みんなの睡眠事情(2)
「睡眠負債」という言葉をご存じでしょうか。かつて「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10にも入り、話題になりました。
「負債」という表現はあくまでも例えですが、デジタル大辞泉(小学館)では
【睡眠負債(すいみんふさい)】「日々のわずかな睡眠不足が借金のように蓄積した状態」
と説明されています。また、「1日6時間程度の睡眠」を続けた場合も「自覚できない睡眠不足の状態にある」と考えられ、長期的に心身の健康を損なう危険性が高まる(※)、との説も。
前記事では「日本人の睡眠時間の短さは世界一」というお話に始まり、睡眠時間と収入・就労時間についてのデータをみていきました。
今回は、みんなが「睡眠で十分に休養がとれているかどうか」を、厚生労働省の資料を参考に追っていきます。
寝ても疲れがとれない!
国民の健康増進に向けた国の方針や目標数値などを示した「健康日本21(第二次)」では、睡眠による休養を十分とれていない人の割合を2022年度までに「15%」に減らす目標が掲げられています。
さて、実際のところはどうなのでしょう。厚生労働省の「平成30(2018)年国民健康・栄養調査」の結果をみていきます。
「睡眠で休養が十分にとれていない者の割合」の推移
ここでいう「睡眠で休養が十分にとれていない者」とは、調査票で「あまりとれていない」または「まったくとれていない」と回答した人です。
各年齢層総計(20歳以上)
2014年…20.0%
2016年…19.7%
2018年…21.7%
20-29歳
2014年…24.5%
2016年…23.0%
2018年…24.3%
30-39歳
2014年…27.5%
2016年…26.8%
2018年…33.4%
40-49歳
2014年…32.5%
2016年…26.6%
2018年…31.4%
50-59歳
2014年…25.9%
2016年…26.2%
2018年…27.6%
60-69歳
2014年…14.0%
2016年…14.6%
2018年…16.4%
70歳以上
2014年…9.9%
2016年…11.2%
2018年…10.9%
2018年の結果をみると「70歳以上」以外のすべての年齢層で、目標数値の15%を上回っています。いずれの調査年でも、30歳台から40歳台にかけての、いわゆる働き盛りの世代で高い傾向があります。
次も同調査から、「睡眠による休養が十分とれていない人」の割合を、世帯の年間所得ゾーン別にみていきます。
年間所得ゾーン別にみた「睡眠による休養が十分とれていない者の割合」
ここでいう「所得」は、生活習慣調査票中で「過去1年間の税込世帯収入」として回答した金額です。
200万円未満
男性16.4% 女性28.1%
200万円以上400万円未満
男性22.5% 女性20.9%
400万円以上600万円未満
男性20.0% 女性22.4%
600万円以上
男性22.0% 女性20.2%
この結果に対しては、「世帯の所得が 600 万円以上の世帯員に比較して、女性では 200 万円未満の世帯員で有意に高い」点が指摘されています。
就業時間との関係は?
次は、「就業時間の長さ」と「睡眠時間」からみていきましょう。
1週間の平均的な就業時間別にみた「睡眠による休養が十分とれていない者の割合」
総数
男性26.1% 女性27.7%
週1~39時間
男性18.1% 女性25.3%
週40~48時間
男性22.6% 女性29.9%
週49~59時間
男性31.7% 女性34.4%
週60時間以上
男性42.2% 女性32.8%
総数でみると男女ほぼ同じ割合ですが、就業時間別にみると、男女間で差がみられます。週1〜59時間以内では、「女性>男性」ですが、週60時間以上においては「男性>女性」と逆転し、もっとも男女差が開いている点も目立ちます。雇用形態や残業時間の長さなど、「働く環境」との関係が気になるところです。
次回は「睡眠時間」と「就労形態」の関係について詳しくみていきたいと思います。
今の睡眠時間、満足していますか?
「働く人の『睡眠時間が足りない理由』雇用形態とも関係あり?みんなの睡眠事情(3)」LIMO
【参考】
(※)Hans P. A. Van Dongen, et al. 2003. “The cumulative cost of additional wakefulness.” Sleep. 26:117-126.
「健康日本21(第二次)における目標項目と現状値について」厚生労働省
「平成30年国民健康・栄養調査報告」厚生労働省
「日本人の睡眠時間『33カ国中ワースト1位』トップとは約2時間の差!? みんなの睡眠事情(1)」LIMO
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