1月31日に初の感染者が確認され、3月初めまでは一桁台にとどまっていたロシア新型コロナウイルス感染者。その後に増加し始め、4月に入ってからは1日に数千人のペースで急増。ジョンズホプキンス大学の集計によると、23日の時点で6万2773人に達している。モスクワ市で3万3940人、モスクワ州で7278人など主にヨーロッパ部を中心に感染が拡大している。

一方、ロシア極東での感染者は、ハバロフスク地方310人、 沿海州185人、ザバイカリエ地方64人、アムール州25人とさほど多くない。しかし、国境を接する中国は恐れをなしている。モスクワからウイルスが次々に「空輸」されてきているからだ。

海外で感染し、中国に入国した人の数は累計で385人。うち黒竜江省が119人、遼寧省が21人、吉林省が15例だ。吉林省衛生健康委員会が23日に発表した感染者の移動経路は次のようなものだ。

1970年生まれの舒蘭市在住の女性は、5日にアエロフロート1702便でモスクワを出発、6日にウラジオストクに到着後、バスで(中露国境の)綏芬河へ。税関でのPCR検査では陰性、牡丹江市の集中隔離センターに隔離。2回目、3回目の検査でも陰性。帰宅したが、23日に行った4回目のPCR検査で陽性判定が出て、吉林市伝染病病院に搬送され治療中。

このように、ロシアからウイルスが持ち込まれる状況に戦々恐々としているのは、北朝鮮も同じだ。

北朝鮮の医療当局は、中国国内での第1波の感染が収まったことで自国民の警戒感が薄れつつある間に、ロシアから新型コロナウイルスが持ち込まれる可能性に対して危機感を持ち、警戒を怠ってはいけないとの指示を下した。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、衛生防疫所の防疫宣伝員が人民班(町内会)や職場で講演会を行い、「ロシア伝染病新型コロナウイルス)が拡散している、中央人民保健指導委員会の指示に従って6人から10人以上集まってはいけない」などと強調したと伝えた。また、道内の病院関係者も「油断が死を呼ぶ」と繰り返しているという。

北朝鮮朝鮮労働党機関紙・労働新聞も、「ロシアで1日の感染者が4200人以上」(22日)、「ロシアで新たな伝染病院を建設」(23日)、「ロシア感染者約5万8000人」(24日)など、見出しにロシアと掲げた記事を連日掲載して、警戒心を高めようとしている。

それでも、一般国民の緊張感が今ひとつ高まらない一方で、医療、防疫機関関係者は緊張を強いられている。

病院の担当医師と看護師は、地域でコロナの疑いのある患者がいるとの通報が来ると、夜中でも現場に出動する。また、「わが国(北朝鮮で)伝染病が蔓延するかどうかは、一人ひとりの個人衛生と生活規則(の遵守)が大切だ」と繰り返し語っているとのことだ。

首脳会談に続いて行われた歓迎宴での金正恩氏とプーチン氏(2019年4月26日付朝鮮中央通信)