カートリッジ、ゲームカードDVD-ROMなどと様々なメディアで販売されているゲームですが、そのメディアに収録されているのはゲームプログラムデータ。これを複製して実行できるデバイスに、任天堂が全世界で訴訟問題を起こした「マジコン」があります...が、そのお話はまた後日。 

 

 実はプログラムデータをまとめた「ROMファイル」でゲームプレイできるシステムは他にも存在します。それが「エミュレータ」です。

 エミュレータパソコン上で各種ゲーム機と同じ動作をしてくれるプログラムのこと。ファミコンスーファミメガドライブPS2といったゲーム機エミュレータは古くから存在しており、一部のユーザーの間で普及し、エミュレータ上で動かすROMファイルネット経由で飛び交っていました。

 法律上は実際に所持しているゲームソフトからROMファイルを作るのであれば私的使用のための複製(著作権法第30条)となりますが、実際にはROMファイルを提供しているアングラサイトからのダウンロードや、P2Pソフトを使っての入手がスタンダード。つまるところ違法で真っ黒。それだけに自分からエミュレータを使っているとアピールすることは犯罪を無意識に自白しているのと同意だったのですが、YouTubeおよびニコニコ動画の普及でエミュレータは一躍注目される存在となりました。

 

 動画共有サイトゲーム動画を見ていると、誰もが驚くスーパープレイ動画を見かけることがあります。中には人間技ではないトリックの連続で、1つのミスもなくエンディングまで迎えているものも。これらの動画のタイトルや共有タグを見るとそこに刻まれているのは「TAS」(タス)という言葉...。え、TASさんという人がプレイしているの!?

 TASの正式名称はTool Assisted Speedrunツール・アシステッドスピードラン)。エミュレータに備わるスローモーション実行や一時停止、リプレイなどの機能を駆使することで、どれだけ最短でゲームクリアできるかを競うゲームプレイスタイルクリアするのが難しいアクションゲームだけではなくRPGタイムアタックにも使われています。実際にニコニコ動画で「TAS ドラクエ」を検索すると、スーファミドラゴンクエストVを2時間53分22秒でクリアしている記録映像などがごっそりと出てきます。

 またTool Assisted Superplay(ツール・アシステッドスーパープレイTAPと略すこともある)の略語としても定着しています。魅せるプレイを記録したものが多く、バグ技・裏技などを含めて理解不能な驚愕・衝撃映像が見られることもしばしば。たとえばニコニコ動画にある「【TASさんの休日TASさんサッカーを楽しんだようです」では、明らかゴールの後ろからボールを入れているのに得点が入っており、そのルール不可解すぎるルールに「イカサマイレブン」「腹筋崩壊」といったタグが付けられているほど。

 エミュレータの各機能を使えば誰でもカンタンにTAS動画が作れるわけではありません。「勢いTAS作り マリオ篇」というメイキング動画には失敗シーンも余すことなくノーカット収録しており、無駄のないプレイをつなげるのにどれだけの苦労が必要なのかを笑いでもって教えてくれます。

 

 ゲームデザイナーが想定もしていなかったプレイだからこそ、ゲーム好きはもちろんあまりゲームに興味のない人も惹きつけるTAS動画。アンダーグラウンド育ちの遊び方ではありますが、今後も多くの作品が生まれていくことでしょう。



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Written Photo by 武者良太

人気ゲームの「スーパープレイ動画」はなぜ可能?限りなく黒いエミュレータの世界