飛行機エンジンが回る方向は、世界的には「反時計回り」が多数ですが、日本で飛んでいるジェット旅客機にはどちらもあり、なかには同じ機種でも回転方向が逆のものまであります。なぜこのようなことが生じるのでしょうか。

伝統にならって採用されたエンジンの回転方向

現代のジェット旅客機エンジン、その大きなファンが回る方向はどちらなのでしょうか。

ANA全日空)はその結論を「どちらもある」としています。なぜこのようなことが発生しているのでしょうか。

JAL日本航空)によると、この違い差はエンジンの製造国によって生じるものといいます。日本やアメリカなど多くの国では、エンジンを機首側、つまり前から見たとき左側方向に回る「反時計回り」を採用している一方、イギリスロシア製のものは反対で、前から見たとき右側方向に回る「時計回り」なのだそうです。これらは、かつてのレジシプロ(ピストンエンジンのプロペラ機からの伝統にならったもので、それがそのまま現代に引き継がれているとしています。

多くの国で「反時計回り」が採用されているのは、かつてプロペラを回すことでエンジンを始動させる際、右利きの人が多いことから右手を使うことが多く、回しやすかったからという説もあります。

ところが多くの国で「反時計回り」のアメリカ式を採用しているにもかかわらず、先述のとおり少なくとも日本の航空会社のジェット旅客機では、「時計回り」を含む両方のエンジンが使われています。この大きな理由が、イギリスには航空機エンジンの大きなシェアをもつ、ロールスロイス社があることでしょう。

同じ787なのにエンジンが「逆回り」現象 製造メーカー元が関係

航空会社が旅客機飛行機メーカーから導入するとき、多くのモデル旅客機ではロールスロイスエンジンも含む複数のタイプ種類から選ぶことができます。また、一部モデルでは、エンジンロールスロイス製のみが単独供給しているものなどもあります。たとえば、前者はANAボーイング787型など、後者はJALのA350-900型機などがそのケースです。

もちろんアメリカ製のエンジンも、長いあいだ大きなシェアを誇っています。ロールスロイスとならび、いわゆる「世界三大航空エンジンメーカー」とも称されるゼネラルエレクトリック社、プラットアンドホイットニー社はいずれもアメリカの会社です。そのため、ゼネラルエレクトリックエンジンを使っているJALボーイング787型機は、ロールスロイスエンジンを搭載したANAのものとは異なり、エンジンファンアメリカ式の「反時計回り」に回ります。

このほか、たとえばLCC格安航空会社)のジェットスター・ジャパンが保有するのエアバスA320型機などでは、先述のいずれの会社でもないIAE(インターナショナルエアロエンジンズ)製のものが使われています。IAEはロールスロイスゼネラルエレクトリックがほぼ同じ比率で出資する国際共同会社ですが、IAE製エンジンファンの製造を手掛けるIHIによると、アメリカ式の「反時計回り」が用いられているとのことです。

なお、現代のジェット旅客機は、エンジン2発の双発機が多数ですが、両翼のエンジンが回る方向は、左右で違いがないのが一般的です。これは、回転を統一することで製造作コストを削減でき、整備のしやすさも向上することなどが、おもな理由として挙げられます。

ロールスロイス「Trent 1000」を搭載したANAのボーイング787型機(2019年、伊藤真悟撮影)。