緊急事態宣言」が全国で発出してから、日本全国が自粛ムードに包まれているなか、自宅での過ごし方に注目が集まっています。家にいながら映画や音楽などを愉しむことができる「サブスクリプション(以下、サブスク)」は、外出できない国民の強い味方なようです。現在のサブスクは多岐にわたり、クリーニングやお花、自動車に至るまで多くの定額制サービスが展開されています。

総務省が発表した「特集 人口減少時代のICTによる持続的成長」によると、世界の動画配信市場で、2015年には動画配信売上高の60%をシェアしているといい、昨今のサブスクの勢いが表れています。さらに2020年になるとダウンロード課金型が21.9億ドルに対し、定額制サービスは71.2億ドルと大きく差をつけているようです。

テレワーク導入により、自宅で仕事と子育てを両立している世帯では、サブスクをうまく活用して乗り越えている家庭も多いでしょう。しかし今回は、サブスクに頼り過ぎたことによっておこってしまったトラブルをご紹介します。

子育てに無関心な夫 

共働きのT夫妻には、7歳のひとり息子Aくんがいます。普段からiPadを使いこなすAくんは、臨時休校が決まってからというもの、時間を見つけてはiPadで動画配信をチェックしているようです。

緊急事態宣言」からリモートワークに切り替わったT夫さんは、家にいるにも関わらずAくんの相手をすることはせず、自室から出てくることはあまりなかったのだとか。そんなT夫さんのかわりに、仕事を休むことができない妻が、朝から2人分のお弁当をつくって出社するのだといいます。

「学校の宿題をみてほしい」という妻の願いも聞き入れず、自室で仕事のみをこなすT夫さんに、妻はイライラを募らせていたようです。

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息子と2人で散歩へ 

夫の手伝いもなく、子供は自由に動画視聴三昧。そんな毎日を繰り返すうちに、妻の堪忍袋の緒が切れたようで、ある日息子からiPadを取り上げ、2人を家から追い出したそうです。「いちど外の空気を2人で吸っておいで」という妻に促されて、久々に外に出たT夫さんとAくんは、言葉少なに近所の公園まで歩いていったのだとか。

妻から「人とは接しない」「子供から目を離さない」「気持ちが晴れたらすぐに帰る」という3点をお願いされたT夫さん。それくらい簡単だ、と深く考えずに引き受けたのだそう。しかし、このおごりがとんでもないトラブルを生むのでした。

息子が消えた!?

近所の公園まで徒歩で10分ほど。普段ならジョギングやウォーキングをする人が多い公園ですが、緊急事態宣言のためか、人もまばらだったようです。すでに公園に来ていた親子を避けるために、ひとまずベンチで休むことにしました。退屈を持て余したT夫さんは、自販機でコーヒーでも買おうとAくんに声をかけたそうです。

携帯電話を渡すから、これで動画でも見ていて。ほかの子供と遊ばずに、ここで待っているように。」そういって、T夫さんは自身の携帯電話を渡し、公園外にある自販機まで歩いて買いに行ったのだそう。携帯電話さえ渡しておけば、Aくんはじっと待つことができると、油断していたのです。そうして、15分ほどその場を離れたT夫さん。一服すませ公園のベンチへ戻ると、そこにAくんがいないことに気づきました。周囲を見渡しても、遊具を見に行ってもいない…。周辺を探してもAくんを見つけることができなかったといいます。

子供が迷子になった!と気づいても、携帯電話はAくんに渡していたため、慌てて自宅に戻ったそうです。しかし、Aくんはおろか妻も自宅にいませんでした。固定電話から妻の携帯へ電話をかけると、すぐに電話はつながったといいます。電話越しでも伝わる、怒りに震えた妻の声で「今すぐ交番にきて」といわれたのでした。

保護された息子は動画に夢中?

交番に呼び出された夫は、交番内でも動画に夢中のAくん、仁王立ちの妻と合流したのでした。Aくんの無事に安堵したのもつかの間、妻からの叱責と警察官からの厳重注意が待っていました。警察から事情をきいて、夫はようやく自分の問題点が理解できたのでした。

近所を巡回中の警官が、公園で遊ぶでもなく、ひとりきりで携帯を覗き込んでいたAくんが気になり、声をかけたというのです。その際、Aくんから「お父さんに、『この携帯電話を持ってじっとしていなさい』といわれた」という発言から、事件性を感じた警官がすぐに保護し、所持していた携帯電話に登録されていた妻の携帯へ連絡を入れたようでした。警察から「息子を保護した」と連絡をもらった妻は、血相を変えて交番に迎えにいったそうです。そのあいだも、Aくんは動画に夢中だったのだとか…。

警官に謝罪とお礼を伝え、交番をあとにしたT夫妻とAくんですが、妻の怒りは収まりません。「3つの約束をなにひとつ守っていない。保護したのが警官でなかったら、どうしたのか。」と怒る妻に謝ることしかできなかった夫は、自身の行動に後悔しきりだったようです。動画さえ見せていれば大丈夫だと思い込み、子供から目を離したことで周囲に迷惑をかけてしまった、とあれば簡単に許すことはできないでしょう。

サブスクは便利で、子供にも人気のサービスです。しかし、それを管理するのは親でなければなりません。T夫妻は今回のことを教訓に、動画視聴にルールを設けたそうです。そして、子育てに無関心だった夫も、少しずつAくんと遊ぶようになったのだとか。これからは、親子3人でサブスクを愉しめるといいですね。

【参照】
総務省特集 人口減少時代のICTによる持続的成長