エラフロサウルス

オーストラリアで初めて発見された恐竜「エラフロサウルス」復元図 Ruairidh Duncan

 オーストラリア、ビクトリア州で発掘されたやたらと首の長い恐竜は、少し変わったヤツだ。

 「エラフロサウルス」は、これまでタンザニア・中国・アルゼンチンから3種しか発見されていない珍しい恐竜で、オーストラリアで化石が見つかったのは今回が初めてだと、スウィンバン工科大学(オーストラリア)のステファン・プロパット氏は説明する。

 体高は小さなヒクイドリ(1.6~2.0メートル)程度。頭から尻尾の先端まで2メートルあり、短い腕には4本の指が生えていた。

 獣脚類に分類されるのだが、このグループは基本的にどの種も肉食である。つまりティラノサウルスヴェロキラプトルの親戚なのである。そのくせ、大人になると肉食から草食へと食生活を変化させていたかもしれないのだ。

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 『Gondwana Research』(5月6日付)に掲載された研究によれば、化石は2015年にメルボルンから南西に車で3時間ほど距離にある「エリック・ザ・レッド・ウェスト」という現場で見つかった。

 化石が発掘されるのは一般に砂漠だが、エラフロサウルスが発見されたのは、海水が押し寄せる海岸沿いの固い岩の中だったというのだから、これもまた珍しい。

 発掘されたのは5センチほどの椎骨(ついこつ)だ。その長く伸びた形状から、最初は翼竜のものとみなされており、現在骨を所蔵するメルボルン博物館でも翼竜として区分されていたという。

 ところがそれから数年後、翼竜の研究者であるアデル・ペントランド氏が骨を調べてみると、まったく違う種であることが分かったのだ。翼竜なら骨の尻尾側の末端にしかない窪みが、その骨の場合、両端にあったからだ。

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発見されたエラフロサウルスの椎骨は翼竜によく見られる特徴を持っている
image credit:Stephen Poropat / Museums Victoria

子供と大人で食生活が違う可能性


 オーストラリアに生息していたエラフロサウルスについては、たった1つの骨から推測するよりない。だが、ジュラ紀の中国に生息していた「リムサウルス」という近縁種なら、大人だけでなく赤ちゃんの骨格までが完全に発掘されている。

 面白いことに、赤ちゃんの化石にはいかにも肉食恐竜といった鋭い歯が並んでいるが、大人になるとそれは失われ、クチバシのようになっているという。

 ここから大人になると食生活が変化し、主に植物を食べていたのではないかと推測されている。ただし、小型の動物を食べていた可能性もないわけではないそうだ。

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頭と手を近縁種リムサウルスに基づいて復元したエラフロサウルス復元図
image credit:

南極にも生息していた可能性


 また今回の発見からは、エラフロサウルスが南極にも分布していたことがうかがえる。1億1000万年前のオーストラリアは現在よりもずっと南にあり、南極圏に属していた。

 白亜紀当時はかなり暖かかったとはいえ、それでも冬になれば数ヶ月続く暗闇や周期的に大きく冷え込む気温に耐える必要があったはずだ。

 だが、他の化石からは、当時の南極には多様な動植物が暮らしていたことも分かっている。

 チリマツやイチョウに似た針葉樹の森が生い茂り(なおイチョウは針葉樹でも広葉樹でもない)、木々の根本にはソテツ、シダ、トクサなどが生えていた。

 動物も恐竜、カメ、魚、海生爬虫類など、さまざまな種が生息していた。

 今年、エリック・ザ・レッド・ウェストでの発掘調査は、森林火災と新型コロナのおかげで中止を余儀なくされているとのこと。再開されれば、エラフロサウルスの化石がもっと発見される見込みは非常に高いそうだ。

References:swinburne / museumsvictoria./ written by hiroching / edited by parumo

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http://karapaia.com/archives/52291105.html
 

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