詳細画像はこちら

ハイライトはパワー以上にステアリング

text:Greg Kable(グレッグケーブル
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
新しい3代目ミニJCW GPのハイライトとなるのが、ステアリングのレスポンス。速度感応式の電動パワステが生む重み付けに少し違和感があるが、切り込むほどに歓迎できる仕上がりだとわかってくる。

速度域が上がると、路面からの情報量の少なさを、適度に補ってくれる。標準のJCWをはるかに超える鋭さで、進行方向を変化させていく。

詳細画像はこちら
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP(欧州仕様)

このコーナリング特性を生んでいるのが、優れた姿勢制御と、抑え込まれたアンダーステア。そして、圧倒的なグリップ力だ。

大幅に手の入ったサスペンションと、溝付のレースタイヤによって、滑らかな路面であれば息を呑むようなコーナリングスピードに到達できる。そのかわり、横方向のグリップの限界を迎えるのは、相当に攻め込んだ場面に限られる。

JCW GPのハンドリングの真価を探るには、サーキットで長時間走り込むことが必要となる。標準のBMW M2クーペより、ニュルブルクリンクのラップタイムが速い可能性もありそうだ。

短時間の試乗で確かだったのは、並外れた高速走行時の安定性。空いたミュンヘン郊外のアウトバーンでは、258km/hに届く場面も何度かあった。見事に地面を掴み、さらに速度は増す勢いすらあった。

ミニによれば、環境が許せば265km/hに届くとのこと。もちろん、ミニ史上最速なことは明らかだ。ただし、最速のミニを達成するために、乗り心地は少し犠牲になっている。恐らく読者が想像するほどではないけれど。

サーキット育ちを主張するビジュアル

サスペンションは基本的に強靭だが、柔軟性を失っているほどではない。フロントがマクファーソン・ストラット式で、リアがマルチリンク式となる。

標準のJCWと比較すると、路面の状態に影響を受けやすい。とはいえ、ドイツの路面は全般的に滑らかではあったが。

詳細画像はこちら

ブレーキも、最速のミニに相応しい仕事をする。こちらもクラブマンJCWやカントリーマンJCWに用いられているものと同じ仕様。フロントには360mmのディスクと4ポッド・キャリパーが、リアには330mmのディスクとシングルポッドのフローティング・キャリパーが付く。

これまで以上に過激なボディーキットと、低く構えたスタンスもJCW GPの特徴。サーキット育ちであることをビジュアルでも強く主張する。

見た目は、2年半前のコンセプト・モデルを受け継ぎ、機能的な役割もしっかり果たしている。標準のJCWとの違いも明確。加算されたパフォーマンスを、表現したかのようでもある。

フロントで顕著なのは、より大きな冷却ダクトを備える彫りの深いバンパー。ボディサイドにはブレードのように切れ上がったオーバーフェンダーが付き、クルマのシリアルナンバーが刻まれる。

オーバーフェンダーの素材は、BMW i3と同じカーボンファイバー製。8J幅のホイールを収め、ワイドなプロポーションを完成させている。2本出しのマフラーを包むリアバンパー下部も、ディフューザー風のデザインを得ている。

ドライバーを見事に巻き込むドライビング

ミニJCW GPで何より目立つのは、リアハッチの上にそびえる巨大な専用のリアウイングだろう。ツーリングカーレースのミニTCRからそのまま持ってきたようなデザインだ。高速域でのダウンフォースの生成に役立つことは間違いない。

これまでにないスピードを獲得したミニJCW GP。しかもハンドリングは一切悪化していない。条件が許せば、ドライバーを見事に巻き込んだドライビングを享受できる。

詳細画像はこちら
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP(欧州仕様)

英国価格は3万3895ポンド(457万円)。標準のミニJCWからは、7935ポンド(107万円)の上昇となっている。

1つ気になるのが、これだけのパフォーマンスを獲得していながら、8速ATしか選べないということ。それ以外のハードコアな仕上がりは、ロードゴーイングレーサーを彷彿とさせる。

だが1点、トランスミッションの選択が、そのリアリティを惜しくも薄めているのだった。

ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP(英国仕様)のスペック

価格:3万3895ポンド(457万円)
全長:3838mm
全幅:1727mm
全高:1415mm
最高速度:265km/h
0-100km/h加速:5.2秒
燃費:13.7km/L
CO2排出量:167g/km
乾燥重量:1255kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:306ps/5000-6250rpm
最大トルク:45.8kg-m/1750-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック


■ミニの記事
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP
ミニ・ジョン・クーパー・ワークス(JCW) GP
【一挙にご紹介】2020年に登場予定の新しいモデル 10月分 後編
【写真で振り返る】印象的なクルマのカラーリング ガルフ、マルティニ、レナウン、555

【ミニ史上最速】ミニJCW GPへ試乗 306ps、3000台限定のスペシャル 後編