新型コロナウイルス感染症COVID-19)の拡大によって発令された緊急事態宣言。休業やテレワークの普及で、自宅で過ごした人も多くいたことでしょう。しかし、医療従事者やライフラインを支える人たちは休むことなく働き続けています。私たちの生活を守るために働いている人たちを指す「エッセンシャルワーカー」という言葉も、コロナ禍の影響で注目されるようになりました。

生活の基盤ともなる、必要な業種であるにも関わらず「業種差別」が問題になっているようです。内閣官房より発表された「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日)」によると、施設内感染のイメージがある「病院」や「介護施設」「物流」関係に勤めている本人、または家族まで偏見や差別に苦しめられたという事例があるのだとか。私たちは、この問題に対してどう判断するべきなのでしょうか。

2人のママ友 

年少と年長の子どもを保育園に預けているA子さん。同じ年長の子どもを抱えるママ友Bさん、Cさんと共に緊急事態宣言が発令したあとも勤務先は休業にならなかったといいます。

「物流会社の事務員をしている私と、スーパー勤務のCさんは休業要請から外れてしまいました。とくにBさんは、夫婦そろって医療従事者。子どもは保育園に預けているようですが、忙しいのかBさん本人と会うことはありませんでした。」そんな忙しい日々のなか、保育園内でトラブルが発生したのだといいます。

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自粛中の保育園預かりにクレーム 

緊急事態宣言の発令後、保育園は園児の登園自粛を呼びかけていました。それでも仕事を休めない保護者のために、開園していたそうです。預けられる条件は、両親が共に仕事を休めないこと、近くに預け先がないことが挙げられていて、A子さんやママ友もこのルールに沿って子どもを預けていたといいます。

しかし、この保育園に「医療従事者の子どもはコロナ感染リスクが高いから、今すぐ預かりを拒否しろ」と電話でクレームが入ったというのです。保育園側の意見は『医療従事者だからといって、差別はしない。このまま預かり続ける』ということで、Bさんの子どもは守られたはずでした。

しかしこの匿名での電話が、同じ保育園に預ける保護者からだということが、後日発覚するのです。

ママ友が原因!? 

保育園にクレームが入ったという噂は、保護者間にすぐに広がったそうです。

「電話の相手は、どうせ近所の人だろうと思っていました。名指しをされたわけではありませんが、Bさんのことをいわれているのは確か。ニュースを見ても医療従事者の大変さはわかるはずなのに、クレームを入れるなんて…と腹立たしさもありました。」

保育園の方針が医療従事者の子どもも受け入れると決めていたため、クレーム後であってもBさんの子どもは変わらず登園していたそうです。すると、ある日ママ友のCさんから連絡が入りました。じつはあのクレーム電話の犯人はCさんだったというのです。

「さらに、Bさんの子どもが登園しないように、署名を集めているといいだしました。コロナ感染が怖い、子どもたちを守りたい、という気持ちはわかります。だからといって、医療従事者を『危険だ』と決めつけて保育園から排除しようとする考えは、納得できません。他の保護者にも声をかけているようでしたが、署名は集まっていないようでした。」

前出の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日)」でも子どもの登園や通学を拒否されるという事例があるようです。

許せなかったA子さんが「そんなに気になるなら、Cさんが登園自粛をしたら?」と指摘したことで、考え方の違う2人の間に深い溝ができたのでした。

ママ友とは助け合いたい

結局署名が思うように集まらなかったようで、Cさんから保育園へ嘆願されることはありませんでした。しかし、A子さんはCさんの行動が許せなかったようで、今後距離をおきたいと考えているのだとか。

「こういうときに、人間の本性がでますよね。新型コロナウイルス感染症COVID-19)は、いつ・どこで・だれが感染するかなんてわかりません。悪いのはコロナウイルスであって、仕事を休めない人ではないはずです。そして、感染した人が責められる風潮も違うと思います。」

そう発言するA子さんは、医療従事者のBさんに「落ち着いたら、いっぱい話をしようね」とメールを送ったといいます新型コロナウイルス感染症COVID-19)が終息したあかつきには、笑顔で集まれるといいですね。

【参照】
内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年4月22日)」