総務省が2人以上の世帯8,076世帯を対象に毎月実施している「家計調査(貯蓄・負債編)の2019年平均の結果」によると、1世帯当たりの貯蓄現在高(平均値)は1,755万円。年収や住む地域、家族構成などで貯蓄額もさまざまと頭では分かっていても、よその家庭がいくらぐらい貯めているのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

最近では夫婦でバリバリ稼ぐパワーカップルというワードも聞かれるようになりましたが、リッチな家庭を見るとあれだけ高収入ならきっと貯金も多いはず…とうらやましくなることもありますよね。

え?それだけ?高年収世帯の貯金事情 

今回話を伺ったAさんは現在育児のため時短勤務中の有名食品メーカー正社員。夫は年俸制の外資系大手コンサル会社に勤めています。子どもは保育園児と小学生の4人家族。世帯年収はAさんが時短勤務中にも関わらず1,200万円を超えています。一昨年東京都下の人気エリアに一戸建てを購入し、傍目からは理想の高年収世帯という印象です。ところが、Aさん曰く「よくお金持ちそうっていわれますが、実は我が家は全然貯金がないんです。家も買って、去年は車も新しくしたのが大きいですね。子どもたちにもなんだかんだお金がかかりますし…。でも、毎日忙しくて家のお金についてちゃんと考える時間がないのも理由の1つ。現実を知るのが怖いというのもありますが…。」

そう、Aさん家は隠れ高年収貧乏世帯だったのです。実際の貯金額は0円ではないものの、数十万円という心もとなさ。なぜ夫婦ともに高収入でありながらここまで貯蓄が少ないのか、その実態にせまります。

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高年収貧乏世帯あるある 

1. 教育費にお金をかけすぎる

高年収=高学歴の親は自分たちの子どもにも質の高い教育を受けさせたいという志向が強いため、幼い時期から数多くの習い事に通わせる傾向があります。習い事は一度始めたら多くの場合、数年間継続して月謝を払わなければならず、レッスンに必要な教材費や発表会の参加費用など月謝以外にもお金が必要になるケースが多いです。費用がかさむのでやめさせたいと思っても、当事者である子どもに継続の意思があった場合、親の都合で辞めさせるのは難しいという局面もあります。

2. 求める住宅のグレードが高い

高年収世帯は問題なくローンが組めてしまうため、住宅メーカーから勧められる物件もハイクオリティになる傾向があります。良質な物件を見てしまうと理想が高くなり、また貯蓄はなくとも毎月のキャッシュフローは安定していることから、当初の予算を上回っていても手が出せてしまう状況にあります。そして、高級住宅は取得費だけが問題なのではありません。近隣世帯の生活水準に合わせようとする気持ちから、自ずと日々の生活費が上がっていく危険性を秘めているのです。

3. 共働きでお互いの貯金を把握していない

特に共働きの高年収世帯に多いのが、夫婦でお互いの貯金や正確な月収を把握していないパターンです。「さすがにこれぐらいは貯めているだろう。」という勝手な思い込みから、ピンチのときに相手の貯金をあてにしていたら、相手も同じ状況で夫婦共倒れになってしまったというケースも。

今からでも貯められる貯金ノウハウ 

年収が高くキャッシュフローで問題なく生活できている場合でも、何らかの事由で収入が途絶えてしまうおそれがあります。今回の新型コロナウイルス感染症COVID-19)のような、予期せぬ要因で急激に社会が変化するリスクも考えねばなりません。そこで、有事に備えて貯金が必要になってきますが、これまで貯金をしてこなかった家庭では一体どのように貯めたらよいのか分からず頭を抱えてしまうこともあるでしょう。

そんなときにオススメなのが、強制的に貯金する仕組みを利用することです。積み立てNISA(積立型少額投資非課税制度)やiDeco(個人型確定拠出年金)などを申し込み、給与口座から強制的に引き落とすようにすると意識しなくても勝手に貯まっていくので便利です。もう1つ提案したいのが、家計管理の担当者を決めること。特に共働き世帯にありがちな夫婦でお互いの資産管理にノータッチなパターンは、双方がしっかりと家計管理できていればよいですが、そうでなかった場合にリスク大です。すべてを任せるのは心理的に抵抗があるという場合、毎月決まった額を管理担当に委ねるところから始めると安心かもしれません。どちらかの収入が減ったり0になったりしても、夫婦共有の貯蓄があれば焦らずに生活できますね。

「年収が高い=貯蓄が多い」わけじゃない、金銭感覚の大切さ

ここまで見てきたように、年収が高いことと貯蓄が多いことは決してイコールではありません。いくら入ってくるお金が多くても、出ていくお金が多ければ手元に残る金額はわずかになってしまいます。そこで金銭感覚が重要になってくるのですが、この金銭感覚というのは一朝一夕で身につくものではありません。自らの生育環境や親のしつけなど複合的な要素が絡んでくる、なかなか複雑なスキルだからです。

結婚する際に将来に向けた家計管理やライフプランまでしっかりと意見を共有している夫婦は少ないかもしれませんが、先行き不透明なこれからの時代を共に生き抜くためには、チームとして家庭単位でのマネープランをしっかりと組み立てていきたいですね。

【参照】
総務省家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)