◆今後想定される地震の規模は、東北地方太平洋沖地震はるかに上回る!?

 2001年の「東北地方太平洋沖地震」まで、日本には54基もの原発が動いていた。それが今の時点で稼働している原発は9基になっている。だいぶ減って、それだけ危険性が和らいだ気がするのだが、ところが人為的に原発を建設したのと同じように、危険性は去ってくれていない。

 簡単に言うと、時折政府が発表するように、大地震の起こる危険性はちっとも減っていないからだ。マグニチュードで示される地震の大きさは、ちっとも皮膚感覚的には伝わらない。

 人々を恐怖に陥れた「東北地方太平洋沖地震」はマグニチュード(M)9.1(ここでは国立天文台(2011)に基づくモーメントマグニチュード(Mw)を用いる)とされるが、仮にそれが0.1~0.2違ったとして0.1で1.4倍、0.2で2倍、1違えば32倍増える。

 ここ最近の日本の巨大地震でいえば、阪神・淡路大震災1995年)が震度6、Mw 7.3。東日本大震災2011年)が震度7、Mw 9.0。熊本地震2016年)が震度7、Mw 6.5といったところだ。

 4月21日、今後想定される津波のために、次に襲ってきそうな大地震を内閣府の有識者会議が発表した。それによると、なんと日本海溝沿いの巨大地震はMw9.1、千島海溝沿いはMw9.3という。実に「東北地方太平洋沖地震」を上回るものだ。

 そして、「汚染水処理中の東京電力福島第1原発」では東日本大震災と同程度の高さ13.7mの津波が襲来し、敷地が3m以上浸水すると想定した。

 こんなことが想定される日本では、原発など建てられない。マグニチュードは震源での大きさだが、地形によって揺れ方はまったく異なる。

「震度」というのは体感的なものから考えられていて、最大が「震度7」。しかしこれは、客観的な数値と言えない。「震度の最大7」とは「震度6強以上のもの」はすべて含まれてしまい、そこにはもはや震度での区別ができないのだ。

◆「震度6強」を超えてしまえばすべて「震度7」
「震度6強」の定義には、こう書かれている。

 立っていることができず、はわないと動くことができない。多くの建物で、壁のタイルが剥がれたり、また窓ガラスが割れたりして落下する。補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる。老齢の中高木は根元から折れることがある。

 木造:耐震性の低い住宅は倒壊するものが多い。耐震性の高い住宅でも壁や柱がかなり破損するものがある。

 RC造:耐震性の低い建物は倒壊するものがある。耐震性の高い建物でも、壁や柱が破壊するものがかなりある。

 ガス管、水道の配水設備に被害が出、広い範囲でガス・水道が止まることがある。また、一部の地域で停電する。都市ガス会社はこの震度で各ガバナーステーションへの遠隔操作により供給を停止する。

 震央付近の地域では地割れが確認でき、断層が地表に現れることもある。植林の少ない地域では山崩れが発生する。

 これ以上の被害は、もはやどうなろうともすべて「震度7」になるのだ。

◆「岩手・宮城内陸地震」の4022ガルでは、あらゆる建築物は耐えられない

 これでは計測値に頼って判断することはできなくなる。そこで計測可能な「ガル」という単位が登場する。それは加速度で、「1秒間に変化する速度の変化量」のことだ。重力加速度が980ガルで、ものが飛び上がるにはそれ以上の重力加速度が必要なわけだ。

 それに沿って建築物の耐震等級で基準が作られている。これは建築基準法ではなく、「品確法・性能評価制度」にて定められた基準だ。そこではどう書かれているかというと、以下の通りのガル数に相当するそうだ。

【性能表示・品確法で定める強度】

●耐震等級1=建築基準法強度  
震度5強=80ガル 傷つかない(損傷しない)
震度5強~7=400ガル 倒壊しない(倒れない)

●耐震等級2=建築基準法の1.25倍
100ガル 傷つかない(損傷しない) 
500ガル 倒壊しない(倒れない) 

●耐震等級3=建築基準法の1.50倍
120ガル 傷つかない(損傷しない)
600ガル 倒壊しない(倒れない)
となる。

参考に、震度をガル数で示すと以下のようになる。

震度5……80~250ガル
震度6……50~400ガル
震度7……400ガル以上

 ところが、最大加速度ガル数で世界のギネス記録を持っているのは2008年の「岩手・宮城内陸地震」で、震源断層の真上で観測された「最大加速度4022ガル」である。それまでは2004年日本で起きた「新潟県中越地震」で観測された2616ガルだった。

岩手・宮城内陸地震」はマグニチュード(M)7.2の地震で、岩手、宮城両県の一部で震度6強を観測。死者17人、行方不明者6人の被害を出した。ギネス記録をとなったにもかかわらず、それでも「震度7」ではなかった。

 ガルとは瞬時の揺れの加速度だが、それにはもちろん「耐震等級3」を取っていても倒壊しない数値が600ガルまでだから、とても追いつかない。「岩手・宮城内陸地震」の4022ガルでは、ありとあらゆる建築物は耐えられない。なにせ瞬間的にとはいえ、ロケットを真上に飛ばすほどの加速度の4倍になるのだ。

◆原発がどれだけ耐震性を上げようとも、日本を襲う地震には勝てない

 いちおう、日本の原発も耐震性を謳っている。主要な部分だけだが、東海地震が予想されている浜岡原発では、かつて「基準地震動」として450ガルだったものを600ガル、800ガル、1200ガルと耐震性能を上げてきている。

 しかし2005年に建設された耐震性能の高い浜岡第三原発でも、その後に大きな変更工事はなされていない。ギネスに対応していないどころか「東北地方太平洋沖地震」の後にも変えられていないのだ。

 変わったのは防潮堤の高さだけで、それがどれほど頼りないかは現地を見ればわかる。津波は表面の波だけではなく、底からの海水全体が動くので、とても対応できるはずがない。しかも耐震構造にしたとしても主要部分だけで、すべての部分に耐震性が施されるわけではない。地震動にも津波にも耐えられる保証はない。

 4022ガルの場合は、重力の4倍もの加速度がかかって空に飛ぶのだから、それに耐震性ある建物など想定することもできない。もし原発がどんなに耐震性のある建築物だったとしても、日本を襲う地震には勝てないのだ。

福島第一原発事故は津波ではなく、地震の揺れによって起きた!?

 例えば、オーソドックスに引用されるWikipediaにはこう書かれている。

福島第一原子力発電所事故は、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震による津波の影響により、東京電力福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融メルトダウン)など一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故である」

 他のものも同様で、福島の原発事故「津波が原因」ということで定説化している。

 しかし、これに異を唱える人物がいた。2013年10月4日岡山市の長泉寺で、元東電技術者の木村俊雄さんによる講演会が行われた時のことだ。

 木村さんは福島第一原発の過渡現象記録装置のデータ解析を終えて、地震による原子炉停止直後に、本来自然循環するはずの炉内の水が止まっていた」という事実を示したうえで、原発事故は津波が原因ではなく、地震の揺れによって壊れた」ということを示した。

「大学で、学問の形で原発を学んでも、『現場での実務』を知らなければ、福島第一原発事故の真実は見えてこない。メルトダウンは津波ではなく地震で引き起こされた」と木村さんは述べた。

◆「津波原因説」によって、一部を改修しただけで再稼働へ
 そのデータ2013年8月にようやく公開された福島第一原発の「過渡現象記録装置のデータ」を解析して得たものだ。木村さんは東電で「炉心屋」と呼ばれる仕事をしていて、まさにこのデータの解析を行っていたのだ。

「地震による原子炉停止直後に、本来自然循環してするはずの炉内の水が止まっていた」と木村さんは語る。もともと原発は「フェイルセーフ(なんらかの装置・システムにおいて誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全に制御すること)」の思想のもとに設計されている。

 たとえ強制循環の電源が失われたとしても冷却水の自然循環だけは残り、冷却能力の半分は残るはずだった。フェイルセーフがちゃんと機能して、自然循環だけでも残っていたとすれば、福島原発事故を深刻にした炉心溶融は避けられていたかもしれない。

 ところがデータは、その自然循環さえ残さずに冷却能力を失ったことを示し、「打つ手なし」の状況に陥っていた。津波によって電源が失われる前に、原発の小さな配管が破損して、それによって冷却できずメルトダウンしていくことが確定していたのだ。そのことは炉心から漏れ出した冷却水の放射能濃度からも、人が入れなくなった時点からも確かなことだったという。

 つまるところ、原発事故を決定的にしたのは「津波」ではなく、「地震の揺れ」によるものだった。ところが原発は「津波原因説」によって“めったに発生しない事態”とされ、一部を改修することで大丈夫だとされ再稼働を始めてしまったのだ。本当の原因が地震にある以上、地震を防げない以上、再び事故を起こす危険性があることは明らかだというのに。

チェルノブイリ原発事故の時から隠されていた“不都合な事実”

 そのことが隠されたのは、再稼働を進めたい側にとって都合が悪かったからだ。そのために、木村さんはまるで“トンデモ論者”であるかのようなレッテルを貼られ、信用を失わされてしまった。

 すでに見たように、日本の地震に勝てる建築物などあり得ない。しかも、日本の中に「地震が起こらない地点」を見つけようもない。地震に勝てる原発などあり得ないのだ。

 福島原発事故を招いた「細かい配管の破損」は、おそらく「流量計測システムの測定用細管」と見られている。地震当時、発電を停止していた4号炉でも地震で破断していて、1号炉、2号炉とも冷却能力を失っているのだ。

 その「流量計測の測定用細管」の耐震性のレベルは、なぜか「三段階のうちの一番弱いレベル」で足りるとされていた。これは明らかに設計上のミスだろう。しかも気づいたとしても、その管を安全側に補強することは困難だ。

 このご都合主義が続いていることが、次の事故を引き起こす要因になる。しかし「地震と原発」という観点で見ると、チェルノブイリ原発事故の時点ですら、すでに“不都合な事実”が隠されていた。

 チェルノブイリ原発事故は、一般的に運転員の操作ミスが原因とされている。しかし、事故が起きる数分前に、原発直下で震度4程度の地震があったことが確認されている。そのことが、「チェルノブイリ原発 隠されていた事実」というデンマーク国営放送が作ったビデオ(YouTubeで視聴可能)では示されている。
 しかし本当のことが知られると、世界中で原発が建てられなくなる。そして、すでにあるものも廃炉を余儀なくされる。それは一部原子力業界の人たちにとっては不都合だった。だから隠されたのだ。

 それと同様の問題が「東北地方太平洋沖地震」による福島第一原発事故にも隠されていた。原発は地震に弱いのだ。しかも世界の地震の2割が起こる日本で、このような有様なのである。

◆「地震が多発する国では無理だ」とロイズ社に原発の保険を断られる
 日本の中で地震が起こらない場所など考えられない。入り組んだプレートの周囲はもちろん、他の場所にも「活断層」が無数に隠されているのだ。その原発はわずかな地震でも、細管が破損して冷却水を失って「メルトダウン」を起こしかねない。

 実は日本で原発を始めた時、「何にでも保険が掛けられる」と言われるイギリスのロイズに保険を掛けようと相談して、「日本のように地震が多発する国では無理だ」と断られている。

 当然の結論だろう。そご日本側は保険賠償額を小さくした上で、日本の保険会社にグループを作らせ、それで何とか原発を保険に入れさせた経緯がある。その額が少ないため、福島原発事故に対する賠償金が十分ではないことも知っての通りだ。

 その結果、原子力発電は終わろうとしている。いくら海外に輸出しようとしても、国内の原発を再稼働しようとしても、終わりの見えた原子力産業の時代は覆いようがない。一刻も早く原発事故の原因を明らかにして、地震地帯である日本の原子力発電所を廃炉にしていかなければならない。

 それでも、核のゴミである使用済み核燃料の解決にはなっていない。そこから抜け出るためには、まず一番危険な稼働中の原発を止めるところから始めていかなければならない。

 先は長いのだ。ここまで長引かせた原子力をなくしていくための活動の第一歩として、再稼働を拒否し、止めていかなければならない。

新連載・【「第三の道」はあるか 第1回】

<文/田中 優>

【田中優】
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院和光大学大学院横浜市立大学の 非常勤講師。 著書(共著含む)に『放射能下の日本で暮らすには? 食の安全対策から、がれき処理問題まで』(筑摩書房)『地宝論 地球を救う地域の知恵』(子どもの未来社)など多数