東京の池袋で起こった乗用車の事故から、2020年4月19日で1年が経ちました。

当時87歳の男性が運転する乗用車がおよそ150m暴走し、事故によって8人が負傷。2人が亡くなりました。

命を落としたのは、親子で歩いていた31歳の母親と3歳の娘。遺族の男性である松永さんは実名を公表し、ネットなどで交通事故の痛ましさを訴え続けています。

池袋暴走事故から1年、遺族が動画を公開

事故から1年の節目に会見をする予定だったところ、新型コロナウイルス感染症の影響で断念したという松永さん。

「各地で多くの交通事故が起きていることを知り、加害者にも被害者にもならないでほしい」という思いを込め、同月16日にYouTubeで動画を公開しました。

事故当日、警察から連絡を受けて「何かの間違いではないのか」とパニックになったという松永さん。病院に向かう電車内で2人が死亡したニュースを目にし、震えが止まらなくなったといいます。

病院に到着し、2人の遺体を見た時、あまりの無残さに言葉を失いました。特に娘は顔の損傷があまりにも酷く、看護師に見ることを止められるほどでした。

「真菜」「莉子」と声をかけ手を握ると、あんなに温かかった手は、傷だらけで冷たくなっていました。

私にとって最愛の妻と娘でしたし、愛していると伝えない日はありませんでした。その2人ともう一緒に生きていけない。抱きしめることができない。

その現実を前に、その日から眠ることも食べることもできず、2人の遺体の横で「いっそのこと死んだほうがマシなのではないか」と、ずっと考えていました。

池袋自動車暴走事故 遺族松永 ーより引用

苦しい日々を送る中で「2人の死を無駄にしたくない」と思うようになった松永さんは、交通事故防止を目的に活動をするようになりました。

松永さんは動画を見る人に向けて、このように思いを明かしています。

みな様は、自分自身が交通事故の加害者、被害者、遺族になることを想像したことがありますか?

私は遺族になるまで、交通事故はテレビのむこう側の話で、正直なところ他人ごとだと思っていました。

しかし、それは間違いでした。誰しもが、被害者にも、遺族にも、加害者にもなり得ます。

だからこそ、運転に不安がある上での運転や、ながら運転、あおり運転、飲酒運転などはしないようにしていただければと思っています。

池袋自動車暴走事故 遺族松永 ーより引用

過去の松永さんだけでなく、きっと多くの人が交通事故をどこか他人ごとのように思っているでしょう。しかし、誰にでも被害者になる可能性があるほか、運転をしていれば加害者になる可能性もあります。

松永さんのいろいろな感情が伝わってくる動画は多くの人の心を打ち、6万回以上再生されています。

・この件は本当に、1人の親として胸が痛みます。事故を減らさなくてはならない。

・自分の愛する家族が「もし…」と思うと耐えられません。松永さんの行動は素晴らしいです。

・動画から松永さんの葛藤や覚悟、家族への愛が伝わってきて涙した。自分も気を付けて運転しようと思う。

動画では、ほかにも今後の刑事裁判の話や、この1年間で起きた変化について松永さんが語っています。

松永さんの想いがより多くの人に届き、事故によって苦しむ人が1人でも減るよう祈るばかりです。


[文・構成/grape編集部]

出典
【池袋暴走事故 遺族】事故から1年 遺族としての想いをお話しします。