新型コロナウイルス感染拡大の長期化に備えて、政府は国民に対して「新しい生活様式」を取り入れるよう、呼びかけている。「もう以前の生活には戻れない」と言われているが、収束した後の世界はどう変わってしまうのか。

テレワークの急増により日本は監視社会化する

 急速に増加したテレワーカーたちの「在宅勤務疲れ」が、ここにきてピークを迎えているようだ。

「自室がなく、居間で作業をしていますが、横にはテレビを見ながら大声で笑う妻と子。Zoom会議時にテレビを消すように言うと、渋い顔をされました」とため息交じりに語るのは、加藤港さん(仮名・46歳)だ。

 また、都内に住む斎藤春香さん(仮名・49歳)は、「ファミレスや電源カフェも休業や営業短縮で、落ち着いて作業できる場所がありません」と言う。テレワーク推奨により、今、彼らを悩ませるのは、環境の整備されたワークスペースの確保だ。

「ミニデスクを購入したり、自宅のクローゼットを改造して個室にしたりと工夫している方もいる一方、公園で子どもを散歩させながらPCを開いているテレワーカーもいます。“快適な家”は、必ずしも“快適なオフィス”とは限りません」

 こう見解を述べるのは、千葉商科大学准教授の常見陽平氏。

ビジネスホテルのデイユースや、ワンコインで利用可能のレンタル個室など、“3密”を避けたサービスの動きも出ています。これからは、電源やWi-Fi環境などが整った、在宅ワーカーにとって快適に働けるカフェも増えてくるでしょう」

 しかし常見氏は、テレワークに関してむしろ「ライフワークバランスの崩壊」を懸念している。

「『通勤時間が減った分、自由な時間が増えた』と思いがちですが、実はテレワークという名の“強制労働”に縛られているだけ。その分仕事に集中しすぎて、労働時間や疲労度が増すことが問題となります。また、本来テレワークは、働く場所や利用する頻度の使い分けがポイントですが、現状は在宅勤務一択に。仕事に集中しすぎて超過労働する者やその逆も出てくるでしょう。テレワーク中に起こった問題の責任の所在なども懸案事項です」

 緊急事態宣言の解除後にもテレワーク勤務に切り替える企業は増加すると見られているが、常見氏が恐れているのは、将来の日本で「監視社会化」が加速することだ。

「今までは顔を合わせたくない上司とは会議室では離れて座ることができた。しかしテレワーク導入後はZoom会議に変わり、全員の顔が見える状態に。また、Slackなどの連絡ツールにより、労働者は常に会社に“見張られている”感覚から逃げられなくなる」

 便利なツールは両刃の剣と知った労働者が「やはり、リアルに人と会っていた時のほうが良かった」と気づいたとき、その怒りは爆発するのではないだろうか。

【常見陽平氏】
千葉商科大学准教授。HR総合調査研究所客員研究員。働き方評論家大学生就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[コロナ後の未来]―


テレワーク推奨は「監視社会」を生む恐れも。便利なツールは、将来的に労働者を苦しめることになるかもしれない