【新型コロナ、猫同士で感染】という記事が、5月14日に報じられた。これは東京大学医科学研究所の研究グループが発表したもの。新型コロナウイルスは猫の呼吸器でよく増え、さらに接触によって“猫から猫”へと容易に感染が広がる可能性もあるという。
「実験は1mほどのケージに2匹の猫を入れ、換気のよい部屋で飼育。そして人から採取した新型コロナウイルスを片方の猫に感染させ、経過を観察するというものでした。3組6匹の猫で実験を行ったのですが、6日後にはすべての猫が新型コロナウイルスに感染していたというのです」(全国紙記者)
こうした猫たちには、発熱などの症状はみられなかったという。だが少なくとも、“猫から猫”へと感染しやすいということが明らかとなったのだ。
「中国のハルビン獣医研究所が3月に発表した論文でも“犬は感染しにくく、猫は感染しやすい”とされていました。実際、世界各国で猫の感染は確認されています」(前出・全国紙記者)
では、“ヒトから猫”への感染リスクはどの程度あるのか。かねてより、その可能性は指摘されていた。
「3月27日、ベルギーで新型コロナウイルスに感染している人から飼い猫への感染が確認されたとの発表がありました。飼い主の感染から1週間ほどたったころ、飼い猫にも検査を実施したところ、陽性が判明したのです。ベルギーの保健当局は『特殊な事例』としていますが、4月にはニューヨークでも飼い猫への感染が報告されています」(別の全国紙記者)
そして“ヒトから猫”への感染を裏付けるような論文が、4月に武漢のウイルス研究チームなどから発表されていた。
「ヒトが感染した地域では猫の感染も広がっており、逆にヒトが感染していない時点では猫の感染も確認できなかったというのです。
この研究はヒトへの新型コロナウイルス感染が報告される前と後で、武漢にいる猫の感染状況を調べたものでした。新型コロナ発生前に採取していた猫の血清サンプル39例はすべて陰性。しかし発生後に採取した102例のうち、15例が陽性となっていたそうです。
また特に感染度合いの高いサンプルは、いずれも新型コロナ感染者が自宅で飼っていた猫のものでした。つまり感染者と近しい猫ほど、感染度合いが強くなっているということです」(前出・別の全国紙記者)
猫を飼っている愛猫家たちにとっては、深刻な研究結果といえるだろう。そうなるともう1つ心配なのは、“猫からヒト”には感染するのかということだ。
NHKの報道によると、前出の東京大学医科学研究所の研究グループは「猫は明確な症状を示さず、いつの間にかヒトにうつすことも考えられる」と注意を呼びかけているという。
こうした“猫からヒト”への感染リスクについて、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター統括の喜田宏先生も次のように警鐘を鳴らす。
「これまでに“ヒトから猫”“猫から猫”への感染は確認されていますが、“猫からヒト”への感染はまだ確認されていません。ただそもそも新型コロナウイルスが人間から猫へと感染するのであれば、逆もしかり。猫から再び人間に感染する可能性は否定できません。
また感染した猫に症状が見られないということも、注目すべきポイントでしょう。無症状であるということは“ネコ科やイタチ科の動物がコロナウイルスをヒトに感染させる中間宿主として、役割を果たした可能性”が考えられるからです。
今回の新型コロナウイルスは、コウモリがもともとの“自然宿主”と考えられます。自然宿主は感染しても症状を示すことなく、増殖したウイルスを排泄する。ウイルスと共生関係にある動物です。その自然宿主からどのような中間宿主をたどってヒトに感染したか、伝播経路を明らかにすることが対策を立てる上で重要な鍵となるのです」
実際、オランダ政府も猫からの感染を懸念しているという。
「オランダ政府は5月19日、ミンクから人に感染した可能性があると発表しました。さらに、そのウイルス感染拡大に猫がかかわっている可能性も指摘しているのです」(前出・別の全国紙記者)
ただ、飼い主にとって愛猫は家族の一員。まったくかかわらずに生活を続けるのは難しいだろう。今後、どう接していけばいいのだろうか。
喜田先生は感染の可能性を指摘したうえで、こうも語る。
「『愛猫が感染しないか』『感染した場合に他の猫や人間などに感染を拡げないか心配』という方は、猫にも“外出自粛”をお願いしてください」
感染のリスクを正しく認識しながら、愛猫との自粛生活を楽しもう――。
「女性自身」2020年6月9日号 掲載
コメント