立夏が過ぎ、陽射しや空気に季節の移り変わりを感じますね。
5月10日は「コットンの日」です。「コッ(5)トン(10)」と読む語呂合わせと、木綿(コットン)が夏物の素材として5月に販売の最盛期を迎えることから、日本紡績協会が1995年に制定しました。日本では木綿の植え付けも、多くが5月上旬からはじまります。
今回は、地域の活性化や環境に配慮した日本でのコットン栽培と、世界中で広がりを見せるオーガニックコットンへの取り組みについてご紹介します。


園芸植物としても人気!コットンを自宅で栽培

コットン(cotton)はアオイ科ワタ属の熱帯・亜熱帯地域原産の、種子から綿毛をとる繊維植物。ハイビスカスに似た可憐な花が枯れてから1か月ほどで果実が割れ、なかから綿毛が付いたコットンボールが姿を見せます。観賞用としても人気があり、自宅で鉢植えや庭植えで栽培する人が増えているそうです。
5月頃に植えると、気温が高くなる梅雨明けの頃からぐんと成長して夏に開花、9〜10月には実をつけます。10~12月頃に、この実をドライフラワー状にしたものが花材として出回り、店頭で見かけることがありますね。
ちなみに、和名の「ワタ」は、「棉」または「綿」と書き、「棉」は加工される前の植物を指し、「糸へん」の「綿」は種を取り除き繊維になったものを指します。また「木綿」は漢語に由来し、「モクメン」から「モメン」となりました。木綿は綿毛の名称でしたが、やがて繊維だけではなく加工された布も総じて木綿と呼ばれるようになったそうです。

コットンの花

コットンの花


広がりを見せる、地域の活性化とエコへの取り組み

日本での綿花の栽培は、江戸時代から盛んに行われていました。明治時代には高い自給率を誇り輸出もしていましたが、現在の統計上の自給率は0%。長期に渡って海外からの輸入に頼る状況のなか、近年、日本古来の和綿生産の復活や、環境に配慮したオーガニックコットンの栽培がにわかに盛り上がりを見せています。
コットン栽培を手掛ける人々が集い、語らう場を創出する「全国コットンサミット」、東日本大震災で被災した農地でコットンを栽培し製品化まで行う「東北コットンプロジェクト」など、コットンを通じて地域の活性化とオーガニックやエコを意識した消費を促す取り組みが、各地で行われているのです。
地域のコミュニティに根ざした、作り手の顔が見えるものづくり。日本で栽培された綿花から作られた質の高い製品は、私たちの心を豊かに満たしてくれるに違いありません。


生産者と地球環境のために。オーガニックコットンが果たす役割

オーガニックコットンとは、オーガニック農産物等の生産方法の基準に従って、2、3年以上農薬や化学肥料を使わない農地で育てられ、栽培する人たちの安全や児童労働問題など働く人の環境を守って製造された綿のことをいいます。
実は、収穫されるコットンそのものには、オーガニックか否かで大きな差はないといわれています。オーガニックコットンは機械ではなく手摘みであったり、製品化される工程でも環境に配慮されるため、質の高いものが多くなります。一方で、普通に栽培された綿でも残留農薬は少ないため、収穫されたものからオーガニックかどうかを判別することは難しいそうです。では、オーガニックコットンそのものの価値はどこにあるのでしょうか。
世界コットン生産は、主に発展途上国の人々が担っています。通常の生産過程では多くの農薬や化学肥料が使われるため、深刻な環境汚染や働く人の健康被害が問題になっているのです。オーガニックコットンの栽培では、土質を改善し、水の使用が少なくてすむことも多く、環境や人体へのマイナス影響がありません。高い付加価値を持つオーガニックコットンの栽培は、生産者自らの健康を維持し、自分の仕事に誇りを持つことができるといわれています。さらに、オーガニックコットンには「フェアトレードの精神」が根本にあるため、労働のために教育の機会を奪われていた子どもたちの、児童労働問題の解決にもつながるのです。
生産に携わる人々の健康、子どもたちの未来、より良い地球環境を次世代に伝えていくこと。オーガニックコットンは、新しい価値を社会に生み出しているのです。私たちがオーガニックコットンを積極的に使用することは、生産者と環境の改善に直結しているのですね。
コットンの日の今日、まずはタオルやTシャツなど身近なものから、オーガニックコットンの製品にシフトしてみてはいかがでしょうか。

参考サイト
メイド・イン・アース
NPO法人 日本オーガニックコットン協会
一般財団法人 日本綿業振興会
みんなの趣味の園芸

世界を、日本を変える「オーガニックコットン」。5月10日は「コットンの日」です