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BMW M3とメルセデスAMG C63のライバル

text:John Evans(ジョン・エバンス
translationKENJI Nakajima(中嶋健治)

 
今に始まったことではないが、自動車メーカーは技術力の高さをサーキットでアピールしてきた。最近では韓国キアのスティンガーGT S。2008年といえば、レクサスIS Fだ。

【画像】IS Fと当時のライバル M3とC63 全40枚

圧倒するほどの洗練度と信頼性、ハイブリッド技術を搭載したサルーンとして、英国での評価も高かったレクサスIS。高性能版のFの登場に、英国市民は驚き、喜んだ。

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レクサスIS F(英国仕様)

BMW M3やメルセデスAMG C63のライバルとして設定されたのがIS F。搭載したエンジンは、当時でも珍しい自然吸気の5.0L V8エンジン。最高出力は422psを発揮していた。

トランスミッションはパドルシフト付きの8速ATで、後輪を駆動。2速からロックアップ機構が付き、変速はクイック。レブリミッターへ勢いよく飛び込む。そのかわり中古車では、過度に回しすぎたことで生じる異音に気をつけたい。

サスペンションは軽量で強固な鍛造製。アンチロールバーも強化品となる。訴求力の高いセッティングの中で唯一引っかかるのが、電動パワーステアリングの採用だろう。

クルマは安くはなかったが、レクサスの優れたイメージに加えて、品質や技術的な内容、強い存在感が重なり、ドライバーはIS Fを受け入れた。当時の試乗レポートでは、エンジンサウンドやシャシーバランス、強力なブレーキなどが高く評価されている。

一方、変速にもたつきがあるトランスミッションと、硬い乗り心地、LSDの不採用などに不満を示している。電子制御されるオープンデフが付いていたのだ。

レクサスらしく中古車でも信頼性は高い

レクサスはこの反応に耳を傾けていたようだ。2010年になると、本物のLSDが搭載される。ナビゲーションもアップグレードされた。

さらに数カ月後には、スプリングショックアブソーバーの設定を見直し、乗り心地も完全ではないものの改善が施されている。リアサスペンションは、安定性の向上も図られている。

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レクサスIS F(英国仕様)

インテリアでは、計器パネルのデザインを変更。LEDデイライトがHIDヘッドライトに追加されている。生産は2014年まで続けられた。

細かな改良を受けていたのにも関わらず、英国で販売されたIS Fはわずかに200台。M3より珍しいクルマが好きなら、この台数の少なさには惹かれるかもしれない。その分、中古車としての選択肢は少ない。

現在英国で流通しているレクサスIS Fの中古車は10台前後。いずれも程度は悪くなさそうだ。個人売買の車両なら、オーナーと直接話が聞けるというメリットがある。

オーナーの多くは、IS Fの信頼性を讃えながら、大切に維持している。筆者からのアドバイスは、安くはない提示価格を、そのまま受け入れないことくらい。

IS Fで起きうる不具合を時間を掛けて調べてみたが、唯一見つかったのが、ウオーターポンプとヒート・エクスチェンジャーからの液漏れ。発生率の高かった初期のクルマは、保証期間中に対策品に交換済みなことが多い。

責めるほどではない。BMW M3でも、似たような問題を抱えていた。

不具合を起こしやすいポイント

エンジン

8000km毎のエンジンオイル交換を守っていれば、V8エンジンはとてもパワフルで、チューニングも可能。初期のクルマはウオーターポンプからクーラントが漏れる場合があるので、液量は確かめたい。エンジンルーム内のクーラント漏れの跡も目視する。

より深刻なのが、ヒート・エクスチェンジャーからの液漏れ。修理には数日を要する。液漏れ防止剤入りのクーラントでごまかしている場合がある。

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レクサスIS F(英国仕様)

フルパワー時の変速時に、エンジンの補機ベルトが鳴いていないかも確認したい。テンショナーとの交換は、安くはない。

トランスミッション

一部のオーナーはフルード漏れを指摘しているようだから、定期点検の時にフルードの量は確認した方が良いだろう。

サスペンションとステアリング

初期のIS Fは、乗り心地に難がある。当時のAUTOCARでも、スプリングは動くがダンパーのしなやかさに欠け、滑らかな路面を除いて乗り心地は悪くギクシャクしている。高速で丘の頂上を通過すると、浮き上がるような感覚がある、とレポートしている。

電動パワーステアリングはリモート感があるが、操舵感は正確でダイレクト。ホイールのアライメントにもかなり敏感。

ブレーキ

AUTOCARは高く評価していたブレーキ。車重は1720kgもあり、422psのクルマだから、減りは早い。

ボディ

修復した経歴に気をつける。リア周りは特に。

インテリア

運転席のサイドサポートが擦り切れていないかを見る。インフォテインメント・システムが正常に動くかも確認したい。

オーナーの意見を聞いてみる

ジャックジョーダン

「息を呑むほど速く、珍しいクルマです。わたしのIS Fは2008年式で、9万4500kmほど。トランスミッションの変速は速く、エンジンのパワーに引き込まれてしまいます」

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レクサスIS F(英国仕様)

「初期型のウオーターポンプの不具合はよく報告されている部分ですが、それ以外はレクサスらしく、信頼性はとても高いですね。このクルマも漏れる前に保証の中で交換してあります」

レクサスディーラーも、わたしは評価しています。とても気配りがよく、対応は素早く、メンテナンス費用も妥当なものです。古いクルマでも対応は変わりません」

「走りに夢中になれるクルマなので、タイヤとブレーキの消耗は早いです。でも、ハイパフォーマンスカーですから、当然ですね」

知っておくべきこと

もし任意保険で事故の修理をした場合、レクサスの正規部品を用いていると、レクサスディーラーがその記録を保持している。問い合わせれば内容を知ることができる。スピンしてリアホイールを交換しているような場合でも同様。

いくら払うべき?

1万2000ポンド(162万円)〜1万5499ポンド(209万円)

初期型で走行距離が多いクルマ。ほとんどはレクサス正規ディーラーで整備を受けている。英国では、17万kmほどの走行距離のクルマで、1万2500ポンド(168万円)。

1万5000ポンド(210万円)〜1万7499ポンド(234万円)

走行距離が短い、2008年式の車。レクサスでの整備記録も多くが完全に残っている。同価格帯で売られている個人売買のクルマと、ディーラーが出しているクルマとで、しっかり内容を比べたい。

1万7500ポンド(235万円)〜2万0999ポンド(284万円)

2010年以降のより状態の良いクルマ。LSDとアップグレードされたナビが付いてくる。

2万1000ポンド(285万円)〜2万2500ポンド(305万円)

2011年から2013年製の、サスペンションに改良を受けたクルマが中心。英国では2013年式の11万1000kmほどの走行距離のクルマで、2万2500ポンド(305万円)くらい。

英国で掘り出し物を発見

レクサスIS F 登録:2008年 走行:12万7100km 価格:1万4995ポンド(202万円)

個人売買で出ていたIS Fレクサスでのサービス履歴が揃っている。最近も主要な整備を受けている。同じくレクサスで整備を受けてきた2008年式で9万4900kmのクルマが、1万7000ポンド(229万円)という例もあった。

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レクサスIS F(英国仕様)

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