2020年春、人気SFアニメ攻殻機動隊」の最新作がNetflixにやってくる。その名も「攻殻機動隊 SAC_2045」(4月23日配信スタート)。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の神山健治と「APPLESEED」の荒牧伸志がダブル監督を務め、アニメーションはフル3DCGで表現。Netflixオリジナルアニメシリーズとして全世界同時配信される。そんな本作で主題歌を担当するのが、ロックバンドKing Gnu(キングヌー)の常田大希率いる音楽集団、millennium parade。同プロジェクトより、主催者であり楽曲制作を担当する常田と、CGクリエイションを担当するデジタルアーティストの神戸雄平に、「攻殻機動隊」の魅力、主題歌「Fly with me」に込めた想いを明かしてもらった。

【写真を見る】King Gnu(キングヌー)のメンバーとしても活躍する常田大希

millennium paradeが影響された「攻殻機動隊シリーズの世界観

2020年1月、「攻殻機動隊 SAC_2045(以下、SAC_2045)」の主題歌として、millennium paradeの楽曲「Fly with me」の起用が発表された。その際、代表の常田はオファーを受けた際のエピソードとして、「攻殻機動隊主題歌を作ってほしいというオファーをいただいた時、体中の血が湧き上がったのをいまでも覚えている。なぜなら俺たちがmillennium paradeで作ろうとしている世界観は攻殻機動隊から多大なる影響を受けているから。2つ返事でやらせてほしいと伝えた」というコメントを公式サイトに寄せている。

攻殻機動隊は、millennium paradeの中で「街並みのビジュアルカッコいい」など、クリエイティブの参考として話題に上がる作品の一つだった。主題歌のオファーがあった際、すぐにメンバーみんなに連絡したほど、常田は喜びを噛みしめたと言う。そして、CGクリエイターを務める神戸もまた、攻殻機動隊シリーズの大ファン。作品の世界観について次のように話した。

「初めて攻殻機動隊を観た時に、衝撃を受けました。従来のSFは近未来的な世界観の中にメカやロボットが描かれていたのに対し、攻殻機動隊は現代の街並みにタチコマのような多脚戦車が登場する。そこに何の違和感も感じない。僕はそれがすごくカッコいいと思いました。まるで、廃工場でファッションを撮影するような強烈さがありましたね」

■ “NEO TOKYO”を映した楽曲

SAC_2045」の主題歌にはいくつか候補があり、最終的にアニメ制作サイドから選ばれた楽曲が「Fly with me」だった。実は、19年5月に開催されたライブイベント「“millennium parade” Launch Party!!!」でも構想段階で披露されていた楽曲だ。そのライブの1曲目に演奏されていたことからも、この曲が彼らにとって特別なものだったと想像できる。数ある楽曲の中から選ばれた時を振り返り、常田は「(気持ちが)すごく上がりますよね」と語っている。

常田たちにとって思い入れの強い「Fly with me」。ライブ時と現在では受ける印象が違うそうだ。「イベントで初めて披露した時はラップの要素が主だったから、いまとは少し違う雰囲気で。そこに、king gnuの活動で得た、J-POP的なメロディのつけ方と歌モノの要素を取り入れて、ブラッシュアップしていった結果、この形に仕上がりました」

楽曲制作の前には、神山監督と荒牧監督との話し合いがあったそう。監督たちの作品づくりへの想いを聞くと共に、楽曲制作においては次のような話を聞いたと常田は言う。「時代性を映してほしいというのが監督たちの願いでした。でも、あまり意識せず自然に作ってほしいとも言われたんです」

millennium paradeは“TOKYO CHAOTIC(俺たちの時代の日本)”を楽曲やクリエイティブの制作で意識している。彼らのテーマを理解したうえでの、監督たちからの言葉だったのだろう。そんな「Fly with me」は、4人のボーカリスト、弦楽器、管楽器、鍵盤楽器…様々な音が折り重なったミクスチャスタイルの楽曲だ。近未来を舞台にしながら社会問題テーマに物語が紡がれる「攻殻機動隊」の混沌とした世界観と、とてもマッチしている。

■ “世界へ日本をどう発信していくか”を意識したアートワーク

神戸もアートワークの制作に入る前から、監督たちのインタビュー記事を読み作品づくりへの想いを感じ取っていたと言う。そんな彼にとって、円盤に封入される特典映像の撮影時に監督たちの生の声を目の前で聞いたことは強烈なインパクトだった。当時を振り返り「シンパシーを感じる部分があって、おこがましくもうれしかった」と語る。「すごく雲の上の存在だったので、お会いした時はとても緊張しました(笑)。でも、監督たちとお話しさせていただいて、作品づくりに対する姿勢、物事の見方が、僕らと近しい部分を感じられてうれしかったです。制作するうえでも、監督たちの魂がインスパイアされましたね」

攻殻機動隊」の世界的人気の高さから、「SAC_2045」はNetflixオリジナルアニメシリーズとして全世界に配信されることもあり、制作時には常田から神戸へ「世界へどう日本を発信していくか意識してほしい」と意見があったと言う。

「アートワークのラフを(常田)大希に見せた時、もっと世界を意識してほしいと言われて、現在のデザインに落とし込みました。MVも制作中なので、監督含めみなさんからどんな反応をもらえるかな…と考えています。ただこれだけは言えます。『SAC_2045』もいいけど、僕らのMVも同じくらいいいぞ、と(笑)

■ 「Fly with me」はmillennium paradeテーマソングでもある

攻殻機動隊シリーズは老若男女問わず、全世界から愛される作品だ。取材中、常田は本シリーズの魅力について「世界観」と何度か口にしていた。また、神戸もそれにうなずくと共に、「時代に沿った社会問題テクノロジーを映しだしていることが魅力の一つ」だとも語った。

「世界観の提唱として圧倒的だった押井守監督の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)。そして、神山監督が手掛けてきた『STAND ALONE COMPLEXシリーズは、その時代に起こっている社会問題テクノロジーとどう向き合っていくかを描いていると思っています。僕らの生活と一緒に『攻殻機動隊シリーズが取り上げる社会問題テクノロジーが変化している。様々なSF作品がありますけど、僕の中では圧倒的に“出来た”作品だと感じます」

SAC_2045」を通して世界各国の人が「Fly with me」を耳にするだろう。“世界から見た東京の音”をテーマに掲げるmillennium paradeにとって特別な一曲になることは間違いない。そんな同曲について、「millennium paradeの入社試験で歌わせたい」と笑いながら話す常田。最後に楽曲への想いを聞いた。

「『Fly with me』は、『SAC_2045』の主題歌であると同時に俺たち自身のテーマソングでもある。2020年は新しいmillennium paradeを見せていこうと動いていて、『Fly with me』はそのスタートとなる曲。そんな愛着と思い入れのある曲が、『攻殻機動隊』の一端を担えることをとても幸せに思います。楽しみに待っていてください」(Movie Walker・取材・文/阿部裕華)

millennium paradeの常田大希と神戸雄平にインタビュー!