韓国では、新型コロナウイルス感染症対策として3月22日から5月5日までソーシャルディスタンス強化期間を実施した。
学校もオンライン授業、会社もオンライン会議などでプライベートな会合はできるだけ控えるようにしてきた。
しかし、4月30日(釈迦の誕生日、祝日)から5月5日まで続く大型連休により、人々が油断することを懸念し、政府はソーシャルディスタンスを強調・注意を促していた。
だが、その懸念通りの事態が発生してしまった。ソウルにあるクラブ街で集団感染が発生してしまったのだ。
そして5月7日、韓国における新型コロナウイルス感染症対策の総本山、中央災難安全対策本部から韓国民一人ひとりに連絡が来た。
その内容は、5月2日に梨泰院(イテウォン:ソウルにあるクラブ街)のある3つのクラブを訪問した人は、2週間の外出・接触規制というもの。
もし、発熱などの症状がある場合には保健所で受診することを義務づけた。
(ここでは書かないが、具体的なクラブ名や時間も記されていた)
クラブ名が記されていたため、すぐにそれらはゲイバーであることが発覚、SNSを通じて拡散された。
それらのゲイバーに行った外国人を含め数人が新型コロナに感染したということだった。
ゲイバーということで、店の客が速やかにPCR検査を受けるのを躊躇う可能性も高い。そうなれば、新型コロナウイルスが首都ソウルだけでなく地方に拡散してしまう危険性がある。
そのため、ソウル市では市長が、梨泰院クラブ訪問者のうち連絡が取れない人に関しては警察官を伴って自宅訪問を実施、行動追跡も辞さないと発表した。
ソウル市がクラブを訪れた人のリストを確保したところ、10日の夜10時時点で66人の客の氏名を把握、接触者を含め合計5517人に感染の疑いがあることが分かった。
そのうち2405人には連絡ができてPCR検査を案内したものの、残りは偽名を使っていたり、電話に出なかったりして所在が明らかになっていない。
連絡が取れない人に関しては、市内各所に張り巡らされた監視カメラを使って、該当時間に来店した人物を追跡、その人の自宅を訪問するというのだ。
また、店がゲイバーという特殊性を考慮し、ソウル市は実名を公表せず匿名検査を施行することにした。
その結果、すでにソウル市では51人の感染者が発生していることが判明した。
京畿道では20人、仁川市では7人、忠北では5人、釜山市では1人、済州島でも1人が感染していることが分かった。これらは、クラブ訪問者とその家族や知人などを合わせた数である。
一方、匿名の検査にもかかわらず検査に応じない場合、「もし梨泰院クラブに行っていたことが後で発覚したら200万ウォン(約20万円)の罰金を課す」という。
このように市当局が強硬手段に出ている背景には、韓国で爆発的に感染者を増やした新天地教会事件がある。
これは、2月に新天地大邱(テグ:韓国の南東部にある地方名)教会で集団感染が発生した事件である。
新天地大邱協会での集団感染がその後、全国に拡大、韓国における新型コロナウイルス感染者数が激増してしまった。
この時、政府は新天地教会での集会に参加した人のリストを要求したものの、組織的な隠蔽工作を図り、感染者の追跡ができなかった。それが爆発的な感染拡大の引き金となり、全韓国民の憤慨を買った。
今回の梨泰院クラブ訪問者による感染は、思わぬところにも影響を及ぼしている。
梨泰院という地域は元々米軍基地に近いため、外国人が多くゲイバーも人気だった。そして、米軍基地の近くには韓国国防部がある。
今回の感染経路と行動が重なった人の中には国防部所属の軍人もいた。
国防部は5月11日、「11日午前10時基準、軍内COVID-19(新型コロナウイルス感染症)追加感染者は3人、累積感染者は46人(管理7、完治39)である」と発表した。
そして、感染拡大を防ぐため保健当局が定めた基準に相当する軍内隔離者は136人に達し、さらにその基準には及ばないものの予防的な隔離者として、1268人のリストが上がっている。
感染者1人が及ぼす悪影響は実に大きいのである。
ただ、韓国全体としてはコロナ禍を脱しつつあるといえる。台湾に続きプロ野球を開幕した。ただし、観戦者なしの開幕となった。
野球場を映すカメラを見ていると、観客席にはマスクをした人の絵とマスクをした大根の絵が描かれた布が張られていた。
韓国語で無は「ム」、大根も「ム」と発音するため、無観客をもじったものである。
観客席に観客がおらず、チアリーダーや記者だけの寂しい様子であったが、それらをネットで観戦したり、ZOOM(テレビ会議アプリ)などで応援したりするなど、オンライン大国ならではのやり方で、韓国人は試合を楽しんでいたようである。
一方、前回の記事で触れたが、ポストコロナを睨んで、韓国では株式投資が盛んだ。
当初はサムスン電子などの国内優良株を買う動きが主流だったが、ここにきて買い方がより大胆になっている。
韓国株だけでなく、海外の株にも目を向け始めたのだ。
韓国のアリ(個人投資家)たちは、今年に入って5月まで50兆ウォン(約5兆円)を超える海外株を買い漁った。
地域別では米国がダントツ多く353億6919万ウォン。過去最大の購入金額だった。海外株に占める米国株の割合は86%(金額ベース)である。
個別銘柄では、アップルがダントツ1位で、ハズブロ(Hasbro:玩具会社)、マイクロソフトと続き、なんと6位には日本の昭和電工が入っている。
現在、韓国の個人投資家たちは「スマートマネー」という異名を取っている。スマートマネーとは、短期の売買で高い差益を狙う資金のことである。
こうしたスマートマネーが狙う企業の中で、ハズブロが2位に入っているのが面白い。ハズブロは、米国の玩具メーカーで、モノポリーなどのボードゲームやアクションフィギュアなどのキャラクター玩具が主流だ。
スマートマネーは、米国でコロナ禍により在宅時間が増えるからその恩恵を得るのではないかとみているのだ。
同じく、日本のビデオゲームやナムコバンダイやコナミもそれぞれ10位、11位であり、同じ理由からとみられている。
6位の昭和電工に関しては、日本の韓国への輸出規制核心品目であり、半導体製造用のエッチングガスをを生産する企業だ。2次電池に入るパッケージングのラミフィルムも生産している。
コロナ禍により、グローバル半導体市場が委縮するという懸念があっても、データセンターなどで需要は堅調であり、今が安値と判断したスマートマネーが飛びついたとされている。
韓国では、ポストコロナという言葉が流行り始めた。長く続いた辛い引きこもり生活からそろそろ抜け出し、新たな成長を夢見ているのがスマートマネーと言えるだろう。
そして投資先は国内にとどまらず海外の有力企業へと広がっている。
韓国民としてはこれが果敢な挑戦で大きなリターンを得てほしいと思う半面、米国でのコロナ禍に収束の兆しが見えないこと、また米中の対立が激しさを増す中で、やや勇み足ではないかと心配でもある。
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