日本一ソフトウェアより発売された、女装覚醒アドベンチャーボク姫PROJECT』。「電撃PlayStation」付録の『デンプレコミック』にてコミカライズが開始されて以降大きな反響を呼び、公式Twitterは1.4万フォロワーを超えるなど、メディア展開されていた本作が遂にゲーム化されました。女装覚醒アドベンチャーと銘打っている通り、日本一ソフトウェア初となる“ほぼ”全年齢向け女装ゲームとなる本作。レーティングは「CERO-B」となっているため、“ほぼ”健全な作品です。本稿では、『ボク姫PROJECT』についてのレビュー記事をお届けします!

取材・文 / 島中一郎

◆発売を楽しみにしていたゆえに衝撃の物語展開

舞台は、男女比1:99と極端な学校“私立百合愛学園”。過去に男子部が女性部に対して問題を起こしてしまったこともあり、学園内には過激とも思えるほどの女尊男卑の思想が吹き荒れています。そんな学園の男子部へ入学が決まっている主人公・伊草ミナトは、大好きな姉・マリカが在籍していることもあり、一緒に学園生活が送れるとワクワクの様子……でしたが、その期待は母からの電話によって引き裂かれてしまうことになってしまいます。

母の口から、マリカが学園内で意識不明で倒れ、運ばれた病院で昏睡状態が続いていることが明かされます。急いで病院に駆け付けるミナトですが、マリカは一向に目覚める気配を見せません。しかも学園は、治療費を負担する代わりに事故を隠ぺいしようとする始末。

しかし、ミナトは姉の事故の原因が分かれば、昏睡状態から立ち直る手がかりに繋がるかもしれないと、希望を捨てません。幼馴染みで従妹でもあるアキラアドバイスのもと女装し学園に潜入。アキラの本名である“エリカ”という名前を借りて、事故の真相を探りはじめます。

ちなみに、本作が発売される前にはYouTubeにて10日間にわたり、“初心者向け10連動画”と称したプロモーション映像が、1本ずつ公開されました。映像にはミナトとアキラが登場し、本作の魅力について漫才形式で紹介。漫才の中で本作の制作会社である日本一ソフトウェアをいじり倒したり、様々な作品のパロディネタを交えつつ世界観やキャラクターの説明を行ったりと、作品の世界観を楽しみながら知ることができる内容となっています。



そんなプロモーション映像を事前に観ていた筆者は、コメディギャグ要素が強い作品だという先入観をすっかり抱いていたので、ゲームの序盤では真逆の雰囲気に驚かされました。先述した姉の事故はもちろん、主人公の暗く悲しい背景が明かされたり、胸が締め付けられるような展開の数々に、「あんなに明るそうに見えたキャラクターたちに、こんなにも重いエピソードがあったなんて……」と、発売前とのギャップもあって、スタートしてすぐにグイグイと引き込まれてしまいました。

ただ、ゲーム全体が暗い雰囲気かというわけではなく、序盤では提示される選択肢の内どちらを選んでも、必ず一度はゲームオーバーになり“なぜなのボク姫”というオマケコーナーが始まります。このコーナーでは、プロモーション映像でお馴染みとなっているミナトとアキラコンビが登場。何故バッドエンドを迎えてしまったのか、漫才形式で解説してくれるのです。

序盤のストーリーに驚いていたプレイヤーも、ここでようやく「期待通りの展開になってきた」とホッとできるわけです。なぜなのボク姫の第1回では、バッドエンドになった理由は“選択肢が隠されていたから”で、コーナーを初お披露目するための強制的なゲームオーバーだったことが明かされます。一度ゲームオーバーになってリトライすることで初めて、正しい選択肢が登場するのです。

また、アキラは本編より一足先にオマケコーナーに登場することになり、「メインヒロインに対する不当な扱いだ」と不貞腐れるなど、メタ的なシナリオが笑いを誘います。また単にパロディネタを繰り返すだけでなく、ゲームシステムを絡めてプレイヤーに驚きを与えてくるような演出は純粋に面白く、以降の展開について強い期待感を抱かせてくれました。

◆充実した女装ライフを支えるキャラクターたち

ここからは、本作に登場するキャラクターについてご紹介していきましょう。前述した通り、主人公・ミナトは姉が巻き込まれた事故の真相を探るべく、女装して私立百合愛学園に入学することになります。そして、ミナトが女装するキッカケを与え、女装生活を献身的(?)に支えてくれるのが、主人公の従妹であるアキラです。

卑屈でアイロニックな性格ながら、アキラの女装男子に対する知識は確かなもの。横髪でエラを隠せるようウィッグを付け、顔の立体感を減らすようメイクを施してあげるなど、ミナトの女装に関して適切なアドバイスを与えてくれます。

女装覚醒アドベンチャーと言うだけあって、ゲームを通してプレイヤーにも女装に関する様々なテクニックを伝授しようとする気概をヒシヒシと感じさせるシーンも散在しています。例えば、スカートひとつとってもコクーンスカートフレアスカート、トレンチスカートといった様々な種類を交えて説明するなど描写が細かく、アキラの指導を通して、女装男子に対する情熱が随所から見受けられるのです。

事件の真相を求め女装に磨きをかけていくミナトですが、先述した四姫に選ばれるためには、“姫選挙”と呼ばれるアピール合戦に勝利しなくてはなりません。主人公の最初のライバルとなるのが、鬼灯リラというカリスマ溢れる女子高生。天才的なファッションセンスメイク技術を併せ持ち、読者モデルとしてJKの間で絶大な支持を誇る実力者です。

非の打ち所がない完璧な存在のように見えるリラですが、彼女もまた、主人公と同じように誰にも言えない秘密を抱えています。物語の分岐によってはお互いの秘密を打ち明ける展開があり、それぞれのキャラクターの個性を活かしつつ、見せ場がしっかりと用意されているなど、描写が丁寧なこともポイントです。

学園には他にも、超が付くほどの大和撫子的存在の龍宮院ウラン、見目麗しい外見と優雅な立ち居振る舞いから姫騎士と呼ばれる姫神ダリア、学園一の姫にして国民的アイドルである姫神エルメスなど、魅力的なキャラクターたちが登場します。なかでも、筆者は小動物のような可愛らしいビジュアルを持つ一方で、主人公の過去を知っているようなミステリアスな一面も見せる、姫神エルメスが印象的でした。物語の鍵を握っているのではと匂わせる場面など、プレイ中は彼女の発するメッセージに注視せずにはいられません。

また物語を支える名脇役として、篠崎ヒユ、六条オウガ、♂マスク1号/2号/3号の存在も欠かせません。妹分としてエリカのことを盲目的に慕うヒユや、上半身を常にさらけ出した出で立ちのオウガ、怪しいマスクを被った男たちが、乙女主義の学園にどのように関わっていくのかも必見です。

◆“可愛くてニューゲーム”など、独特のセンスが光る

姫選挙での勝利を目指す本作では女磨きも欠かせません。そこで一番重要となるのが、ゲームタイトルと同じ名前を持つ“ボク姫PROJECT”というシステム。各章の合間にビジュアル・教養・精神のステータスアップを上げる“特訓”を行い、姫選挙の開催に備えます。

各章の最後では、特定のステータスが不足していると次の章に進めないままゲームオーバーを迎えてしまうという、厳しいペナルティが設けられています。現状のステータスを把握しつつ、次の展開に備えた稽古が必要というわけです。ただ、決して難しいわけではなく、なぜなのボク姫によるヒントの提示や、選択を間違えても即リスタートできるため、ストレスを感じることはありませんでした。

また、強くてニューゲームならぬ“可愛くてニューゲーム”が用意されており、ステータスの引継ぎが可能です。そのため、ゲームを周回プレイすることで、ステータスを全てマックスに出来る点も魅力的。アドベンチャーゲームでありながら、RPGのような無双プレイが疑似的に楽しめるという、独特な面白さにも繋がっています。ステータスを上げることが様々なキャラクターに関するルートへのアンロック条件になっており、ルート分岐が変に複雑になっていない部分も好印象でした。

本作を紹介するうえでもう一つ欠かせないシステムが、姫選挙の勝敗を左右する“Girl’s Emotion Modeガールエモーションモード)”です。各章におけるクライマックスとして展開される本システムは、画面内に所狭しと選択肢が表示されるなど、とにかくインパクト抜群。ボイスと共に飛び交う選択肢の中から正解となるものを選択することでアピール成功となり、生徒たちからの支持率を大きく獲得することができます。

印象的な本システムは、姫選挙以外の重要な場面で展開されることもしばしば。とあるルートでは本システムドラマティックに応用される場面もあり、「ここまでプレイして良かった」と思わずにはいられないほどの感動を与えてくれました。

シリアスコミカルバランスが丁度良く、システム面を利用した様々な演出がプレイヤーに心地よい余韻を与えてくれる『ボク姫PROJECT』。本作が掲げるテーマの通り、女装の素晴らしさを伝えたいという熱意も強く、女装男子ファンにとっても、今作から入門したいという方にとっても、まさにうってつけの作品となっています。

筆者はいわゆる男の娘に関する知識は乏しい方でしたが、ミナトの物語を疑似体験することにより、女装男子というジャンルの魅力をしっかりと味わうことができました。本稿を読んで気になったという方は、ぜひ本作をチェックしてみてくださいね

(c)2020 Nippon Ichi Software, Inc.

“ほぼ”全年齢向け健全女装アドベンチャー爆誕! 『ボク姫PROJECT』で学園一可愛い男の娘への階段を駆け上がれは、WHAT's IN? tokyoへ。
(WHAT's IN? tokyo)

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