2020年3月にデビューした11人組男性アイドルグループ・JO1。韓国発のサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101」シリーズの日本版「PRODUCE 101 JAPAN」から生まれたグループで、若者を中心に熱狂的な人気を集めている。2018年には同じシリーズのシーズン3「PRODUCE 48」から、HKT48宮脇咲良、矢吹奈子らが所属する女性アイドルグループ・IZ*ONEがデビューした。視聴者投票でデビューメンバーが決定するという番組のシステムは、日本のAKB48グループとも通ずるところがあるように思えるが、なぜ韓国発のオーディション番組に10代~20代の若者たちがこぞって注目するのだろうか。

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■ 若年層には“当たり前”の韓国文化

2003年から日本で放送された韓国ドラマ「冬のソナタ」をきっかけに、ペ・ヨンジュンヨン様”が大ブームになった“第1次韓流ブーム”は、中高年女性を中心に大きな盛り上がりを見せていた。

一方、現在ではBTS、BLACKPINK、TWICEらK-POPアイドルグループが、圧倒的なパフォーマンス力と音楽性の高さを武器にグローバルに活躍。その影響もあり、韓国発のものが一つの“コンテンツ”の枠を超えて、“文化”としてファッションやメーク、グルメなどの領域で若者のライフスタイルに定着している。

若年女性を中心に韓国文化に憧れの目が向けられ、一時代のブームを超えてもはや“当たり前”のものとして受け入れられている現状がある。

■ 韓国アイドル業界の“練習生”制度

地下アイドル”からメジャーアイドルまで数千組のアイドルグループが存在するとされる日本のアイドル業界とは違い、韓国ではデビュー前のタレントが各芸能事務所の“練習生”として所属する制度がある。

そこで歌やダンス、演技などのレッスンを受けて下積みをし、厳しい競争を勝ち抜いた者だけがようやくデビューできる韓国の芸能界。

デビューすること自体のハードルが高い韓国芸能界だからこそ、質の高いアーティストが生まれ、デビューまでの過程を追ったサバイバルオーデション番組が盛んに放送される。

日本にも各芸能事務所が“研修生”のような形でデビュー前のアイドルを所属させる仕組みがあるが、既にファンがついている場合も多く、韓国の練習生の方がより孤独でストイックな印象を受ける。

韓国、日本、台湾出身のメンバーから構成される人気女性アイドルグループ・TWICEもサバイバルオーディション番組「SIXTEEN」を経て結成されている経緯がある。

■ 「PRODUCE 101」シリーズとは

ファンの人気を集める「PRODUCE 101」シリーズ第1作目は2016年に放送され、女性アイドルグループ・I.O.Iがデビューした。2017年のシーズン2では男性アイドルグループ・Wanna One、2018年の「PRODUCE48」ではIZ*ONEが、2019年のシーズン4「PRODUCE X 101」では男性アイドルグループ・X1が誕生。そして、2019年の「PRODUCE 101 JAPAN」でJO1が結成された。

PRODUCE 101」シリーズでは、各芸能事務所から集まった101人の練習生が、歌とダンスのパフォーマンス評価を受け、“国民プロデューサー”(視聴者)の投票によってランク付けされる。投票数が下位のメンバーから脱落していき、最終的に残ったメンバーがデビューできるというシステムになっている。

練習生たちが過酷な合宿生活を送りながら、夢に向かってひたむきに努力する姿が見どころで、視聴者の胸を打つ。番組を通じて成長過程を視聴者と共有することで圧倒的なファンの熱量を生むことになる。

しかし、X1のデビュー後に番組による投票操作問題が発覚。「PRODUCE 48」と「PRODUCE X 101」で不正に投票数が操作されたことが明らかになり、X1はデビューから約5カ月で解散となるなど問題も起きている。

■ 熱狂を生む“ファン主導の選挙戦”

ファンの直接投票により、メンバーたちを競争させ選抜するシステムは、日本でもAKB48グループの「選抜総選挙」など多くのイベントで見られるが、「PRODUCE 101」シリーズとの一番の違いは、ファンが主導して応援するかどうかだ。

AKB48グループの「選抜総選挙」では、メンバーが日々の握手会などでファンと関係値を築き、選挙期間になるとSNSや生配信でファンへのアピール合戦が行われる。このように“ドブ板選挙”的なメンバー主導の選挙戦が繰り広げられる。(ただし、選挙を辞退するメンバーや積極的なアピールを行わないメンバーも少なくはない。)

一方、「PRODUCE 101」シリーズでは、番組参加者本人によるSNSの投稿はできず、ファンに投票を呼びかけることができない。そのため、ファンたちが自主的に自分の“推しメン”へ投票を呼びかけることになる。

SNSでの宣伝はもちろん、駅構内などに投票を呼びかけるポスターを掲出することも珍しくない。自主的に応援することにより、ファンの“推しメン”への熱がさらに高まることにつながっている。

■ 日本から世界に JO1が見出す新たなアイドル像

そして2020年新たに誕生したJO1。メンバー11人は全員日本人。メークや衣装、曲調などはK-POP的な特徴を持ち、デビュー時から「日本から世界へ羽ばたくグローバルなアイドル」をコンセプトに活動している。

また、ソニーミュージックと韓国の大手芸能事務所・JYPエンターテインメントが主催するオーディション番組「Nizi Project」(ニジプロ)が現在Huluで配信され注目が集まっている。Rain、2PMTWICEらを手がけたプロデューサー・J.Y.Park(パク・ジニョン)が、13人の日本人候補者の中からグローバルアイドルグループとしてデビューするメンバーを決定する。

この番組でもファンによる応援要素が取り入れられている。番組の公式ホームページで1日1回、好きなメンバーに応援投票することができ、その結果が「虹かけランキング」として順位が発表される。このランキングはデビューメンバーの選考要因になるのではと考えられており、熱心に投票するファンは多い。

このようなファン参加型の日韓合同オーディション番組から、日本のアイドルの価値を底上げする、世界に羽ばたくような新たなアイドル像が誕生するかもしれない。(ザテレビジョン

JO1メンバー