半沢直樹」(TBS系)、「ハケンの品格」(日本テレビ系)、「BG ~身辺警護人~」(テレビ朝日系)、「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)などの春ドラマが軒並み放送延期に追い込まれる中、ドラマフリークたちの救いとなっているのが週末の深夜ドラマ

 浜崎あゆみさんの自伝的小説を実写化した「M 愛すべき人がいて」(テレビ朝日系)、現代にタイムスリップした光源氏と地味なOLのコメディーいいね!光源氏くん」(NHK)、シリーズ累計4400万部の人気ギャグ漫画を実写化した「浦安鉄筋家族」(テレビ東京系)、巨大隕石(いんせき)が150日後に地球へ激突することになった人類の日々を描いた「隕石家族」(東海テレビフジテレビ系)。

 いずれも思わずツイートしたくなってしまう強烈なストーリーであり、実際ネット上には「何も考えずに笑える」「ありえないのがいい」「なぜか見てしまう」「だんだんやみつきになってきた」などの好意的な声が集まっていました。

 ところがまず、「M 愛すべき人がいて」が5月2日第3話で放送中断し、続いて「浦安鉄筋家族」も15日の第6話で放送中断。ともに新型コロナウイルスの影響で「次回放送日未定」の状態に追い込まれてしまったのです。

 残る2作は放送中断こそないものの、「いいね!光源氏くん」は23日の第8話で、「隕石家族」は30日放送の第8話で最終話を迎えます。話題性こそ「M 愛すべき人がいて」にかないませんが、ネット上で最も評判がよかったのはこの2作。なぜ、この2作は支持され、最後まで放送できたのか? それを掘り下げていくと、2作の共通点と現在の視聴者ニーズが浮かび上がってきます。

今だからこそ脱力感のあるファンタジー

 2作の共通点は、はっきりとしたファンタジー作品であること。コロナ禍で深刻な事態をリアルに突きつけられている今、「もしも……」という軽い気持ちで見られる物語が視聴者にとってちょうどいいのです。もし、2作が毎クール量産されている刑事モノや医療モノのようなリアルを伴うシビアな作品だったら、ここまで好意的な声は集まらなかったでしょう。

 もう一つの共通点は、全面に脱力感を漂わせた演出。例えば、「いいね!光源氏くん」は、平安装束を身につけた光源氏が現代の抹茶パフェにハマり、自撮り棒を使って記念写真を撮るなどのシュールシーンが満載。一方の「隕石家族」は、地球に近づく隕石の映像をわざとチープなものにしたり、あえて映像がゆがむ360カメラを使ったり、コント風のBGMを交えたりして笑いを誘っています。

 2作の軽いノリと笑いが厳しい現実の日々を忘れさせ、視聴者癒やしているのは間違いありませんが、もう一つ見逃せないのは、現代人の本質が描かれていること。恋や結婚、食、金、生き方などのさまざまな点で、現代人の価値観や倫理観を考えさせられるメッセージ性をほどよく感じさせて魅力につなげています。

 笑いを織り交ぜたファンタジーであるため、説教くささをまったく感じさせず、家族や恋人に思いをはせられ、静かな感動が得られる。光源氏を演じる千葉雄大さんを筆頭に、キャストが大真面目に演じているからこそ、単なる荒唐無稽な物語にとどまらない作品となっているのでしょう。

コロナ禍の前にクランクアップの理由

 次に、他の春ドラマが放送延期を余儀なくされる中、なぜ、2作は無事に最終話を迎えられそうなのか。その理由はひとえに「新型コロナウイルスの影響が深刻化する前にクランクアップしていた」から。

 もともと、深夜ドラマは予算の都合上や人気俳優をキャスティングするために、撮影開始前に脚本・演出を固めて、3~4週間程度で短期集中撮影するケースがよく見られます。また、NHKドラマは民放各局よりも始動が早いなど、余裕のあるスケジュールを組むことが多いため、朝ドラ大河ドラマのような長期作品を除けば、放送前にクランクアップしている作品が少なくありません。

 いずれにしても、この2作は脱力感を誘うファンタジー、撮影スケジュールの両面ともに現在の状況にフィットした作品であり、最後まで放送されることがドラマフリークたちの救いになっています。だからこそ、間もなく迎える最終話の放送後には「光源氏ロス」「隕石家族ロス」というフレーズネット上に飛び交うのではないでしょうか。

コラムニストテレビ解説者 木村隆志

「いいね!光源氏くん」主演の千葉雄大さん