新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。そんななかで、Twitterでは「#アマビエ」のハッシュタグと共に、得体の知れない妖怪のイラストを投稿するムーブメントが起きている。これは一体なんなのか?

 特に『アマビエが来る』というタイトルで投稿された漫画が大きな話題を呼んだ。4月中旬現在で1.9万リツイート、4万いいね以上という値を叩き出している。今回は、そんな漫画を描かれた作者のトキワセイイチさん(@seiichitokiwa)にインタビューを敢行。SNSでのアマビエブームの契機となった漫画についてお話を伺った。



コロナの終息を願った「#アマビエ」ムーブメント

 普段からnoteやTwitterなどで漫画『きつねとたぬきといいなずけ』を自主連載されているというトキワさん。キツネタヌキと青年の日常を描いた作風が人気を呼んでいる。しかし今回話題になった作品のモチーフは架空の存在。一体どんなきっかけで執筆に至ったのだろうか。

「今年3月の初め頃、Twitterタイムラインで流れてきた妖店百貨展さん(@youmisedori)のアマビエを紹介するツイートで存在を知りました。そこに描かれていたアマビエの愛嬌のある姿と行動に可愛らしさとおかしみを感じ、“もし、現代にアマビエが現れたらどんな風になるだろう”と妄想しはじめたのがきっかけです」(トキワさん、以下同)

◆作品の内容と現実世界の拡散がリンクしていく

 妖店百貨展さんの投稿によれば、そもそもアマビエとは、江戸時代に肥後国(熊本県)に現れたとされる半人半魚で、「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」と呟き海に去っていく妖怪とのことだ。

 現在、世界中でコロナウイルスが流行し、甚大な影響を及ぼしていることは言うまでもない。そんななか、妖店百貨展さんの呼びかけにより、終息を願い「#アマビエ」のハッシュタグを付けてイラストを投稿する漫画家イラストレーターが続出。トキワさんの漫画が大きく拡散されたことにより、一大ムーブメントとなったのだ。その後、なんとアマビエ厚生労働省の感染拡大防止アイコンにも起用された。

 ところで、トキワさんは本作を描くにあたり、アマビエの設定をどうアレンジしたのだろうか?

「大筋とおもしろさはそのままに、時代設定だけを変更し、“起承転結”を強く意識しました。アマビエが事を起こす“起”、それを受け取る中年男性を“承”、広く伝える少年を“転”、物語の結末を読者に委ねた“結”といった具合です。気に入っている点は、アマビエの目的をSNSでの拡散と絡めて表現できたことでしょうか」

 作品の内容と現実での作品の広がり、それらをリンクしているかのように描けたことも良かった、とトキワさんは語ってくれた。

◆「アマエビ」? いいえ「アマビエ」です。不思議な魅力を持つキャラクター

 江戸時代の瓦版に掲載された木版画。トキワさんはそんな元来描かれてきたアマビエの珍妙な姿にも魅せられているという。

「既存の動物に当てはめがたい愛嬌のある容姿。木版画の絵自体はお世辞にも上手とは言えませんが妙な魅力がありますよね。あと、“名前”も魅力だと思います。“アマエビ”ではなく“アマビエ。この漫画を読んでくれた方の中にも誤読する方が多数いました。そんなある種の“隙”や、口に出したくなる語感も好きです」

◆暗い空気を少し変えられた“アマビエ”という存在

 最後に、今回の反響について所感を伺った。

Instagramで海外在住の方から『こっちでもアマビエ見たよ』と教えていただけたり、海外のサイトにこの漫画を取り上げてもらえたりと、想像を遥かに越える広がりを実感しています。投稿時は、まだ緊急事態宣言はされていませんでしたが、それでも世間は重い空気に包まれていました。おもしろがって描いた漫画が多くの人のちょっとした気分転換になっていることをありがたく思っています」



 ――トキワさんのおかげで存在を知った人も多いであろう“アマビエ”。現在はイラストだけではなく、形を模した和菓子や護符なども登場しているようだ。そんな、疫病に立ち向かうアイコンと、トキワさんの今後の活躍から目が離せない。<取材・文/TND幽介(A4studio)>

アマビエは、江戸時代に肥後国に出現したとされる半人半魚の妖怪(画像はトキワさん提供)