アウスゲイル

2012年にリリースされ、北欧の様々なアワードを受賞したデビュー・アルバム『Dýrð í dauðaþögn』と、ジョン・グラント(John Grant)が歌詞をサポートしたその英語詞版『In the Silence』(2014年)をリリース後、2017年の『Afterglow』でさらに世界の様々な場所へと活躍の舞台を広げ、日本でも人気を博すアイスランドのシンガーソングライター、アウスゲイル(Ásgeir。彼が通算3枚目となる最新アルバム『Bury The Moon』(アイスランド語詞版アルバムは『Sátt』)を完成させた。

Ásgeir - Youth (Official Music Video)

デビュー・アルバムでのアコースティックギターの響きと歌を中心にエレクトロニックな要素をそっと加えた簡素ながら温かみを感じるサウンドを経て、前作『Afterglow』では打ち込みビートコーラスアレンジなども加えながら、プロダクション面でのさらなる実験を追求した彼は、今回の新作で一度原点回帰。アルバムに向けてまっさらな状態から制作をはじめた楽曲に加えて、曲として完成していなかった過去のアイディアも活かしながら、ふたたびギターと声を楽曲の中心に据えた、そぎ落とされた“歌のアルバム”に仕上げている。 とはいえ、『Bury The Moon』は、ただデビュー作の頃の作風に回帰したアルバムかというと、そうではないだろう。今回の収録曲には、冒頭の“Pictures”や“Youth”“Breathe”などを筆頭に全編にわたってたびたび登場するホーンアレンジをはじめとして、様々な場面にかなり繊細なタッチでアレンジ面での工夫が詰め込まれていることが分かる。つまり、『Bury The Moon』は1作目のシンプルな歌心と、2作目でのアレンジ面での工夫が、絶妙なバランスでひとつになった作品であり、そうした要素が緻密に重なり合うようにして、誰かの生活や人生の機微を浮かび上がらせていくような雰囲気は、まさにアウスゲイルならではだ。

アウスゲイル
そして彼の楽曲の魅力は、レコーディング作品以上に心震わせる歌の力や、ライブでも顕著なアコースティックエレクトロニックな音の融合などによって、音源以上にライブでこそ真価を発揮する。彼はこれまでに2014年2月に新木場スタジオコーストで開催された<Hostess Club Weekender>での初来日以降、6年間に7度来日。同年7月の<FUJI ROCK FESTIVAL ‘14>ではホワイトステージの大自然をバックに初の日本でのフェス出演を成功させると、2015年1月には東京・大阪で初の単独公演を開催。翌2016年には<Summer Sonic 2016>の深夜帯<HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER>に、ジョン・グラントとともに出演した。そして2017年には、7月の<FUJI ROCK FESTIVAL '17>と、11月の東京・大阪での単独公演で2度来日。2020年5月18日(月)に開催予定だった来日公演は、COVID-19新型コロナウイルス感染症)の影響を受けて中止となったものの、状況が整う頃には、ふたたびあの素晴らしいライブが観られることを、楽しみにしている人も多いだろう。 そこで今回は、アイスランドにいる彼に過去の来日時の記憶の中で印象的だったことを、コメント付きのフォトダイアリー形式でまとめてもらった。新作『Bury The Moon』を聴きながら、彼の日本での思い出や、日本のリスナーとの6年間に思いを巡らせてみてほしい。

text by 杉山仁

PHOTO DIARY

2014年2月 Hostess Club Weekenderでの初来日

アウスゲイル

駐日アイスランド大使館で無料ライヴ この日のことはよく覚えているよ。たくさんの素敵な人たちと出会い、とても楽しい時間を過ごした。特に柔道の世界チャンピオンだって言う人に会ったことが印象的だった。彼はすごくクールでね。この日はすごい雪が降っていて、大使館に行く道中にも写真を撮ったんだけど、日本の雪はすごく柔らかくて、ゆっくり舞い落ちてくるので口でキャッチするのが簡単だった。実は大使館のロビーで雪まみれになって撮った写真もあるんだよね。

アウスゲイル

焼肉 この来日以来、焼肉に行くことが最も好きなことの一つになったんだ。日本に来る際にはいつも同じ焼肉店に行くんだけど、そこは店内で喫煙ができるんだよね。すごく僕にとっては驚きだったんだけど、当時は多くのメンバーが喫煙していたから嬉しかったよ。今ではもう何年も吸ってないから、次来店した時はどう感じるのか、ちょっとわからないけど。

2014年7月 フジロックフェスティバル初出演

アウスゲイル
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フクロウカフェ訪問 この経験はよく覚えているよ。大体ツアーに出てる時って毎日同じことの繰り返しだから、この様にドライブしてフクロウカフェに行けたのはすごく新鮮で嬉しかった。僕を含むアイスランド人メンバー全員にとって初めての体験だったので、全てのことを吸収して帰ろうとしたよ。色んな色やサイズのフクロウがいて、コーヒーを飲みながら抱っこしたりできるんだ。とりわけ記憶に残っているのが、ドラマーのヘルギが気に入ったフクロウがいたんだけど、その子が彼の頭の上に座って、帽子の上に糞をしてみんなで大爆笑したことだね。

アウスゲイル
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縁日体験 これはどこかで行なわれていたお祭りのようなもので、すごく天気の良い日で気持ち良かったのを覚えているよ。手で金魚をすくうなんていう初めての経験をたくさんしたんだ。

2015年1月 初単独来日ツアー

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東京公演前の楽屋での様子 出番の前にシャツにアイロンをかけているのかな。きっと初の東京公演前ですごく緊張していたんじゃないかな。あの時ステージのセットアップを手伝ってくれた人たちが、これまで出会った中でもすごくプロフェッショナルだったのを記憶している。すごくきっちりしていて的確なんだ。でもそれってほとんどの日本人の特徴でもあるんだよね。

アウスゲイル

音楽機材ショッピング これは何度か訪れたお店で、僕らが大好きなヴィンテージシンセサイザーのコレクションが豊富なんだ。確か愛用しているRoland SH2もここで買ったんじゃなかったかな?

2016年8月 Hostess Club All-Nighterでの来日

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日本のファッション誌用の撮影風景 これはファッション誌用の撮影で、メイクさんやクルーなどすごくたくさんのプロの方々に囲まれた現場だったのを覚えている。確か来日したてで睡眠不足だったんじゃないかな。でもこの水を使った撮影のアイディアはすごく気に入ったんだ。

2017年4月 プロモーション来日

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が満開の最高の季節での来日は素晴らしかったよ。これまで見た事がないぐらいすごくカラフルだった。

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寿司 日本にいる時は基本的に寿司を食べている。日本人は毎日寿司を食べることはしないんだって? でも僕たちは毎日食べる。普段寿司を食べないメンバーでさえ、日本にいる時は毎日寿司を食べるんだ。

2017年7月 フジロックフェスティバル再出演

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出番前の楽屋 出演時間までこのホテルの楽屋で過ごしたんだ。素敵な景色とケータリングのスナックが印象的だった。

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フジロックフェスティバル会場 確かインタビューと写真撮影で自然の中を散歩したんだけど、すごくキレイだったよ。

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ハリネズミカフェ コーヒーを飲みながらハリネズミを触るなんて、初めての体験だったね。今後の人生でもそうできる経験じゃないと思うけど、すごく面白かったよ。

2017年11月 再単独来日ツアーでの宝探し企画&その勝者

アウスゲイル
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これは日本のツアー会場で実施した宝探し企画。世界に一つしかないレコードが会場のどこかに隠されていて、それを見事探し当てた勝者との記念撮影。みんなのハッピーな顔を見られて楽しかったよ。これまで僕の音楽をサポートしてくれた人達とあの瞬間を共有できたのは素晴らしかった。

2020年5月 アイスランドでの最近の様子

アウスゲイル

自宅近くの林の中へガールフレンドと出かけた際に、友達が貸してくれたすごく良いカメラを持っていってこの写真を撮影したんだ。

 

Comment by Ásgeir

RELEASE INFORMATION

アウスゲイル

Bury The Moon

Ásgeir (アウスゲイル) 2020.05.13(水)※歌詞対訳、日本盤ボーナス・ディスク付、(直輸入盤仕様) One Little IndianCaroline UICB-1009/10 ¥2,700(+tax) <トラックリスト> [DISC 1] 1.Pictures 2.Youth 3.Breathe 4.Eventide 5.Lazy Giants 6.Overlay 7.Rattled Snow 8.Turn Gold To Sand 9.Living Water 10.Until Daybreak 11.Bury The Moon [DISC 2]1. Lazy Giants (Japan Version) 2. Rattled Snow (Japan Version) 3. Clear Sky 4. Hope オフィシャルサイトアルバム『Bury The Moon』配信中!

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