コロナ禍で変わる都会、変わらぬ農村

 私は新潟県の十日町市の中山間地にある池谷集落で稲作農業をしています。

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 都市部の方々はおそらく、新型コロナウイルス感染症拡大による自粛により、生活が大きく変わった方が多いと思いますが、私は平時とほとんど変わらない生活をしています。

 こういう時、中山間地の山奥で自給自足を目指した生活というのは強いと感じます。

 米は自分で作っているので1年分以上ありますし、秋に収穫した白菜、大根、ネギなどの野菜も保管していてまだ食べられます。

 家の裏には山菜も生えていて取り放題です。次の冬のための薪割りもしていて運動不足にもなりません。

 パンデミックが起こってもほとんど生活の変わっていない農家の視点だからこその提言をこれから述べたいと思います。

経済が止まって困る理由

 新型コロナウイルス禍で経済活動が抑制された結果、CNNの報道によると中国やインドで大気がきれいになったとのことです。これはとても示唆富む出来事であると感じました。

 過剰な経済活動を抑えることも大切なのではないでしょうか?

 経済活動が止まるともちろん困る人は多いので何らかの対策は必要です。ですが、経済活動が止まって困るのは日々生きていくために必要なものを手に入れるための収入がなくなるからに尽きると思います。

 仮に日々生きていくために必要なものが得られるのなら経済活動が止まったからといって死活問題になる人はいるでしょうか?

 日々生きていくために必要なものと言えば、衣・食・住、これに加えて近代社会だとエネルギーもあるかと思います。

 そして、この中では特に食とエネルギーが重要だと考えています。というのは、この2つは消耗品で日々使うものだからです。

 衣については、フリマアプリなどを通じていくらでも安く手に入る状況がありますし、住についても、空き家が問題になるくらい余っていますので供給体制には問題はないと思っています。

 もちろん、ネットカフェ難民など、住むところがない人もいるようなので、これに対しては空き家とマッチングがうまく進んでほしいとも思っています。

 十日町市では空き家活用の事例として帰省の受入れで一時隔離施設として空き家を個人で使わせてあげているという方もいます。

 ですので、この2つが全く何もしなくてよいというわけではありませんが、食とエネルギーに比べると優先順位は落ちると思っています。

 食料を作るにもガソリンや軽油などの石油由来のエネルギーは使っているので、私も米や野菜を作っているからといって、完全に自給自足できているわけではありません。

 ですが、完全にエネルギーも自給できたとしたら当面収入がなくても、生きていくことだけはできるという安心感はかなり増すでしょう。

 そこで、本原稿では食料とエネルギーについて焦点を当てたいたいと思います。

食料自給率100%を目指すべき

 食については、やはり食料自給率は100%以上を目指すべきだと思います。そのための一つの課題である担い手問題について考えてみたいと思います。

 都会では自粛等により仕事が減っている人もいると聞きます。倒産した企業も出ているほど深刻な状況です。

 一方で、田植え真っ只中の今、こちらは大忙しで猫の手も借りたい状況です。

 都会で仕事がなくなった人手を人手不足の農業の現場とマッチングすることはとても重要だと思います。

 その際に大切なのは、農業従事者の収入を一般的な職業に並ぶくらいには引き上げることです。

 農業経営統計調査の平成30年個別経営の経営収支に記載された農業所得を労働時間で割って時給を換算すると、890円でした。

 同じく農業経営統計調査平成30年営農類型別経営統計(組織法人経営)によると、時給換算で858円でした。

 これは全国の最低賃金である901円を下回っています。

 ちなみに、厚生労働省の毎月勤労統計調査平成30年分結果確報を見ると、一般労働者の現金給与総額を労働時間で割った時給換算額は2528円、パートタイム労働者の時給換算額は1169円でした。

 もちろん儲かっている農家もいると思いますので、個々の差はあるでしょうが、農業という業種は平均すると給料が安いことがよく分かるデータだと思います。

 新規就農者を増やすのであれば、労働に対する対価をいかにして高めるかというのは国策として考えるべきだと思います。

 そうしないと、新規就農しても現実をみて辞めてしまうばかりで、農家の減少に歯止めはかからないでしょう。

 もちろん各自の経営努力も大事でしょうが、業界全体として水準が低いというのは、個々の努力の問題だけではないです。

 自分も農業と農業以外の仕事もしてきたので分かりますが、農業は天候の影響も受けやすく、また作る労力と経費(機械は高価なのに年間の稼働率は恐ろしく低い)に対して末端の販売価格が安く、他の仕事よりも経営を成り立たせる難易度は高いと実感しています。

 平成30年度の食料自給率はカロリーベースで37%、生産額ベース66%です。

 また、食料国産率は、カロリーベースで46%、生産額ベースで69%、飼料自給率は25%となっています。

 いずれも100%を切っているので、本来であれば需要をオーバーしているわけではないのですが、海外から安い食料品が入ってくるために価格が低くなっており、これが農家の収入が時給換算すると低くなっている原因だと思います。

 海外から安い食料が入ってくるのは良いことだという考えもあるかと思います。

 しかし、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックが起こると、海外から食料の供給は止まる可能性もあります。

 また、国連とWTO世界貿易機関)が「世界的食糧危機」の恐れを警告していますので、今後を考えると、国内で食料自給率100%を実現することは政府の使命だと思います。

国内でエネルギー自給目指す

 また、エネルギーに関しては、正直、私は専門性もなく素人考えではありますが、少しアイデアをご紹介したいと思います。

 まず電力について、私が住む新潟県十日町市にはJRの信濃川発電所(水力発電所)があります。ここと隣の小千谷市にある信濃川発電所で東京の山手線が動いています。

 それくらい安定した電力供給ができる水量があるので、十日町市内の電力は信濃川に市民用の発電所を作って賄うことも可能性としてはあるのではないかと考えています。

 燃料については東大初ベンチャーのユーグレナがミドリムシを燃料にという研究開発に取り組んでいるという話を聞いたことがあります。

 エネルギー自給のための具体策については、専門性の高い方々によっていろいろな取り組みが行われています。

 このような分野に対して、資金を一気に投入し、優れた人材の力を使って国家プロジェクトとして日本で自給できるエネルギーを開発するのに一丸となって全力を注ぐべきではないかと思います。

 そうすれば、一見不可能に見えることでも、日本人の頭脳と勤勉さがあれば成し遂げられると思います。

 第2次世界大戦後の焼け野原から世界第2位の経済大国にまで成長し、平成元年には世界の時価総額ランキング上位30位のうち21社が日本企業であり、ベスト5はすべて日本企業でした。

 終戦時にこの状況を想像できた人はいたでしょうか?

 不可能を可能にするのはそれを目指すかどうか次第だと思います。最初から無理だと考えるのではなく、どうやったらできるかを国全体で考えて取り組むことが大切だと思います。

マイナンバーカードで食料支給

 生活に必要なものが国内で賄えるようになったら、それをベーシックインカムとして国民に行き渡る仕組みを作る必要があります。

 この際、ベーシックインカムは現金ではない方が良いと思います。なぜなら、生活保護受給者がパチンコ屋さんに行くかのような目的外の用途に使われるのを防ぐ必要があるからです。

 あくまでも、生きていくことは最低限守られるというための仕組みです。例えばこういう方法は技術的には可能ではないかと思う方法があります。

 それは、マイナンバーカードに生活必需品と交換できるポイントを毎月国がチャージして、マイナンバーカードをレジでピッと通せば生活必需品が買えるという仕組みにするわけです。

 生活必需品の区分は消費税アップ後に導入された軽減税率適用の有無をそのまま使えば面倒な事務はかなり削減できると思います。

リソースはあるのか?

 現在、日本は実はかなりお金を持っています。

 2018年度企業の内部留保は7年連続で過去最高を更新して463兆円(2019年9月2日財務省発表)です。

 また、休眠預金は平成29年3月期には発生額1270億円、払戻し額569億円と差引き701億円増加しています。

内閣府ホームページ「休眠預金等発生額の推移」https://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/shingikai/sanko/shiryou_1_5.pdfより)

 そして、対外純資産は平成30年末には341560億円と世界1位(財務省ホームページ主要国の対外純資産、為替相場の推移 https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2018_g3.pdfより)で、これは27年連続世界1位です。

 ちょうど、コロナ禍のせいでこれまでの仕事の需要が減っている分野もたくさんあります。時代環境が変わり産業構造が変わるのはどうしようもありません。

 ピンチチャンスにではないですが、仕事がなくなった人たちに対する仕事として、「生活に必要なものを国内で賄うための仕組みづくり」を公共事業として行うべきであると思います。

 第2次世界大戦前夜の世界恐慌の際に、米国で行われたニューディール政策のように、今こそ、ポストコロナ時代に向けて必要な仕組みづくりを国家プロジェクトとして公共事業、または官民のジョイントベンチャーという形で行うべきタイミングではないでしょうか?

 政府や内部留保のある企業は将来に向けた投資として余っているお金を有効活用して、仕事が減った、あるいはなくなった人にたいする雇用の受け皿として、ポストコロナ時代に向けて「生活に必要なものを全国民にいきわたらせるための仕組みづくり」のために動くべきだと思います。

 生活に必要なものがベーシックインカムとして国民に行き渡ると、年金が破綻したとしても、また、今回のようなパンデミックが起こって経済が停滞したとしても、最悪生きていけます。

 これからの時代は経済成長一辺倒ではなく、安心して生活ができる仕組みづくりこそが求められていると思います。

 そしてそれは都会と田舎の良いところを組み合わせるからこそ可能になるのだと思います。それこそが真の意味での地方創生だと思います。

 いかがでしたでしょうか?

 これはあくまでも私からのご提案ではありますが、もっとこうした方が良いとかいろいろとご意見がある方は似たような内容を以下のユーチューブでも発信していますので、是非、動画コメント欄にお願いいたします。

 議論を深めて行ければと思います。

ユーチューブのリンクはこちら(https://youtu.be/mVrLfDWPGQ0

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