新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京や大阪などの大都市では外出自粛が求められ在宅勤務に移行する人が増加している。さらなる感染拡大と医療崩壊を防ぐために必要な措置だが、外出の自粛が長引くことで別の問題が浮上しつつある。不眠症や鬱などの健康問題だ。長期化もささやかれる巣ごもり生活の影響を専門家に聞いた。(聞き手、結城カオル

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日光を浴びないでいると何が起きるか

──新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外出を控える人が増えています。やむを得ない状況ですが、健康に悪影響がでる場合も考えられます。実際に、どのようなことが考えられるでしょうか。

近藤慎太郎氏(以下、敬称略) 健康への影響は肉体的なものと、メンタル的なものが考えられます。その中でも、今後、多くの人に影響が出ると思われるのが「不眠」の問題です。

 人によって多少の差はありますが、人間の覚醒のリズムは24時間と少しと言われています。それなのに、24時間に適応できているのは、朝に太陽光を浴びて体内時計をリセットしたり、通勤・通学時間が決まっているなど社会的な制約があったりするからです。

 ところが、在宅勤務やレイオフによって自宅で過ごす時間が増えると、朝の通勤時に浴びていた日光を浴びなくなる、決まった時間に出社する必要がなくなるなど、24時間のリズムが崩れ、どんどん睡眠が後ろにずれていってしまいます。

──子どもの学校がないということもありますが、在宅勤務を始めてから起きる時間が少しずつ遅くなっています。

近藤 そういう方は多いと思います。不眠には2つの大きな原因があります。1つは先ほど述べた人間の覚醒リズムであり、もう1つは過覚醒です。

 昔は今ほど夜に明かりがありませんでしたので、辺りが暗くなるとともに、なめらかな意識の低下が始まりました。ところが、現代は屋内外を問わず、24時間、煌々と明かりがついています。寝る前にスマートフォンを見る人も多く、寝る直前まで光にさらされています。そういった環境が不眠をもたらすのです。

 この状況は、リモートワークよって加速する可能性があります。

 リモートワークのメリットの1つは24時間、いつでもどこでも仕事できるということですが、いつでもどこでもできるからと言って自宅で夜遅くまで仕事をしていると、不眠のリスクが上がります。「いつでも」「どこでも」がリモートワークの長所ですが、「いつでも」はメリットとは言えないと思います。

不眠と不安が与える重大な影響

──睡眠がずれるとどうなるのでしょうか。

近藤 睡眠障害は様々な問題を引き起こします。直接的な理由か派生的な理由かはともかく、睡眠障害の患者にはメタボリックシンドロームや脳卒中、心筋梗塞などが多いことが知られています。日々の生活に締め切り、つまり時間的な制約がなくなることで、社会的な制約に適応できなくなる恐れもあるでしょう。

 特に、これから心配なのは鬱になるリスクです。睡眠障害と鬱には関連があると言われています。コロナウイルスによって経済活動は急速に縮小していますから、今後、リストラされる人も出てくるでしょう。雇用不安、経済的な不安も鬱につながります。軽く考えられがちですが、不眠が続くと健康に重大な影響を与えます。

──新型コロナウイルスによって、在宅勤務が長期化、あるいは常態化するかもしれません。健康への悪影響を減らすために、どうすればいいでしょうか。

近藤 まずは普通に出社していた時と同じように、規則正しい生活を送るべきだと思います。決まった時間に起きて、顔を洗って、始業時間に仕事を始める。通勤がなくなった分は散歩をするなり、ストレッチやバランスボールを使うなりして体を動かす。体内時計をリセットするために、ベランダに出て陽の光を浴びるのも大切だと思います。こういったルーティンを守ることです。

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