最近、日本のシーレーン上である南シナ海や東シナ海で中国の活動が活発になっている。

シーレーンとは日本が石油の9割を依存する中東からインド洋を抜け、マラッカ海峡から南シナ海、日本へ通じる海洋ルートで、日本の経済安全保障上の生命線である。

これまで、シーレーン上での脅威というとマラッカ海峡の海賊が大きな問題だったが、今後はマラッカ海峡を超えてからの安全航行に注意を払うことになるかも知れない。

南シナ海で中国と周辺諸国との緊張が高まる

まず、南シナ海はシンガポール海峡からバシー海峡(台湾とフィリピンの間)へ繋がる海洋ルートだが、この一帯での中国の海洋覇権はいっそう強まっている。

中国は4月、2012年に南シナ海の諸島を管轄するために設けた海南省三沙市に、行政区として「西沙区」と「南沙区」を新設し、南シナ海の島やサンゴ礁、海底地形等を含む計80カ所の名前を発表した。

西沙諸島では、同じく4月に中国の巡視船ベトナムの漁船を沈没させる事故が発生し、マレーシア近海では中国の調査船がマレーシアの国営石油会社の探査船を追尾するなど、中国と周辺国との緊張が高まっている。

一方、今年に入り、米軍機は昨年の3倍以上となる39回にわたって南シナ海周辺の上空を飛行し、うち2回は香港付近を通過した。米軍機が香港付近を通過することの意図は、中国により強い警告を与えることにある。

また、米国は、中国が造成した人工島の12海里内にイージス駆逐艦を派遣する「航行の自由作戦」を今年に入って既に4回実施しているが、昨年は通年で8回だったことから、米国の懸念の度合いは明らかに高まっている。

中国は、台湾と領有権を争う東沙諸島を支配下に置くことを想定した大規模な上陸訓練を8月に予定しているという。台湾の沿岸警備部も、東沙諸島の駐屯地で6月に定例の実弾射撃訓練を実施すると発表しており、中台間の緊張も懸念される。

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尖閣諸島周辺でも活発化する中国の不穏な動き

東シナ海においても同様の事態が生じている。

沖縄県石垣市尖閣諸島周辺で5月、中国の船が与那国島所属の漁船を一定時間にわたって追尾する事件が発生し、4月には中国の空母「遼寧」を中心とする部隊が沖縄本島宮古島の間を2回も航行した。

5月24日時点で、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では41日連続で中国当局の船舶が確認されている。

当然ながら、こうした中国の活動は新型コロナウイルスの感染拡大以前から日常的に起きている。

だが、3月、米国の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」の艦内で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、現在も活動や任務が停止状態となっていることから、中国が政治的な隙を突き、米国をけん制する目的で活動を活発化させている可能性もある。

米国も最近、B-1B爆撃機イージス艦を東シナ海や台湾海峡に派遣するなどして中国の動きをけん制しているが、同海域での米中間の緊張悪化は、シーレーンだけでなく、日本の漁業上も大きなリスクとなる。