新型コロナウイルス感染症COVID-19)拡大で大打撃を受けている飲食業界。外食チェーン各社も3月の売上を大きく減らすところが出るなど厳しい状況になっています。

その中で牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングス(9861)の3月全店売上高は、対前年同月比100%と前年並みを維持しました。また、他の大手牛丼チェーンも90%台の数字となっています。

感染の収束がいつになるか、景気の落ち込みがどこまで深刻化するか先が見えない中、1コインでお腹を満たすことができ、かつテイクアウト機能を既に備えている牛丼チェーン店の業績に注目してみました。

新型コロナウイルスの影響が本格化した3月

日本では3月に入り、一気に新型コロナウイルスの影響が顕在化しました。3月2日に小中高の一斉休校が始まり、13日には新型コロナ特措法が成立、25日以降は大都市圏外出自粛要請が出されるなど事態の深刻化が進んでいます。

そのため、ホテルや航空、イベント、飲食を始めとした幅広い業界が大きな打撃を受け、多くの上場企業の3月業績は対前年同月比で大幅なマイナスを余儀なくされています。

その中で、牛丼チェーン大手の吉野家、松屋、すき家の3月の月次数字が目を引きます。

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牛丼3社の2020年3月実績比較

牛丼3社の2020年3月の対前年同月比を見てみましょう。

  • 吉野家吉野家ホールディングス) 既存店売上高:98.2%、全店売上高:100.0%

  • 松屋(松屋フーズホールディングス) 既存店売上高:94.7%、全店売上高:96.0%

  • すき家ゼンショーホールディングス) 既存店売上高:92.2%、全店売上高:92.6%

他の外食チェーンの3月既存店売上高の対前年同月比を見ると、たとえばファミレスサイゼリヤは70%台、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは80%台となっています。対して、牛丼業界の上場3社はいずれも90%台を維持しました。

かつて”デフレ勝ち組”とも言われ、不景気への耐性がある牛丼業界の強さが発揮されているようです。

全店ベースで前期並みの売上を確保した吉野家

牛丼3社の中では特に吉野家の強さが光ります。吉野家の3月は対前年同月比で既存店売上高は98.2%と若干のマイナスながら、新規出店分を合わせた全店売上高は100.0%と前期並みの売上を確保しました。

外食に限らず3月は各業種で軒並みマイナスの数字を計上する企業が多い中で、新規出店分を含んでいるとはいえ、100.0%と前期同等となった吉野家の存在感は際立っています。

前期から成長が続いている吉野家

吉野家は前期(2020年2月期)から業績好調が続いています。特に下期は、2020年2月の特殊要因(2018年2月と2019年2月に2年連連続で実施した大型キャンペーンの反動)を除くと、既存店・全店ともに売上高が対前年同月比で110%近い成長を維持していました。

その背景には、超特盛の大ヒットやライザップとのタイアップメニューといった企画の成功があります。それが今期(2021年2月期)最初の月である3月の数字につながっていると言えるでしょう。

コロナ不況下ではステーキより牛丼?

かつて“はやい・うまい・やすい”というキャッチフレーズ※で一斉を風靡した吉野家。このフレーズに象徴されるように、牛丼は並盛なら税込み500円以下で食べられる手軽さがあります。

1994年以降は”うまい・やすい・はやい”となっている。

コロナショックによる景気の後退が確実視される中、1コインで満足感ある食事を提供でき、さらに今後の外食店には必須と思われるテイクアウト機能を既に備えている牛丼店は、再び外食チェーンの勝ち組となるかもしれません。

一方、同じ牛肉料理でも、2,000円前後の金額を出してステーキを食べる時代は当分戻らないのではないでしょうか。新型コロナが契機とはいえ、時代の移り変わりの早さには驚かされます。

新型コロナウイルスの影響本格化により、今後も多くの企業で赤字転落や大幅減益が予想されます。その中で吉野家を始めとする牛丼チェーン各社の業績及び株価の行方が注目されます。

 

【参考資料】
吉野家月次推移(2020年度)
吉野家月次推移(2019年度)
松屋フーズホールディングス月次報告 2020年3月期(2019年4月〜2020年3月)
すき家 月次売上推移 (2020年3月期)