首都高で車両火災が増加傾向にあります。事故にともなう炎上ではなく、走行中に出火するケースが多く、トンネル火災や多重事故に発展した例も。首都高速道路は出発前の点検を呼び掛けています。

新型コロナ影響下の4月も車両火災が2件発生

2020年5月現在、首都高で車両火災が増加傾向にあることから、首都高速道路が注意を呼び掛けています。

首都高における車両火災は、2017年度に13件、2018年度に17件、2019年度には20件発生しています。そして、新型コロナウイルスの影響により交通量が減少するなか始まった2020年度も、4月に2件発生したことから、首都高速道路は啓発動画を作成し、ウェブサイトで公表しました。

車両火災の場合、消火活動による通行止めなどの交通規制が生じ、平均およそ3時間と、通常の事故より周辺交通に多大な影響を与える傾向にあるといいます。車両や積み荷はもちろん、道路施設にも被害を与え、トンネル内などでは大惨事なるおそれがあるとのこと。

たとえば、2019年12月に湾岸線上りの多摩川トンネルで、車両14台が関係する多重事故が発生しました。トンネル内でトラックが炎上し、充満した煙で視界が悪くなり、複数の追突事故につながったと見られています。この事故では、巻き込まれたバスの運転手が死亡したほか、22人が負傷しました。

また、全長18.2kmにもおよぶC2中央環状線山手トンネルでも、ここ数年で複数回、車両火災が発生しています。「トンネル内における火災時の避難方法などもWEBサイトで公開していますので、いま一度ご確認いただきたい」と、首都高速道路は話します。

では、これら車両火災は、どのような理由で起こっているのでしょうか。

ほとんどは「走行中に発火」のワケ

首都高で発生している車両火災のほとんどは、事故による出火ではなく、走行中にエンジン部もしくは車両下部から出火に至っているケースだそうです。このため、首都高速道路は乗車前の車両点検の徹底を呼び掛けています。

「日常的な点検、整備で車両火災が防げると考えられます。エンジンオイルや冷却水の点検および補充、(バーストの要因にもなる)タイヤの摩耗や空気圧の点検を忘れずに行ってください」(首都高速道路

なお、車両火災の件数ベースでは乗用車と貨物車でほぼ半々ではあるものの、首都高の利用台数のうち貨物車は3割に留まることから、出火した車両の割合でいえば貨物車が多いとのことです。

国土交通省によると、2018年度には、自動車メーカーから報告のあった分だけでも車両火災が全国で1161件発生しています。件数は乗用車と貨物車でほぼ同等で、車両の総走行距離で見ると、10万km超が最も多く全体の34.3%を占めているそうです。出火箇所はエンジンが全体の15.7%で最多、次いで電気装置が13.2%となっており、走行距離が上がるにつれ、この2か所からの出火割合が増える傾向にあるといいます。

ある自動車整備工場の代表は、「過走行車(総走行距離が多いクルマ)は特にエンジン内部の傷んでいるケースがあり、オイル漏れなどにつながる可能性もあります。一方で、クルマのメンテナンスに関心がなく、車検から2年間オイル交換せず乗りっぱなし、という人も少なくありません。そういうクルマは車検の際も注意して見ますね」と話します。

このほかJAF(日本自動車連盟)は車両火災の原因について、エンジンルーム内へのウエス(雑巾)の置き忘れ、バッテリーのターミナル(端子)が緩むことで発生するショート、あるいは直射日光が当たる場所にライターなどを放置することによる発火など、複数の要因を挙げます。日ごろのメンテナンスや車両取り扱いだけでなく、車内にあるものへの注意も呼び掛けています。

高速道路で起こった車両火災の例(警視庁のパンフレットより)。