本当の21世紀」が始まっていくことを認識する必要があります。

 こうした議論はすで3月末から欧米トップ大学間との間で活発に始まっています。

 以後、できるだけ平易に紹介していきたいと思います。

(つづく)

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