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自動車盗難の認知件数、減少の一途

text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)

ある日、駐車場に行ったら愛車が忽然と姿を消している……。

【画像】いちどは乗ってみたい? アルファードのゆったり後部座席【ディテール】 全22枚

自動車盗難はどこか他人事のような気もしてしまうが、実際に被害に遭った人のほとんどもやはり「まさか自分のクルマが盗まれるとは」と考えているという話もある。

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自動車盗難認知件数の年別推移    自動車盗難防止に関する官民合同プロジェクトチーム

実際、ここ数年の自動車盗難認知件数は減少の一途を辿っている。

2010年から2019年までの警察庁の統計データによると、2011年に2万5238件もあった件数が、2019年には7143件と1/3以下にまで減少。

盗難に対する意識が変わってきてもおかしくないと言えるかもしれない。

これには、一時期盗難が多発していた時期に盗まれやすい車種に乗っているユーザーがアフターメーカーのセキュリティを装着したこと。

さらに純正状態でもセキュリティやイモビライザーなどの盗難防止対策がされ始めてきたことが影響しているのだろう。

そんななか、自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチームが発表しているデータのなかで、興味深いものを見つけた。

それが、車種別の盗難台数のデータである。

このデータは、2018年および2019年中における自動車盗難データを関連資料から抽出し、盗難台数が多い5車種について、盗難台数を算出したもの。

そこにある車名は、プリウスランドクルーザー、ハイエース、レクサスLS、アルファードの5車種だ。

アルファード被害件数 1年で3倍に

そのデータによると、
プリウス:912台(2018年)→793台(2019年)
ランドクルーザー:435台(2018年)→654台(2019年)
と車種によって増減はあるものの、ある程度似通った数値となっている。

しかし、アルファードについては、2018年が91台だったのに対し、2019年は261台とおよそ3倍もの台数となっているのだ。

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車種別の盗難台数及び盗難率    自動車盗難防止に関する官民合同プロジェクトチーム

これは一体どういうことなのだろうか?

そもそも盗難されやすい車種というのは、お小遣い欲しさに魔が差した若者などが盗むというよりは、組織的な自動車窃盗団が関わり目を付けている車種ということが言える。

前述の5車種のうち、ランドクルーザー、ハイエース、レクサスLSについては、海外での評価も高い。

盗まれた車種はすぐに海外へ違法に輸出され売りさばかられることがほとんど。

そこには盗難から輸出、海外での販売ルートを持った犯罪集団が絡んでいる。

そしてプリウスは、その台数の多さによるステルス性とハイブリッド特有の静かさを武器に、盗難しようとするターゲット車の下見などに使われることが多く、こちらもまた窃盗団の関与が多い車種なのである。

では、なぜここにきてアルファードの盗難件数が大幅に増えてきたのだろうか?

じつは海外からの需要が高まっている

日本のミニバンは海外で販売されているイメージが少ないかもしれない。

しかしそれは北米や欧州での話で、アジア圏ではアルファードが正規輸出されている地域も多く、現地価格では1000万円オーバーの超高級車なのである。

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トヨタ・アルファード    神村 聖

また、正規輸出がされてない地域でもアルファードの中古車は流通しており、当該地域のユーザーからしてみればアルファードは憧れの車種の1つとなっているのだ。

そのため、例え違法な手段で日本から輸入された車両であっても、相場よりも安く買えるのであれば気にしないというユーザーも少なくない。

そして窃盗団からしてみれば、元値ゼロの盗難車であれば相場から大幅に安い価格で売却しても痛くも痒くもないというワケである。

なお、社外セキュリティを多くてがける専門店スタッフによると、ほんの数年前まではハイブリッドモデルに関しては輸出したとしても、アフターメンテナンスができないため需要がほとんどないと言われていた。

しかし、技術の進歩が目覚ましく最近ではハイブリッドモデルでも問題なくなってきたそうだ。

そのため、ハイブリッドモデルユーザーも油断できないと言える。

ちなみにさまざまセキュリティ商品も本気の窃盗団にかかれば解除できないものはないと言うが、盗み出すまでに時間のかかりそうな個体は敬遠されることが多いということなので、二重、三重にセキュリティアイテムを装着し、運び出すまでに手間のかかりそうな車両にしておくのが最大の防御とのことだ。


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