txt:編集部 / 岩沢卓(バッタネイション) 構成:編集部
© The New Japan Islands

新型コロナウイルスの影響が及ぼす影響

毎年3月にテキサス州オースティンで開催されるSXSW2020も新コロナウィルス感染症の影響で中止となった。直前まで開催されることになっていたが、オースティン市からの要請でSXSW2020の開催が中止になった。SXSWについては、PRONEWSでも毎年取り上げているイベントであるので参照していただきたい。

▶︎SXSW2019

SXSW2020開催が中止となり、出展を予定していた「The New Japan Islands(以下:NJI)」の出展や実施も中止となった。SXSW現地から日本と生中継を行うはずだった。

NJIは、形を変え、無観客でのイベント実施ガイドラインを設け、イベントとして日本国内で実施されることになった。総合演出である落合陽一氏のプランニングで、現場演出は進められ、それに合わせて配信チームの機材構成などを短期間で固めていくこととなった。

急遽、無観客配信の実施へと切り替え、スタッフの人数も制限し、感染予防対策を行いながらのライブ配信をこなった。今回は、いち早く無観客ライブを実施した現場の様子をストリーミングディレクターの岩沢卓氏の視点で綴ってもらった。

8K VJのパフォーマンスをどうやってライブ配信で伝えるか

8Kプロジェクターと極微細ミストによる空間演出 ©The New Japan Islands

今回の「The New Japan Islands」(以下:NJI)では、8K映像素材を落合氏がVJし、8Kプロジェクターでスクリーンに投影されることが予定されていた。オースティンでのSXSW2020開催中止を受けて急遽実施となった東京会場でも、ほぼ同様のシステムを持ち込んでの開催をすることとなった。

我々、配信チームは、その様子をライブ中継を通じて伝えるために、短時間で必要なスタッフ手配と機材手配を行った。

世界中でネットワークの利用が増加する中で、現実的な選択肢として配信解像度1080Pを選択しつつ、8Kプロジェクターの解像感を伝えるために、Panasonic LUMIX S1Hを中心とした大判センサーカメラを選択することにした。

Panasonic DC-S1HとFUJINON XK6x20を組み合わせたカメラシステム 会場内はスタッフ間の距離にも配慮したレイアウトが取られた
© The New Japan Islands
https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/03/dr-18_0v.jpg 平面仕込み図
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大判センサーカメラで高繊細映像を捉えた

8Kスイッチャーを用いた機材構成

8K VJシステム構築に用いられていたことから、配信システムのメインスイッチャーとしてもBlackmagic Design ATEM Constellation 8Kを今回採用した。

© The New Japan Islands

今回はHDモードでの動作で使用しており、トータルで40系統の入力数を扱えること、全入力にフレームコンバーターとフレームシンクロナイザーがあることで、SkypeZoomPCなど遠隔参加の入力数が増えた場合には柔軟に対応することが可能となった。

4 M/Eスイッチャーとして、画面構成の自由度も高く、内容が変化していく、ライブ中継の現場でも、イメージ通りの画面に近づけていくことが容易に実現することが出来た。

SkypeやZoomでの遠隔登壇

今回のNJIは、本来アメリカで開催予定だったイベントということもあり、登壇者の多くも海外からの参加を予定していた。また、新型コロナウイルス感染症への対策面からも国内からの登壇者の多くも遠隔で登壇してもらうこととなった。そのため、SkypeZoomといったツールを用いての実施を行った。

総合演出を務めた落合陽一
© The New Japan Islands

NJIは、全編英語によるイベントであり、視聴者の多くも米国、また米国時間に合わせたタイムスケジュールを組んでいた。

遠隔登壇の進行と技術に関しては、ステージ制作チームによって進められ、我々、配信チームが最終段の映像と音声受け渡しを行うという体制を取った。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/03/dr-18_0v.jpg SkypeZOOMを含めた全体システム図
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実際の現場は、スムーズに進行することが出来たが、各登壇者への全体進行状況に関する連絡方法などが、複雑なものになってしまっていたので、今後の遠隔登壇への課題を感じることになった。

遠隔登壇者と会場内のクロストークを実現するために

音響操作卓
© The New Japan Islands

SkypeZoomを用いて各拠点から参加してもらう際にシンプルな形はヘッドセットなどを用意して会話をすることとなるため、遠隔地から参加される方には、ヘッドセットなどを用意いただき登壇してもらう形を取った。メイン会場側では、小規模なPAシステムを構築し、会場向けの音響調整を行った上で、Skype/Zoom/YoutubeLive向けの配信音声ミックスを行った。

https://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2020/03/dr-18_0v.jpg 音響回線図
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無観客配信のこれから

今回は、想定されていたイベントが中止となったことから始まった企画だったが、今後は、無観客であったり、出演者が全員遠隔地から参加することを前提とした企画が増えてくると思われる。改めて、放送・映像信号だけでなくスマートフォンやPCとの信号の受け渡し、通信技術・サービスなどへの、総合的理解が求められると感じられる現場だった。

The New Japan Islands at SXSW2020について

  • 主催:The New Japan Islands実行委員会
  • 統括ディレクター:落合陽一
  • 特別協賛:ソフトバンク株式会社、パナソニック株式会社
  • 協賛:八海醸造株式会社
  • 特別協力:公益財団法人日本民藝館
  • 協力:アストロデザイン株式会社、株式会社アマナ、森ビル株式会社
  • 8Kコンテンツショーケース:NHK(日本放送協会
  • 後援:NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
[再現:SXSW2020]8K VJパフォーマンス「The New Japan Islands」をライブ配信の裏側