女子プロレスラーの木村花(享年22)が亡くなった。亡くなる直前のインスタグラムに、「愛してる、長生きしてね。ごめんね」との文字を入れた、愛猫と一緒の写真を投稿していた。

木村は、恋愛リアリティー番組『テラスハウス』に出演していたが、ネット上ではアンチができ、ツイッター等で批判するコメントが多かったとも言われている。

ネットが木村を殺したのか。

亡くなる直前に、リストカットの画像を上げていたため、精神的には安定していなかったと見られる。しかし、リストカット1回で致死する可能性は極めて低い。ネット上では様々な情報が飛び交っている。たとえば、5ちゃんねるの書き込みでは、「近所のマンションで硫化水素救急車と消防車数台来てた」などとして、硫化水素自殺を思わせる書き込みがある。事実であれば、混ぜる薬品を事前に用意していたことになる。

所属するプロレス団体「スターダム」は公式サイトとTwitterで、「当社所属選手木村花選手が本日5月23日逝去いたしました。突然のことでファンの皆様、関係者の皆様には深いご心配と、哀しみとなり、大変申し訳ございません。詳細につきましては、いまだ把握出来ていない部分もあり、引き続き関係者間の調査に協力してまいります。木村花選手のご冥福を深くお祈り申し上げます。今後につきましてはご親族と相談の上、お知らせいたします。また他の所属選手の心のケアにも努めてまいります」と発表した。

死因はまだ明らかではない。

 

参考記事:リストカット画像とともに「楽しく長生きしてね。ごめんね」 木村花さん(22)が『テラスハウス』に出演して激変した人生

 

木村にはTwitterなどで誹謗中傷がされていた。ネットの誹謗中傷による自殺は、日本よりは韓国が多い。2109年11月24日韓国のアイドルグループKARAの元メンバー、ク・ハラさん(享年28)が自殺したが、誹謗中傷されていた。16年にはKARA解散したが、18年9月、当時の交際相手に暴力容疑で訴えらた。ハラさんは、リベンジポルノで脅迫されていたと反論していた。この事件をきっかけに誹謗中傷がされるようになった。

「テラスハウス」は台本なしのため、恋愛がらみで生じた人間関係の歪みや失恋によるネガティブな感情は、そのまま放置されてしまいがち。「【新住人インタビュー10】木村花編『付いたあだ名は処女でした…』」の中で、「恋愛経験は乏しい」と話していたが、恋愛がうまくいかないという心理は、鬱傾向になったり、それに拍車をかけることがある。こうした心情もベースにあったのではないか。。

メンバーのコメディアン志望の男性が、木村のコスチュームを誤って洗濯し、収縮させて、使えなくした「コスチューム洗濯事件」もあった。木村は「命の次に大切なもの」とも言っており、ここで男性にキレて、手を出した。このあたりから、木村へのバッシングも始まる。なお、男性は、そのコスチュームを10万円で弁償するという話(【39th WEEK】「10万は返しますけど…いかついな…」卒業インタビュー)もあったが、弁償はされていなかったという。

3月24日、木村はインスタグラムで「ね、わかる。早く消えて無くなりたい」などとストーリーに上げていた。この頃から、精神状態が不安定だったのだろう。そんな中で、5月14日、YouTubeで、コスチューム事件に関しての未公開のトークが公開された。(【41st WEEK】“コスチューム事件”その後Vol.3…「快はLINEも未読無視。電話も出ない」)。その中で、木村が男性に対して手を出した気持ちが泣きながら語られる。きっと、この動画も見ていたのだろう。当時の感情が思い返されても不思議ではない。

最近では、「音楽があって、あったかくて、家族と大好きな人達がいっぱい出てきて/可愛くなって、可愛いねって言われて/試合をしていて、たくさん笑っていて/小波さんとじゃんぐるさんとプロレスを観に行く途中で/今までの幸せとこれらの幸せが沢山詰まった夢をみました。/とにかく幸せだった」(5月21日午前9時58分)という投稿をしている。一見、ポジティブな投稿であるが、将来の不安を暗示させるようにも読めるのは、私だけではないだろう。

この投稿に、よりネガティブになるコメントがつく。アンチの一人が、「お前が早くいなくなれば/みんな幸せなのにな。/はじで早く消えてくれよ。」と返信していた。現在は、このコメントは削除されているが、木村の死後、冥福を祈るコメントが寄せられている。

 

関連記事:コロナ禍で「自殺者20%減」のホントの理由とは? 人が死に至るのは「ウイルス」よりも「対人ストレス」の方だった――!? | TABLO

 

一方、アンチコメントで盛り上がる側は、誹謗中傷された人のことを想像するよりは、そのコメントへの反応(当事者かどうかにかかわらず)を見て、楽しんでいる。そして、それらのアンチでの盛り上がりをさらに盛り上げるために、アンチコメントの回数を増やしたり、極端なコメントを書いていく。木村へのアンチコメントは「いいね」が多かったとも言われている。

アンチコメントが多くなれば、“普通”のアンチコメントでは埋れてしまう誹謗中傷のコメントをエンタメとしている人もおり、多くなればなるほど、“極端な”コメントでなければ、あるいは、“目立つような”内容でなければ意味がなくなる。そのため、先鋭化していく。投稿者にとっては、叩く要素があり、一定の知名度さえあればそれでいい。本音かどうかは関係ない。極端な場合は、投稿者自身が高揚感を持ちさえすればそれでいい。

ただ、木村は真面目だったのか、コメントをよく見ていたようだ。こんな投稿もしている。「毎日100件近く素直な意見。傷ついたのは否定できなかったら。死ね。気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました。お母さん産んでくれてありがとう。愛されたかった人生でした。側で支えてくれたみんなありがとう。大好きです。弱い自分でごめんなさい。」とあったが、数多くのリプライやDMに、自ら対応していたと思われる内容だ。ネガティブな内容がどこまであったのか。

ネットの情報はコメントが伝播、拡散することがある。Twitterでリツイートされ、あるいは、Facebookではシェアされるなど、多くの人がその情報に接するようになる。リツイートは、共感だけでなく、反感や告発、嫌がらせの場合だってある。例えば、Twitterの通知を見ると、自分のアカウントにリプライ(返信)があった内容を簡単に見ることができる。また、自分の名前で検索すれば、自分の言動や投稿への賛否が書かれている。それも、様々な意見があると思うだけの精神的余裕があればいい。しかし、何かの事情で、余裕がなくなっている場合は、よりネガティヴに働いてしまう。

子ども同士のネットいじめは、限られた人間関係の中で起きる。狭い範囲であるからこそ、他人からの評価が気になり、つい書き込みを見てしまう。それがLINEであれば、より狭く、同調圧力が係りやすい。ただ、大人であっても、多様な人間関係があったり、多忙であれば、情報を相対化でき、気になる度合いも低くなる。しかし、現在は、コロナ禍。人に会う回数も減り、ネット上の情報が相対的に高くなっていたのではないかと推測してしまう。

アンチがアンチを呼び、誹謗中傷合戦になる。もちろん、その流れに乗り、アンチコメントを書き続けた人たちが自殺に追い込んだ一因にはなるだろう。ただ、木村が亡くなってから、アンチが改めて、コメントを投稿。その中には、「反省しています」との内容もあった。少なくとも、言葉は人を殺すことがあることを学んでほしい。

一方で、アンチを見つけて、アンチに対する批判の中には、「目には目を」として、アンチが発したコメントをそのまま投稿するアカウントも見かける。これでは、同じことが繰り返されることになるのではないか。もちろん、一時的な感情として、「アンチが悪いんだ」と思っても仕方がない状況ではある。

また、木村のアンチは、また別の出演者のアンチになっていく面もある。しかし、叩きさえすればいいとは思わないでほしい。繰り返すが、言葉は人を殺すことがあるのだから。<文中敬称略>(文・渋井哲也)

 

あわせて読む:「裁判長は賄賂でももらったんか?」 大津いじめ自殺裁判で被害者を“二度殺した”高裁判決 “両親の過失”で10分の1に減額!? | TABLO

 

写真はイメージです。