在宅勤務が進み、対面での会話が、電話やウェブ会議ツールZoomズーム)」やビデオ通話ができるチャットツールSkypeスカイプ)」などを活用したオンラインミーティングにとって代わっています。オンラインミーティングに、毎日のように参加しているという人もいるでしょう。

 しかし、「対面だとスムーズにコミュニケーションができるのに、オンラインだと円滑に話が進まない」「オンラインだと違和感を覚える」という人が少なくありません。「円滑に商談を進めるためには、やはり直接お会いして…」と誰しも考えていたと思いますが、それができない状況に直面しているといえます。

 中には、「オンラインでは円滑に話が進まなくてもしょうがない」「緊急事態宣言が解除するまで待とう」という人もいるかもしれませんが。この状況がいつまで続くか見通しが立ちません。オンラインでも違和感を持つことなく、対話を円滑に進めることができる方法はないのでしょうか。

 このように申し上げると、「それができないから、対面での商談や会議を実施していたのだ」という反応が返ってきます。しかし、発揮するスキルを絞るだけで、オンラインでのコミュニケーションを円滑にすることができるのです。それも、誰でも、すぐに発揮することができる方法です。

一度に多くの情報を伝えない

 実は、オンラインミーティングで相手から得られる情報は対面の場合に比べて、格段に少なくなっています。「対面がビデオ通話になっただけではないか」と思うかもしれませんが、肉声や息遣い、その場の動きから伝わる雰囲気や温度感が伝わる対面と、伝わらないオンラインでは、情報量に大きな差があるのです。

 そもそも、オンラインの場合、たいていはモニターを通じて上半身しか見えませんが、全身や広い背景まで見えるか、その周りしか見えないかで大きな違いがあります。

 オンラインは相手に与える情報量が異なるため、誤解も大きくなりますし、違和感を与えやすくなります。対面は「後でちょっと声をかけてフォローしておこう」ということもできますが、オンラインでは難しいため、誤解を与えた後の修復もしにくくなります。

 しかし、情報量が限定されることを逆手にとって、限られた情報量の中で特に際立つスキルに絞って発揮すれば、オンラインでも対面と同等にコミュニケーションができることになります。

 筆者が、対面とオンラインでのビジネススキル向上演習を実施してきた結果を踏まえると、さまざまなスキルを組み合わせたり、いくつかの動作を連続させて発揮したりするスキルは、対面の方が効果を与えやすく、「焦点を絞って話す」「相手の質問や話に的確に答える」という単純かつ単一で発揮できるスキルは、対面でもオンラインでも効果が変わらないということが分かっています。

 スキルを組み合わせたり、連動させたりして発揮する場合には、オンラインで情報量が少なくなることによって、繰り出せなくなる部分が出てくるわけですが、伝える内容を絞って相手に伝えることで相対的に高いレベルで効果を発揮しやすいのです。

 組み合わせや連動で発揮するスキルとしては、表現力、構成力、巻き込み力、合意形成力などがあります。表現力は、声や顔の表情や動作などの組み合わせや連動で発揮するスキルです。構成力は表現力と組み合わせた上で、どのような順番で話すかということですが、異なる話同士をつなぐスキルとの連動が必要になります。これらは対面の方が効果的です。

 一方、単純かつ単一で発揮できるスキルとしては、先述のように何に焦点を当てて話すかという説明力と、相手の話や質問にどう答えるかという返答力があります。

 まず、説明力についてお話します。重要な点か、緊急な点か、貢献できる点か、何を重視するか、あるいは、経過か結論か、将来地点の姿か現状か、どこに焦点を当てるかを明確にして説明すると、オンラインでは相手とのコミュニケーションが円滑に進みます。

 次に返答力です。相手の話や質問に対して、「反復する」「表現変更する」「詳述する」「要約する」「関連する例を挙げる」「関連する経験を話す」という一つ一つの返答方法は、単純かつ単一で発揮できるスキルですので、オンラインでも効果を発揮します。

 オンラインで相手に話す際は、スキルを組み合わせたり、連動させたりするよりも、物事を単純化して考えた上で単一のスキルを発揮することがおすすめです。

モチベーションファクター代表取締役 山口博

オンラインコミュニケーションのコツは?