平時では査読済み論文の発表、特許の取得など、段階を経てから公開すべきデータも、今のような有事とあらば機密にしておくわけにはいかない。ただ、人類にとっての利益を優先したばかりに、国や研究機関が損をしてしまうリスクもあり、公平性が保たれるような仕組みが必要だ。

こうしたなか、オランダ国立公衆衛生環境研究所などの研究チームは、知的財産の管理にブロックチェーンが活用できるとの提案を示した。

タイムスタンプからデータの登録日次を証明

パンデミック時の研究開発は一刻が争われる。ゲノムシーケンスデータウイルスのサンプルが手に入らなければ、検査キットやワクチン、治療薬などの開発が進まないだろう。

今回のパンデミックでは、GISAID(鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構)などを介して、迅速にゲノムシーケンスデータが共有された。

このように、データやサンプルがタイムリーに共有されることでか研究開発は加速する一方、データ提供者にとっては正当に知的財産権を得たいとの考えもある。こうした考えは、将来の利益を守ることのみならず、ハイリスク研究開発のための投資を募るうえでとりわけ重要だ。

ブロックチェーンを活用することで、タイムスタンプからデータの登録日次の証明ができ、分散IDやメタデータを用いることでデータへのアクセス管理が容易になるという。

スマートコントラクトで契約手続きを効率化

また現状では、国をまたいだウイルスサンプルのやりとりに際して、生物多様性条約に則った手続きが必要。国ごとに規定が異なるなどの理由で煩雑なことから、このプロセスは時間を要するものだ。ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用して手続きを進め、イベント(資格情報の認証など)やウイルスサンプルの追跡ができればプロセスの効率化と高速化が図れるだろう。

これらを実現するシステムアウトブレイク・R&D・ブロックチェーンインフラストラクチャ(ORBI)」は、主に既存の技術を利用して構築できるとのこと。

コンセンサスアルゴリズムにはPoA(Proof of Authority)に近いものを採用し、ステークスホルダーの代表からなるグローバルな団体が、ノード(ANO:authority node operators)を任命するようだ。これにより、ポリシーに則った運用が可能となり、システムの永続性、スケーラビリティを担保する。

今後のパンデミックに備えるにあたって、知的財産を管理しつつ、迅速なデータ共有を実現するシステムの実装は欠かせないだろう。

参照元:Blockchain-facilitated sharing to advance outbreak R&D/ Science