「【シゴトを知ろう】レストラン・バンケットスタッフ 編」では、白金台のレストラン「カフェ ラ・ボエム」「ステラ―ト」でシェフを務める湯川司さんに、お仕事内容や魅力などを伺いました。番外編では、お仕事をされる上でのこだわりや、この仕事ならではの「あるある」などをお伺いしていきます。

お客様の好みやペースに合わせて料理を提供

―― お客様とのやりとりで、特に心に残っていることはありますか?

修行時代、厨房に入る前にウエーターとして働かせてもらったことがありました。まずは実際にお客様の前へ立ち、どのようなお客様がどのように食事を楽しまれているのかを学ぶためです。この経験はシェフになった今でも、必要な貴重な経験となりました。

そのときのお客様の中に、私が料理人になった後も毎年来てくださる方がいらっしゃいました。「湯川さんいらっしゃいますか?」と、7年間も通い続けてくださったのです。本当にうれしく、ありがたかったです。


―― 仕事中、こだわってやっていることはありますか?

お客様の食べるペースや好み、シチュエーションに合わせて料理を作ることは心掛けています。例えば、ゆっくり召し上がっている方には次に出す料理の仕上げを遅らせたり、お酒を飲まれている方には少し塩を足したり。全てのお客様に心からご満足いただくことを目指して、臨機応変に対応しています。

また、仕事場をキレイに整えておくことにも、こだわっています。周りが片付いていないと頭の中も整理できません。頭が雑然としていると、料理に表れてしまうこともあるため、整理整頓は常に努めています。

ステラートの内観
ステラートの内観

―― この仕事に就いてから、どんな勉強をされていますか?

料理に関する知識・技術の勉強はずっと続けています。また、常に新しいメニューを生み出していくために、1日中頭のどこかで料理のことを考えています。ふとした瞬間にインスピレーションが湧くことがあります。例えば、花がきれいに咲いていたり、紅葉がきれいに色づいていたりすれば「この色合いを料理に取り入れてみよう」とひらめくこともあります。

また最近は、お客様がSNSを見てお店を決めることも多くなっているので、店の営業ツールとしてSNSの効果的な運用方法についても学び始めました。

大勢のスタッフが働くレストランではチームワークが大切

―― シェフになってから、一番驚いたことは何ですか?

シェフは料理以外にもさまざまな業務を行っている、ということです。料理以外の業務が想像以上に多くて驚きました。料理の現場はスーシェフ(副料理長)が仕切ってくれていて、シェフは料理をしている時間よりも店の管理業務を行う時間のほうが長いくらいです。レストランで働く仲間のチームワークがしっかりしているからできることですね。

現在私が働いているお店は、シェフに任される業務量が他のお店よりも多いかもしれません。店舗運営を全て任せてもらっています。大変ではありますが、その分自分の成長につながっています。どのお店に移っても、あるいは独立しても成功できるよう、常に課題を与えてもらっている環境なのでとても有難いです。


―― 一緒に働いている人は、どんな人が多いですか?

「ステラ―ト」「カフェ ラ・ボエム」共に、個性豊かな人ばかりです。「ステラ―ト」にはキッチン・ホール含めて9名、「カフェ ラ・ボエム」には総勢55名のスタッフが働いており、一人一人性格も目標も異なります。

スタッフ全員に共通しているのは「料理が好き」、そして「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちを持っていることです。こうした共通の想いを胸に、日々のレストラン業務でも、ウエディングパーティーでも、チームワークを大切にして働いています。


―― この仕事ならではの「あるある」なことはありますか?

友達と家で食事をする際に、料理を任されることが多いです。スーパーで買った普通の食材ですが、少し盛り付けにこだわって作ると「家でこんな料理が作れるの!?」と驚いてくれるのは「あるある」かもしれません(笑)。


―― 働くにあたって、気を付けていることはありますか?

仕事中に気を付けているのは、スタッフの表情を確認することです。些細な変化にも気づけるように、みんなとコミュニケーションを取ることは大切にしています。

また、現在のお店はオープンキッチンであり、お客様とも直接お話をする機会もあり、シェフとして顔を覚えてもらっているので、仕事終了後も、家に着くまで気を抜かないように心掛けています。いつどこでお客様にお会いするか分からないので、疲れた顔を見せないようにしています。

また、体調管理も欠かせません。結婚式やパーティーが多く予定されているときは特に気を付けています。1日の疲れはなるべくその日のうちに取るよう、どんなに疲れていても毎晩必ずお風呂に浸かり、ストレッチをしています。

技術を磨き、やる気のある人には、さまざまな可能性がある

―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか?

会社やお店によって異なりますが、「ステラ―ト」「カフェ ラ・ボエム」を運営している株式会社グローバルダイニングでは、非常に幅広いキャリアパスが用意されています。年齢・性別・国籍などは関係なく、技術を磨いていて、やる気のある人はきちんと評価してもらえるので、自分次第でやりたいことをどんどん実現できます。

例えば、グローバルダイニングでは月に1度、各店の料理人が特定のテーマに沿って料理を作り、お互いに審査し合う「料理コンテスト」を開催しています。このコンテストでおいしいものを作れれば評価が大きく上がり、新店舗のシェフを任されることもあります。中には、20代前半でシェフや店長になる人もいます。

また、さまざまな業種のレストランを展開しているため、例えば中華のシェフからフレンチのシェフにキャリアチェンジすることもできます。もちろん、シェフや店長を目指すだけではなく、独立を目指すことも可能です。実力主義なので常に気を引き締めなければいけませんが、チャレンジ精神が旺盛な人にとってはチャンスがたくさんある会社であり、業界だと思います。

湯川さんの料理
湯川さんの料理

―― 今後の目標を教えてください。

まずは今勤めているお店を盛り上げて、白金で一番のレストランにすることが目標です。この目標達成に向けて、最高のチームを作り上げていきたいと思います。チームで店を守り、さらなる高みを目指し続けていくには、シェフと同じ気持ちを受け継いでくれるスタッフを育てていかなければなりません。そのため、後輩の育成にも力を注いでいきたいと考えています。

そして将来的には、独立して自分の店を持ちたいです。高級食材を使わずとも料理がおいしくて、リーズナブルで、いつもよりちょっと頑張れば行けるようなお店を作るのが夢です。


湯川さんのような調理担当の他、接客担当や営業担当などのさまざまな業務に分かれる「レストラン・バンケットスタッフ」。どの業務に就くとしても、おもてなしスペシャリストとしてお客様の満足を追求することが欠かせません。この仕事に興味のある人は、まずは身近な誰かを喜ばせることから挑戦してみてはいかがでしょうか。そこに、レストラン・バンケットスタッフとして活躍するためのヒントが隠されているかもしれません。
 
 
profile】株式会社グローバルダイニング「カフェ ラ・ボエム」「ステラ―ト」シェフ 湯川司

※メインの写真はレストラン「ステラート」のルーフトップにて撮影