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第8週「紺碧の空」36回〈5月18日 (月) 放送 脚本・吉田照幸 演出・野口雄大〉

おはよう日本 関東版」では、高瀬アナが不在でも桑子アナが朝ドラ送りを順調にやっている。5月18日は、これまでの展開から鑑みて、古山家に押しかけてきた学生服の集団の中に「幼馴染が混じってそうに思いません?」と予想。はたしてその予想は……。

紺碧の空
ものすごい勢いでやってきたのは早稲田大学応援団だった。代表の田中隆(三浦貴大)は裕一に応援歌を作ってもらう気でいて「フレーフレー」と“エール”を送り、「ワッショイワッショイ」と胴上げまで。
なにがなんだか状況を理解できない裕一。ただただおどおどするばかり。
挙げ句、胴上げから落っこちて腰を打ってしまった様子(その瞬間を描いてないが、胴上げされて落ちるのは危険!)
いつもすぐ怒る音だが、応援団には怒鳴らず「病院行ったほうがいいかもね」と冷静。

そこから、明治36年に遡り、早稲田大学応援団の歴史が豊富な資料映像と撮り下ろし再現映像とともに紹介される。ここで紹介されたことはドラマでご覧になっていただくため省くが、津田健次郎の低音のナレーションはこういうときマッチする。
慶応大学との攻防で、心沸き立つ応援歌が必要ということで、まず歌詞を公募。「紺碧の空」が西條八十によって選ばれた(西條八十役の人〈鈴木信二〉〉、なぜか後ろ姿のみ。鈴木信二は「麒麟がくる」にも出ているアクション俳優と同一人物であろうか)。

急ぎ、曲を頼むことになり、応援団の佐藤幸太郎(斎藤嘉樹)の従兄弟・久志(山崎育三郎)に頼みに行く(このとき、久志はベッリーニの「優雅な月よ」を優雅に歌っている」が、久志は音経由で裕一を紹介する。裕一がスランプであることを心配しているのだ。

桑子アナの予想は半分くらい合っていた。幼馴染従兄弟応援団にいた。というわけで、「エール」名物、良く言えば「偶然の出会い」、悪く言うと「ご都合主義」、ジャンルで言うと「大衆演劇的」な流れは快調に続いていく。
今日の流れで言うと、廿日市の言う「わかりやすい」イコール「売れる」ものの作り方である。

偶然の流れといえば、「あさイチ」の近江アナ。「紺碧の空」が好きで早稲田大学応援部に入りチアリーディングをやっていたと語っていた。近江アナ、ほわっとして、華丸大吉の勢いにいつも飲まれ気味な感じもするが、言う時はきちっと言うし、意思が強そうに見えるので、応援団、似合いそうな気がした。


木枯ヒット曲連発
応援団の作曲を引き受けたのはいいが、相変わらず、コロンブスレコードの仕事はうまくいってない。それに比べて、木枯(野田洋次郎)は順調にヒット曲を出している。「影を慕ひて」「酒は涙か溜息か」と来て、いまは「丘を越えて」をレコーディング中。しっとりした「酒は涙か溜息か」も明るい「丘を越えて」もどちらも「わかりやすい」と廿日市はご機嫌。

歌っているのは、山藤太郎(柿澤勇人)。裕福な家庭に生まれ東京音楽学校声楽科エリートながら、家の事情で偽名を使って歌手をやっている。モデルは、昭和を代表する人気歌手・藤山一郎

裕一は「なんでこんなことを」とつい山藤に聞いてしまい、廿日市に咎められる。やっぱり裕一ははっきりと心情を語っていないが歌謡曲を「こんなこと」と思っているようだ。

そこへ、ベテランそうなレコーディングスタッフの小田和夫(桜木健一)が「君みたいな人をいっぱい見てきたよ」「己にこだわって才能を生かせない人」とぴしゃりと言って去っていく。ドアの音の大きさが裕一の図星を突かれた衝撃のようだった。
けっこう辛辣な終わり方でつづくに。

第5のミュージカル俳優・柿澤勇人とは
来た、来た、また来た、ミュージカル界の人気者。柿澤勇人。家族に人間国宝でもある伝統芸能の担い手を持つ彼は子供のときから芸事に親しみ、劇団四季に入り、あの「ライオンキング」のシンバも演じている。

スリル・ミー」「サンセット大通り」「ウエスト・サイドストーリー」などの海外のミュージカルから「デスノートThe Musical」(夜神月役!) など日本の新作ミュージカルまで幅広く出演。ミュージカルのみならず、蜷川幸雄が演出し海外公演も行っている村上春樹原作の「海辺のカフカ」では重要な役カラスを演じ、三谷幸喜作、演出の「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」ではシャーロック・ホームズ役と、大活躍している。

夜神月カラスホームズなど闇を抱えたクセのある役が多いが、今回は一見、闇部分のない実直そうな雰囲気で登場。がしかし、今後、山藤がどうなるかはわからない……。モデル藤山一郎の抑制の効いた歌い方に寄せて来ていることには、歌の芝居のプロとしてのいい意味の野心を感じた。髪をぴちっとコンパクトにまとめた見た目もなんとなく似せてきている気がする。

古賀政男がモデルの木枯、藤山一郎モデルの山藤と、昭和初期の日本の歌謡界を牽引する人物たちをモデルにしたキャラクターがそろってきて、盛り上がっていきそうである。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

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イラスト/おうか