今年に入ってから未曾有の事態とも言えるコロナショックで経済も私たちの生活様式も大きく変化しています。既にオンライン化があらゆる場面で進んでいるというのもありますが、今まで必要だと思われていたものがなくてもやっていけると判明したり、様々な「選別」が始まっていますよね。

そして、国民一律給付の10万円(特別定額給付金)は自治体によって対応や振り込み時期に差が出ているようですが、新型コロナウイルス感染症COVID-19)の影響を受けているのは私たちのお財布も。

これから、生活様式に留まらず、社会構造も大きく変化してくるかもしれません。今まで当たり前だった年金制度もそのほかの社会保障制度も大きく変わるかも!?

今回は、アフターコロナで大打撃を受けた各国が導入を始めるかもしれない「ベーシックインカム制度」についてご紹介します。

ベーシックインカム制度とは

この「ベーシックインカム制度」とは、政府から毎月決まった金額が国民全員に支給される制度のことです。金額は各国政府の考え方や財源によっても異なります。

ベーシックインカム元年」と呼ばれたのは2017年なのですが、導入にあたってメリット・デメリットが繰り返し議論され、なかなか本格的な導入には至っていません。

導入について第一のメリットは、「貧困層の救済」です。生活に必要な最低限の現金が支給されるため、自身の生活について不安を抱く国民が減り、さらにこれにより「労働意欲も向上」するのではと考えられています。今まで嫌々やっていた仕事をする必要がなくなり、テクノロジーの進歩で補えるものはこれで補う。AIロボットにここをお任せすることで、生活に不安のない私たちは、自分がやりがいを感じられる仕事に情熱を注ぐことが出来ます。

一人一人が将来への不安なく、自分の能力を活かして好きな仕事に集中するというのは夢のような労働環境ですよね。

また、国民一律に同じ金額を支給するため、煩雑な手続きが必要なくなります。単純に言えば、しっかりと個人の口座に振り込むことが出来れば、こちらも担当者はAIロボットでも構わないのです。むしろ、そちらの方が、より確実性が高まるかもしれませんね。これにより、「行政コストの削減」ができます。

ただ、メリットがあればもちろんデメリットも付き物。最大の問題点は、「財源の確保」と言われています。2019年度の社会保障関係費は34兆円を超え、日本の人口は1億2000万人を超えていますが、単純に一人当たり7万円支給するとしても、ベーシックインカムの予算は84兆円を超える膨大な予算となります。

つまり、実現のためには、消費税の大幅増税などの税制改革が必要になってきますね。ただ、この「財源の確保」が導入障壁の中でもとりわけ高い壁となっていますが、それだけではありません。メリットであげた「労働意欲の向上」も、実際に導入してみたら思うほどの伸びを見せず、蓋を開けたら働かない国民だらけになるという可能性もなくはありませんよね。

そんな訳で、話題には上ってもなかなか導入されてこなかったこの「ベーシックインカム制度」ですが、実は早い段階で実験導入を試みていた国がありました。

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国民の幸福度ランキングNo.1のフィンランドでは既に実験導入されていた

2017年、2018年の2年間でこの「ベーシックインカム制度」を実験導入していたのがフィンランドです。失業者2000人を対象に月額およそ7万円を2年間支給するというこの実験。期間中はベーシックインカム以外の仕事で得た収入は税務申告必要なし、つまり税金がかかりません。

これにより失業保険の煩雑な手続きが軽減され、失業者たちは安心して次の職を探すことが出来そうですね。この他にも、オランダのユトレヒトやスペインバルセロナで実証実験は行われてきました。

コロナの影響でイギリスが導入を検討

ただやはり、実証実験を行った各国ともに本格的な導入は検討されていませんでした。しかし、今回のCOVID-19による経済への影響を鑑みて、ベーシックインカム導入を検討する動きが出てきました。

EU離脱を果たし独自の政策を推し進める「イギリス」です(スペインは低所得者への支援のみのため、ここでは含みません)。日本では「非常事態宣言」「自粛要請」にとどまったものの、諸外国ではより強制力の強い「ロックダウン」と呼ばれる都市封鎖が行われました。これにより、失業者の増加や企業の倒産が相次いでいます。既に社会構造は大きく変わりつつあると言っても過言ではありません。

アフターコロナの世界で一人でも多くの命と生活を守るため、今こそベーシックインカムの導入が本格的に議論される時期なのかもしれません。

日本の「特別定額給付金」もベーシックインカムに近い!?

日本では今まで、ベーシックインカムの実証実験などは行われてきませんでしたが、今回の安倍政権の景気刺激策・救済策とも言える「特別定額給付金」もベーシックインカム制度に近いところがあるかもしれません。その割には手続きに時間を要するなどしており、決してスムーズとは言えませんが、今後の社会構造を考えていく上では大きな一歩となるでしょう。

この特別定額給付金がすべての自治体で完了した後の社会の動きが気になるところです。

参考

「平成 31 年度(2019 年度)社会保障関係予算 ― 全世代型社会保障の構築に向けた財政基盤強化への取組 ―」西尾 真純 (厚生労働委員会調査室)
「人口統計」総務省統計局