「狭くて同調圧力が面倒な日本から脱出できて快適!」
「まだ満員電車に乗っているの?」

などと海の向こうから日本人を煽る情報発信者がいます。そうした主張に影響され、「自分も日本を脱出したい!」と感じる人もいるのではないでしょうか。

ですが、どんなものにも「理想と現実」があります。自由で悠々自適に安く生活できる海外、これは理想の姿ですが、一方で現実の姿というのも存在します。もちろん、海外での生活は快適な部分もありますが、そうではない部分もあり、こちらは意外と見落とされがちなのです。

今回はあえて、海外生活の快適ではない部分を中心にお話します。

海外では日本人は「マイノリティ」

言うまでもなく、海外では日本人はマイノリティ(少数派)です。

アメリカヨーロッパなどの先進国ならいざしらず、発展著しい東南アジアなどに住めば、先進国からの外国人としてもてはやされるのでは?」というイメージを持つ人もいるでしょう。世界にはたくさんの国がありますから、日本から来たというだけで気持ちよく持ち上げてくれる国もあるでしょう。しかし、マイノリティという立場は弱く、心細いものです。

2019年ベトナムに住む邦人起業家が、Twitterベトナムを差別する発言をして炎上したことがあります。発言に怒ったベトナム人が「日本に帰れ!」と総バッシングに転じ、さらにはベトナムに住む日本人も「日本人は差別主義者!」と風評被害にあい、日本人ヘイトを受けるのではとビクビクしながら過ごしているという話も見られます。

この件に限らず、海外で日本の評価を落とすことが起きると、現地に住む日本人はその脆弱な立場から被害を受けることがあるのです。日本に住んでいればまったくの無風で済むところが、海外に住んでいると台風の直撃を受けるほどの影響があるわけです。

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海外と英語

海外に住む場合は、いくつかの国では「英語」を話すことになります。

日常的に強制的に英語を話す機会に恵まれ、「無料」で英語力を鍛えられる環境に身を置くことは特に英語学習者からは「羨ましい」という眼差しで見られることでしょう。

しかし、そう甘くないのが現実です。筆者は米国の大学に留学し、会計学を専攻して単位取得して帰国しました。その話をすると「現地のアメリカ人と机を並べて勉強したのだから、英語力は伸びたのでしょう!?」と言われます。

確かに専門分野である「米国会計」についての知識が深く付き、ディスカッションやプレゼンテーション、資料を素早く読み、レポートを書く力は付きました。

でも、多くの人が想像する「英会話」については、あまり成長した感覚はありませんでした。米国での大学生活の多くを占めるのは「読解」です。「次の講義までに200ページ読んでレポートにまとめなさい」など、めまいがするほどリーディングアサインメントがあり、米国での大学生活には「一日中楽しい英会話」なんてするヒマがないのです。

さらに、日本人が英語力を身につけることで有利な立場に立てるのは、日本に住んでいる場合に限ります。

英語圏ではどれだけ英語が上手な日本人でも母国語ではなく、語学力は現地の人に劣りますから、思っているより良い思いが出来るものではありません。もとい、自身の語学力の限界を感じてガッカリすることも多いのではないでしょうか。

その結果、長く海外に身を置く人の中には「もう英語なんて聞きたくない。思い切り日本語で話したい」とストレスを抱える人も出てくるのです。

異文化での生活は辛いことも多い

異文化圏での生活は、最初は新鮮で物珍しく映ることも多いでしょう。それ故に、日本文化とはかけ離れた地域での生活を望むことは理解できます。

しかし、それが日常化すると苦痛を覚えることも少なくなりません。

筆者は海外に住んだことで、日本のサービスの良さを再認識することになりました。日本では笑顔で素早い買い物ができますが、海外ではお店によってはふてくされた顔で投げられるように商品を渡されることもあります。知人はフランスで引っ越しのサービスを頼んだら、泥だらけの靴で家に上がられ、家具をあちこちぶつけられてしまったことに嘆いていました。そこまでいかなくても、食事が合わずにストレスを抱えてしまうことは誰しもあるでしょう。

海外生活は異文化受容力次第

海外に住んで生活を楽しめるかどうかは、異文化をどれだけ受容できるか?によります。

筆者は清潔で外食が安く美味しい日本の快適さが忘れられず、海外にいくといい面に感動しつつも、「やっぱり日本は快適だな」と思わずにはいられません。もちろん、異文化受容力が高い人は、「細かいことを気にしない文化にこそ、日本にはない魅力を感じる」というでしょう。

つまるところ、日本と海外のどちらがよいか?という議論は「人による」としか言いようがないのです。ですので、影響力を持った人が「海外生活は快適だ」といっても、他の人にはまったく当てはまらないケースもよくあるということです。

特にSNSなどでは盲目的に「海外は素晴らしい、それに引き換え日本は」という論調の方を見かけることがあるので、意外な盲点としてお伝えしたいと思いました。