民法の成人年齢引き下げに伴い、現在、法制審議会の部会で、少年法の適用年齢を20歳から18歳にする案が検討されている。これを受け、少年事件に携わった経験のある元裁判官177名は5月26日、引き下げに反対する意見書を法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会長に提出した。

同日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見した元裁判官の大塚正之弁護士らは「実際に現場に携わる裁判官の感覚からすれば、少年は未熟性がある一方で、可塑性(注:立ち直る力)がある。再犯を犯させないためには、家裁で徹底的な教育をすることが非常に効果的だ」と訴えた。

●18、19歳の少年「大半は自立しておらず、未熟」

現在、家裁では、家庭裁判所調査官による調査、裁判官による審判などを通じて、被害者と向き合い、内省を深めさせるとともに、必要に応じて少年に教育的措置を講じている。

しかし、成人と同様に刑事罰を科すことで「少年の非行性が除去されず、内省が進まないまま放置される恐れがある」と大塚弁護士は懸念を示す。

また現在、18歳や19歳の非行少年の多くが高校生や専門学校生、大学生であることをあげ「大半は自立しておらず、未熟で、判断能力が不足している。他方では柔軟性がある」(同)と指摘。可塑性が高く、教育的処遇による再犯抑止効果が高いとした。

なお、部会では18、19歳を成人と少年の中間層として位置付ける処分も検討されている。しかし「その内容は曖昧で、新たな処分が立法化されても、これまでと同じ効果が期待できるか明らかではなく、問題の解決につながらない」(同)とも指摘した。

署名した177人の中には、元高裁長官や地・家裁所長経験者も含まれるという。 

少年法適用、18歳に引き下げても「再犯防げない」 元裁判官177人が反対意見