新型コロナウィルスの感染防止のため、リモートワークテレワーク)が広がっている昨今。だが、上司が「やっぱり会議は顔を合わさないと」とか、「メールでやりとりするのは面倒くさい」というタイプだと、出社せざるをえなかったりする。

 グーグル4月3日に発表した、スマホの位置情報データを使った世界131ケ国の移動データ分析(※)によると、日本で職場に行った人は普段のわずか9%減。外出禁止令が出ている米国では38%減、イタリアでは63%減なのに対して、日本は“外出自粛”であり職場に行く人が多いという結果だ。
(※2月16日3月29日の外出状況を、今年初めの5週間と比較)

「会社に行かないと、仕事はうまく回らない」という日本的感覚は、本当なのだろうか?(店舗や現場に行かないと仕事にならない業種は別として)

リモートワークでも成果を上げるキモは、オンラインツール

 実は、何年も前から、リモートワークを含む自由な働き方で、成果をあげている会社がある。それは、グループウェアなどを手がけるIT企業「サイボウズ」である。同社の有名なオウンドメディア「サイボウズ式」編集長の藤村能光氏は、著書『「未来のチーム」の作り方』で、オンラインツールslack、Chatworkなど。サイボウズの場合はキントーン)を使ってチームワークを作るノウハウを明かしている。

 「働く時間と場所は自分で決めていい」という同社。「サイボウズ式」編集部員も、東京で適宜リモートワークの人、地方在住で月1回しか出社しない人、複業をしている人など、多様にもほどがある。だが、オンラインツールを活用することで、自由とチームワークは両立するというのだ。

 そこで、『「未来のチーム」の作り方』で明かされたノウハウを紹介しよう。もし、slackなどのツールを導入したのに、上司がメールしか使えない…といった職場なら、ぜひ参考にしてほしい(以下の文章は藤村能光氏による)。

◆社内メールって本当に必要ですか?

 メールは仕事に欠かせないツールであり、もちろん、僕も「社外の人」に連絡をする場合は、メールを使います。
 ですが、「チーム内のコミュニケーション」という観点でメールについて考えると、そこには明確な弱点があります。メールは基本的に1:1のやりとりがメインコミュニケーションツールです。もちろんCCやBCC、メーリングリストの機能を使えば複数人ともやりとりできますが、大きなプロジェクトなど多くのメンバーが参加する業務でメールを使いだすと、途端に業務効率が落ちます。

 メールを使う場合、例えばプロジェクトの担当者が、別の担当者にメールを送り、主担当者ではない人にはCCで送信することが一般的です。そして、メールアドレスに追加されていない人はこのやりとりを直接見ることはできません。
 また、たとえ宛先に関係者全員を入れた場合でも、その情報が関係者全員にとって必要なものではない場合があります。要するに、情報の送り手と受け手が、対等ではない状態です。

オープンツールを使うメリット

 一方で、ほかのコミュニケーションツール(slack、Chatworkなど。サイボウズの場合はキントーン)を使う場合を考えてみます。
 コミュニケーションツール上にプロジェクトに関する掲示板を作り、メンバーを招待します。各メンバーコミュニケーションツールアクセスし、誰もが掲示板に意見や情報を書き込んだり、参照したりできます。もし、特定の人に対して通知をしたい場合は、宛先を指定(メンション)することも可能です。

 そして、掲示板上ではこのプロジェクトに関するすべてのやりとりが集約されていきます。メールのように一通ごとに情報を送り合うのではなく、掲示板のようにやりとりの場を集約していくことで、「メールを送った、送らない」、「見た、見てない」という問題は解消しやすくなります。

チーム内に「情報格差」は絶対につくらない

 情報をオープンにすることによって、チームのみんなが等しく情報にアクセスできるようになり、チーム内では情報格差がなくなります。情報が正しく伝われば、メンバーみんながその情報をもとに考え、新しい価値を生み出す一手につながります。

 例えば、サイボウズ式のようなメディア運営や編集の仕事の場合、メンバーひとりひとりが企画を考え、記事を編集し、公開していきます。各々の企画や編集の仕方は、個人のやり方に紐づくところも多いのですが、そのノウハウがチーム内で正しく共有されていれば、チーム全体のメディア運営力につながってくることは明らかです。その人に属人化しがちなノウハウやスキルチームに開放し、みんなで共有できるようになれば、チーム全体の学びの高速化にもつながります。それはチームに新メンバーが入ったときにも大きな効果を発揮します。

 さらに、この掲示板を特定のプロジェクトメンバーだけでなく全社員が閲覧できるようにしておくと、プロジェクトメンバー外の人から思わぬ意見が書き込まれることもあります。例えば、過去に似たプロジェクトを担当した別のチームの人からアドバイスがもらえるなどです。

 逆に、情報をオープンにしない場合の情報格差は、チームでの仕事の推進力を奪ってしまいます。個人個人が備えている仕事のスキルやノウハウが共有されなければ、その仕事は属人化してしまいますし、その人に仕事のやり方をいちいち確認するのは効率的ではありません。属人化したスキルやノウハウを持つ人がもしチームを離れることになってしまった場合、またゼロからチームを作り直さないといけない状態に陥ってしまいます。

◆ミスや失敗は、率先してツールに書き込む

 また、クローズドな情報共有はチームリスクにもなります。たしかにチームのなかには「自分のミスをメンバーに知られたくない」「相談事はこっそりしたい」という考えの人もいるでしょう。ですが、それをそのまま隠し続けてしまうと本人が後ろめたい気持ちになり、仕事のパフォーマンスにも悪影響が出ます。都合の悪いことは早い段階でチーム内に共有しないと、後々致命的な失敗につながりかねません。ミスが早めに共有できていれば、リカバーもしやすくなります。

 仕事においては大きなリスクが顕在化する前に、リスクの芽を摘み取っておくことが大事です。僕自身、もしミスをした場合はその段階でチームに共有することを努めています。リーダーこそ、ミスや失敗を認めて自ら共有していったほうが、結果的にチームのためになると思うからです。
 何かミスをしたとき、普通の会社ならまずは上司に報告をして対策を相談するものですが、僕らの場合は失敗したことを率先してキントーンに書き込み、チームみんながその内容を把握できるようにしています。やましいことは、隠せば隠すほど、後々大きなリスクになると知っているからです。

オンラインでも「雑談」が効く

 チーム内のコミュニケーションの流量を増やすには、コミュニケーションツール内を仕事のことだけを語る場所にしないほうがいいでしょう。サイボウズ式編集部では、キントーンのスペース内に「藤村のつぶやき」といった個人が思ったことをつぶやく場所も用意しています。ここでは仕事とは関係のない、たわいないつぶやきも大歓迎です。
 編集部メンバーは、みんな独自に自分専用の「つぶやき掲示板」を設けています。このつぶやき掲示板オープンな状態で、編集部と社員みんなが閲覧できるようになっています。雑談タイプのつぶやきのほうが盛り上がることもあるぐらいです。
 雑談や井戸端会議をオンラインスペース上でも実現したい。言うなれば「オンライン雑談」です。

 最近は、チームにおける「雑談」の重要性が増していると感じます。
 サイボウズでは、週1回、マネジャーと各メンバーが1対1で話し合う時間をとっており、その時間を「ザツダン」と呼んでいます。話の内容はその名の通り雑談で、仕事以外に休日の話やプライベートな報告など多岐にわたり、チームのみんなの人となりを知ることに直結します。
 そんな雑談をオンラインの場でも活発に行うというのは、「マネジャーメンバー」という1:nの場を、「チームメンバーチームメンバー」というn:nの関係性に適用することでもあります。「その人を知ること」が、僕だけではなくチーム全体に広がっていく効果があるのです。

【藤村能光】
1982年生まれ。ウェブメディア編集記者などを経て、サイボウズに入社。オウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げにかかわり2015年から編集長を務める。2019年、初の著書『「未来のチーム」の作り方』を上梓

<文/藤村能光、日刊SPA!取材班>

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